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曳火射撃〜平成29年度富士総合火力演習

2017-08-26 | 自衛隊

前回もお話しした通り、車の中にカメラ(しかもカメラバッグごと)
忘れて、バックパックと三脚だけを持って身軽にバスに乗り込んだところ、
出発した瞬間そうと気がつき、駐車場と会場の間を往復したわたしです。

前回思いっきり「判断力の低下した老人は総火演に来るな」と言っておきながら、
ちょっと寝不足だっただけでこの判断力の低下。
説得力も何もあったもんじゃありませんが、とにかくこれで往復に1時間かかったので
会場に戻った時には、リハーサルはほとんど終わりかけでした。

わたしが席についてカメラを取り出した時には、96式装輪装甲車が退場するところでした。
で、これが第1写なのですが、車上の隊員・・・

これどう見ても女性に思えません?
写真をアップにして

「これ女性ですよね?」

すると同行の人は同じく自分の写真を見せて

「でもこれ、ヒゲがあるようにも見えますよ」

「うーん・・・どっちだろう」

「どっちだったとしても失礼な会話ですね」

検索してみたところ、今年の6月付で

普通科中隊に全国初の女性(御殿場、陸自滝ヶ原基地)

というのが出て来たので、もしかしたらこの人かとも思うのですが、
彼女の配属は第2中隊(軽装甲機動車)で96式の第4中隊とは違うし・・・。

せっかくの総火演なので顔見せできるように特別に96式に乗せたとか。

AH-64D、アパッチロングボウの射撃練習でリハは終わりみたいです。

アパッチのメザシ状態。

攻撃ヘリアパッチの射撃は、鼻からフンガー!と煙を出す人のように
(例えが悪い?)二股に分かれた白煙が出ます。

先日、同演習場でヘリが不時着して脚が折れたという事故がありましたが、
これがアパッチだったのか?と教えてくれた人に聞いてみると

「アパッチじゃないです。これ日本に13機しかないんで折ったら大変です

ほー。たった13機のうちの2機が今ここにあるわけか。

脚を折ったのはコブラで、こちらは今年の3月時点で59機が現役。
今後順次退役して行く運命なんだそうですが、だからって脚を折っていいわけもなく、

「あー、もう正座で反省会ですね」

「反省会どころじゃないです。もしかしたらパイロット降格かも

なんでも夜間演習のことで、暗くて着地地点が見えなかったせいだとかなんとか。
人身事故に繋がらなかったのは不幸中の幸いだったというしかありません。

・・というところで本番前の演習場整備の時間です。
金属探知機を持った施設隊の隊員たちが歩いて入場。

こちら偽装網とOD色のカメラカバーで完璧に現場と一体化しているカメラ隊。

何これ可愛い(笑)

クレーン付きのキャタピラ車。

次々とトラックが土をフィールドに落としていきます。


そして落とされた土をあっという間に均していきます。

映画「激闘の地平線」では諸事情により戦車やヘリが使えなかったので、
(前作で自衛隊に協力させておきながら反軍備のメッセージに利用したので防衛庁激怒)
主人公は施設科に入隊するということになっていましたが、施設科の仕事、
映画的には確かに地味かもしれませんが、実のところ大変重要で陸自の基本でもあります。

災害時の活躍はもちろん、いざ実戦となっても実は一番頼りにされる部隊が施設科です。

その徽章が「お城が三つ、それぞれ橋で繋がれている」というのがなんとも深い。


大型特殊免許があれば一度運転してみたいと思うのはわたしだけ?
車輪が前に二つ、後ろに一つでこれは大きな三輪車。

マカダム式ローラーという装備だそうです。

わたしたちの席からはほぼ肉眼で確認できないような遠くで演奏していた音楽隊。
いつものように富士学校音楽隊と第一音楽隊の合同演奏です。

スーザの「士官候補生」に始まり、「ゴジラ組曲」などで聴衆を楽しませます。

そういえば去年の総火演の頃には「シン・ゴジラ」の上映中でした。
まさにアパッチやコブラの攻撃を経て、ここ東富士演習場から撃った
M270 MLRSのロケット砲が、70キロ先の(ちなロケット砲の射程距離は30キロ)
新丸子橋にいるゴジラを攻撃するという設定だったため、
映画を見たばかりの人は、必要以上に装備に対する親近感が湧いたはずです。

76式戦車が砲撃を行う坂道で水撒きをしているタンク車。

小さな散水車もくまなく走り回って水を撒きます。
今回撒きすぎて?フィールドの右手に小さな池くらいの水たまりができていました。

本番が始まる前には、E席前のシート席以外はまだガラガラで、
やんちゃ兄弟が追いかけっこ&ふざけて取っ組み合いをする余地あり。

彼らのパパは陸自隊員かな?

