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「千登と福」〜千福製造元・三宅本店資料室

2017-08-08 | 海軍


ベエゴマ、おはじき、おままごとセット・・・。
幼いころ、こんなミニチュアの食器セットが欲しくて仕方ありませんでした。

大きくなってアメリカに行ったら、まさに欲しかったものがIKEAにあり、
つい大人買いしてしまったものです。

積み木、ビー玉、おはじき、おもちゃのピストル。
今の子供はおもちゃの銃なんて与えられないんでしょうか。

「ステイション積み木」とは、積み木で線路の周りの町を作り、
おもちゃの汽車を走らせるというジオラマ的おもちゃですが、
それにしてもパッケージの汽車の疾走感が半端なし。

「パイロット」のインク瓶には見覚えがあるなあ。

手前のインクの商品名が「エリスインク」なのが気になる。

満州にあったらしい「奉天醤油」の醤油瓶。

左は海産乾物問屋のパッケージなのですが、よくよく見ると墨で

「結納」「肴料」などの試し書きがされているのに気づきます。
「海産」の横に同じような字体で「海産」「物」の下に「物」など、
箱に書かれた文字を使ってお習字の練習をしていたとみた。

これは実際に三宅本店で使われていたかもしれない電話。
壁掛け式でもないのにダイヤルはなく、ハンドルが付いています。

それから約80年後、コンピュータが市場に出回る世の中に。
相当珍しかったと思うのですが、シャープの製品です。
なんとカセットテープを挿入するタイプですが、まさかこれがデータ?

お値段は横にあるパンフレットによると20万超となっています。
今の貨幣価値でいうと・・・50万円くらい?

さすがは三宅本店、このようなコミニュティルームでは、時々講演会やコンサートなど、
イベントが開かれているのだとか。

酒樽にうまくカムフラージュしたスピーカー。
メッシュの部分も木肌の色に合わせるこだわりようです。

この部屋にも酒造に必要な道具などが無造作に展示されています。

「こういう道具も、実はつい最近まで使われていたりしたんですよ」

左の「千福」ラベルは、よく見ると酒盛りをしているのが全員女性。
そもそも、「千福」という名前は、初代三宅さんの母親である「千登」(チト)さん、
奥さんである「福」さんの名前を一字ずつ取ってつけられたものです。

三宅さんによると、女性の身内の名前を商品名につけるというのは
女性の人権が公的には顧みられなかったこの時代には大変珍しいことで、
女性たちの「内助の功」に感謝し、それをこんな形で表した三宅清兵衛さんは
当時の男には珍しいフェミニストであったということができるかもしれません。

ラベルの「女だけの宴会」もその表れではないでしょうか。

 こんな遺品も寄贈されて飾ってあります。
「千福」の文字が入った徳利は、川本福一という広島の方が、
得意先招待用に所持していた数十本のうちの一本。
残りは全部破損したそうで、残ったこの一本も釉薬が溶けて流れています。
釉薬が溶けるほどの温度とは・・・・・・。


東郷元帥の肉声を収めたレコードがここに!
「連合艦隊解散の辞」ではなく、軍人勅諭が発布されて50周年記念の録音だそうです。

「海と空」という雑誌は5月号で、海軍記念日特別号だそうです。

映画の一シーンに「千福」が使われました。
これ、なんの映画でしたっけ。

こちらにいる士官がなぜか第三種軍装をしているのに、第一種がいるし・・?

状況から見て、大和特攻のシーンではないかと思うのですが。

錦絵のようなタッチですが、実は製作されたのは去年の秋。

呉に昭和20年7月2日空襲がありました。
この時三宅本店の従業員は、海軍消防隊の来援を待つまでもなく
焼夷弾によって起こった火災を「危険を犯して」「毫も撓むことなく」完全鎮火させ、

「軍納酒2500石を確保した」

しかもその後、

「無償で海軍将兵と罹災者に清酒を提供し」!!!!

たことに対し、海軍憲兵隊からこのような感状が出されたものです。
最後の方には

「金一封を添えて賞詞を贈りその労を多とす」

と書いてあるのですが、

「これ、結局感状だけで(金一封なしで)済まされてしまったらしいです」

という三宅さんの重大発言が!

まあ、どこからお金を出そうか鳩首会議しているうちに大きな空襲が二度も来て、
そうこうするうちに原子爆弾が落ち、あれよあれよと終戦になってしまったわけですから、
呉鎮守府だけを責めるのも酷かもしれません。

物産展への出品や鉄道敷設に関する評議員を三宅社長が勤めたということで感謝状。

こちらは昭和7年、軍艦「大井」凱旋記念、とあります。
この凱旋というのが何を指すのかわかりませんでした。

煙突もそうですが、耐火性のある白煉瓦が酒蔵には使用されていました。
呉軍港大空襲では、この「明治庫」「大正庫」の一部だけが喪失を免れました。

終戦後、進駐してきたイギリス連邦軍に占領軍に三宅社長の本邸は接収されています。
きっと洋風の建築で将校が住むのに手頃とされたのでしょう。

同年、明治庫と大正庫を修復し、新しく「昭和庫」が竣工されました。

戦後、「千福」が有名になったのはサトウハチロー氏のあのロゴですが、
このようなマジックインキで書いた字体とともに同社のアイコンにもなりました。

そしてダークダックスの歌。
佐良直美も人気絶頂の頃CM出演していたんですね。

言ってはなんだが、誰得カット。

現在の販売ラインも展示されていました。
この大吟醸「提督」のラベルは、杉山靖樹第28代呉地方総監の書だそうです。

海自関係(特に将官)の方へのご進物におすすめです、とは三宅さんのお言葉。

見学コースとは別のところに物販店があり、ここからはお酒を全国発送することもできます。
ここでいくつかお土産を買い終わった時、三宅さんが

「ここに来たらソフトクリームをぜひ食べてください」

とオススメするので、ゆずと甘酒の二種類あるソフトクリームから
問答無用で甘酒アイスを選んでいただいてみました。

お店の隅には、昔三宅家にあったらしきアップライトピアノに、三宅家の誰かが
練習したのかもしれないドビュッシーの「雨の庭」の譜面が置いてありました。

 

海軍に興味を持って軍港の町呉に訪れる方に、大和ミュージアムも江田島も、
海軍墓地も全て見てしまったら、その次にはぜひ呉海軍御用達であった
千福製造元、三宅本店の見学をされることをおすすめして、シリーズを終わります。