ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

映画「海ゆかば 日本海大戦」 家路

2012-06-17 | 海軍

いよいよ明日は開戦という夜、東郷司令の特別の計らいによって、
三笠艦上で慰安演奏会が行われることになりました。

勿論そんな事実はどこにもないのですが、軍楽隊が主人公の映画なので、
特別に造られたストーリーです。
それに、もしかしたら、一度くらいあったかもしれないじゃないですか・・・。慰安演奏会。



横須賀にある記念艦「三笠」上で夜ロケされたこの演奏会シーン。
息をのんで楽団を見つめる将兵たち。
砲身にまたがっている人たちが計10人くらいいますね。

この、全く史実にないエピソードが、いや、史実に無くとも、この映画の最も美しいシーンだと、
わたしは断言いたします。

交響曲第9番第二楽章「家路」 アントニン・ドボルザーク作曲

トランペット奏者が主人公なので、最初の「遠き山に陽は落ちて」のメロディを、
トランペットが演奏していますが、本来はイングリッシュ・ホルンのメロディです。
イングリッシュホルンとは、別名コールアングレ、ホルンとついていますが、オーボエ族です。
オーボエ奏者がこの曲の出てくる時は持ちかえて演奏します。
そして、この曲が全てのイングリッシュホルンを使用する曲で最も有名なものです。

この有名な旋律の流れる中、一人一人の兵隊たちの表情が映し出されます。
その故郷の美しい景色と共に・・・・・。



千葉県、房総半島でしょうか。
「軍楽兵が兵隊ならば、トンボチョウチョも鳥のうち~!」
「音楽芸者が戦えるかい!」
などと軍楽兵たちを馬鹿にしていた水兵たちですが・・・・・。



長良川か、茨城県潮来か・・・。



越中、富山県境の出身。
「越中の人間は意地汚いさかい、残飯の食い過ぎで腹痛おこすんや」
とからかわれていた兵隊さん。




源太郎は越後出身。新潟ですね。
「越後の三助が、プカプカドンに出世したっちゅうわけか」
などと言われていました。
かれの思い出すのは自分のために鯛を買ってきた健気なセツの姿です。



京都。
前に立てば戦死か否かを占ってくれる「ネズミ大明神」に奥さんをあてがうために、
ネズミ探しに源太郎と島田を突き合わせた兵隊。
この役者さんが芸達者で、名前が知りたくて調べたのですが、配役が明記されているのは
ちょっとしかでていない三笠の将官の役ばっかりなんですよね。
軍隊のヒエラルキーがこんなところにも・・・・。
多分、高月忠さんだと思う。




この兵隊さんは、関西弁でしたので、これは紀伊半島の沿岸沿いかもしれません。
この俳優さんは掛田誠さん。(ですよね?)




京都府、天橋立ですね。



緒方先任の故郷は鎌倉でしょうか。



ガッツさん、マジ泣き。
これ、仕込みの涙じゃないんですよ。
右目に涙があふれてくるのをカメラがしっかり捉えているのです。
写真は・・・もしかしたらガッツ石松こと鈴木石松さんの故郷、栃木の田舎かもしれませんね。




可愛い軍楽兵の島田くんの故郷。
東京出身という設定ですが、明治時代は東京もほとんどこんな光景だったのでしょうね。



大物登場。
秋山真之参謀の故郷は、ご存じ愛媛県松山市。
それにしてもこの秋山参謀はそっくりである。
誰かと思えば横内正さん、初代格さんではないか!

ジャクりオオカミ、大上一曹の故郷は南部、つまり岩手の貧しい村。
人事の心証が悪くしてまで金貸しなどやってがめつく金を貯めるのも、全て故郷に田畑を
買って、いつか弟を呼び戻すという夢を持っていたからでした。
ただの嫌な奴じゃないのよ。



この演奏はたっぷり4分以上、つまり原曲の中間部分、嬰ハ短調に移行するまでのA部分を
なんと全曲演奏します。
いかにこのパートが映画の重要な部分であるかということなのですが、

ここで、皆さんに悲しいお報せがあります。

この、ドボルザークの第9交響曲が作曲されたのは1893年のこと。
日本海大戦が1905年のことですから、作曲されて12年経っており、
この映画の音楽担当者は安心してこの曲を選んだのかと思われます。

しかし、実際はこの曲が日本に入ってきた、つまり日本初演は実は1920年のこと。
日本海大戦のなんと15年も後、作曲されてから27年目にして日本人はそれを聴いた、
ということが今日判明しているのです。

勿論、この演奏会自体が映画のための創作には違いないのですが、それでも、少しは
整合性というか、「もしかしたら・・・」みたいな希望が欲しかったなあ・・。

それにもかかわらず、ここは素晴らしいシーンです。
全部写真を撮ってしまったのですが、これを音楽と共に見るのと、ただ写真を見るのとでは、
全く受ける感動が違いますので、このシーンのためだけにもこの映画を観てほしいと、
皆さまに切にお願いしたいくらい、感動しました。


映画「226」で、処刑される軍人たちが、いちいち奥さんのことを思い出しまくるシーンがあって、
そのカットがどれも冗長なため、「これはいくらなんでもやり過ぎだろう」と鼻白んだものですが、
こういうワンカットだけのシーンであると、なぜか自然に感情移入してしまいます。

それまで卑猥な冗談で笑ったり、下級兵いじめをしていた兵たちも、また一人の人間であり、
彼を愛し愛される者がいる故郷があるということが、
一瞬のカットでありながら雄弁に語られるのです。




拍手も鳴り止まぬ中、一人抜け出す大上。
「おらあ、おっかねえ!死にたくねえ!
フネさおろしてくれ!国さけえらしてけれ!」
号泣する彼を見守る源太郎は・・・。



沖田は、これも本当に、眼を真っ赤に充血させて泣いています。

「大上さん、国や海軍のために戦うんじゃないがや。
あんたは、田んぼや畑のために戦かやいいがね。
しっかりしてくだせえや、砲員長。
あんたが戦ってくんなきゃ生きて内地に帰れねえですけ」

いろんな男優の戦争映画における演技を観てきましたが、このシーンは両者ともに名演です。


それにしても、惜しまれる・・・・・・。沖田浩之・・・・・。



次回最終回、ようやく日本海大戦です。






最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。