さて、フィールド右手には最初の演習部隊がスタンバっています。

全員顔を迷彩にメイクした203ミリ自走榴弾砲のみなさん。
本人たちが意識せずとも、総火演は彼らの晴れ舞台です。

さていよいよ前段演習、装備紹介編の始まりです。

まず開始に先立ち、わざわざ山腹にカラースモークを焚いて、

「黄色い煙が上がっているのが”二段山”、緑の煙が”三段山”」

などと演習場の紹介から入ります。

最初に入場してくるのは96式装輪装甲車。

兵員輸送車である通称96Wの後ろ扉から数名の隊員が走り出ます。

そして203ミリ榴弾砲の入場。

上に乗って移動してくるのがなんともものものしくてかっこいい装備ですが、
榴弾砲の稼働に必要な13名全員が上に乗るスペースはありません(涙)

榴弾砲の砲員の残り8名は、実はこれに乗ってきます。
87式砲側弾薬車。

砲弾と要員を運搬して榴弾砲にくっついてくるのです。
「砲弾側弾薬車」の「側」は随伴してくるという意味だと思われます。

99式自走155mm榴弾砲。

車体前の右側に頭が見えますが、ここが操縦席です。

こちらではFH70、155ミリ榴弾砲の準備が始まっています。
砲員たちの躍動感、半端なし。

砲の先に巻かれた移動のためのロープの先をみんなで掴んで
せーの!と砲口の方向を(一応シャレ)動かします。

砲口が目標地点に向けられました。
大の男四人がかりでやっと動かせるということなんですね。

砲口のロープを二人が外している間に、二人が後ろに向かってダッシュ!
今から後方で装填が行います。

こちら弾薬車の後ろ扉。
中から何か運び出しているようです。
203ミリの砲弾って手で運べるってことですね。

右が203ミリ自走榴弾砲、真ん中FH、左弾薬車。

203ミリの後部には「鋤」のようなその名も「駐鋤」(ちゅうじょ)
が反動を受け止めるためあります。
英語でも「鋤」を意味する「SPADE」(トランプのスペードと同じ)です。

FH70の準備ほぼ完了。

こちらは弾薬装填中。

FHの弾薬が4本ほど地面に並べられています。

砲撃開始。まずは155ミリ榴弾砲から。
飛び出した砲弾が飛んでいくのが写っています。

これにも飛翔する砲弾がとらえられています。

203ミリ榴弾砲が第一射。

手をふりおろす合図で射撃が行われます。

この写真には砲手が手を挙げている人を振り返って見ているのが写っています。
射撃が終わった瞬間、下に座っている三人が立ち上がり装填を行います。

FH70の砲弾が目標地点に着弾した瞬間。

「ちゃくだ〜〜〜ん、イマッ!」

手で抱えられる砲弾なのにその破壊力の範囲の広さには驚かされます。

さて、そこでみなさんお待ちかね、曳火射撃の時間です。

曳火というのは英語でいうと「エアーバースト」、空気の破裂です。

地面に当たって炸裂する一般的な砲撃と違い、空中で炸裂するため、
大量の破片が地面に吸収されることなく敵の頭上から降り注ぎます。
つまり、姿勢を低くしたり塹壕に潜っている敵を殺傷することが可能で、

対人武器として大変有効な(残酷ともいう)方法と言われています。


が、わが自衛隊では異なる火砲でタイミングを合わせ、空中で同時爆発させて
それで線を描いたり富士山を描いたり・・・、
職人技を磨く装備であるという位置付けになっております。

遠距離、中距離火力砲で、しかも我々に見えないところからも参加して
(という噂)まずは一列に線を描いて見せてくれます。

お見事。
とはいうものの、少しいつもより間隔がまちまちなのは気のせい?

続いて富士山。
午前中は曇っていて見えにくいですが、後ろにも富士山です。

「うーん・・・今年は形がイマイチですね」

いや、でも実際の富士山もこんな風に裾が段になって見える場所ありますよね?
もしかしてそれをリアリズムで追求したのかも・・・ってことはないか。


ところで、最近は当然のようにこのシャッターチャンスを逃さなくなりましたが、
周りの人たちの気配と、聞けばなんでも教えてくれるイベント仲間と、
そして何回か参加してタイミングがわかってきたのと、
さすがにカメラの扱い方が最近は少しはましになってきたということでもあります。

曳火射撃の富士山で満場を沸かせたら、すぐに中・遠距離火力部隊は撤収です。
片付け終わったら全員が96Wに乗りこんでいきました。

跳ね上げ式の扉は運転席で操作するようです。
随分中は狭そうですが、もちろんクーラーなど効いていないでしょう。

155ミリ自走榴弾砲が離脱。

FH70、155ミリ自走榴弾砲も離脱。
これが自分の力で走っていく姿はいつ見てもシュールです。

 

というわけで中遠距離火力の装備紹介が終わりました。

 

続く。