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平成28年度富士総合火力演習〜TOTの富士山と”匠の弾道計算”

2016-08-30 | 自衛隊

さて、場外の見学かたがたお弁当を買ってきました。
本当はソフトタコスに巻いたケバブが食べたかったのですが、

「お昼まで食べないので普通のお弁当にしてください」

と同行者に釘を刺されたため、素直に従いました。



記念弁当「富士の国」。
いわゆる専門の仕出し弁当よりなんというか温かみがあっておいしかったです。
食べてる時には気づきませんでしたが、ごはん部分が富士山だったのね。
(本日の内容への伏線です)

パックされたわさび漬けやデザートに一口わらび餅、気が利いてます。


ところで、この総火演本番に韓国のメディアも取材に来ていたそうですね。


「名前とは異なり、戦争が可能な軍隊に変身している日本の自衛隊が、
28日、年中最大規模の総合火力訓練を実施しました」

に始まって、前回紹介した自衛隊グッズの露店を指し示しながら、

「これは、変貌する自衛隊を日本国民に見せ理解を求める趣旨です」

などと、あたかも軍事演習を「お祭り」の甘いコーティングで包み、
国民を騙してでもいるようなニュアンスの報道をしていたそうですが、
こんなもんあんたらの国が軍事政権だった頃からやってるっちゅーの。


だいたい、戦争が可能でない軍隊に一体何の意味があるのかと小一時間(略)

それにしても、韓国メディアの論調って、日本国内の野党・共産党、
そして左翼ならぬパヨクの皆さんと全く一致していますね。(不思議)



会場ではまだまだ整備が続いています。
実は設営隊がいないと、陸自は何も始まらなといっても過言ではありません。



そのとき、音楽隊による演奏が始まりました。
始まるなり向こうからこちらに「陸軍分列行進曲」を演奏しながら
行進してくるという、去年はなかった新企画です。

あまりにも広い会場、こちら半分の人が音楽隊の姿を
全く見ることもできず終わってしまっていたための配慮でしょう。



演奏は富士教導団音楽隊その他の皆さん。
富士学校に来校する内外の高官への儀礼を実施する必要から編成され、
現在は35名の音楽隊員で演奏活動を実施しています。

スーザの「サーベルと拍車」をフォーメーションを入れて演奏。
どうでもいい自慢ですが、わたしはこの夏、サンディエゴの
「音楽博物館」でスーザの着ていた軍服と指揮棒を見てきました。 



そして一曲終わったらまた向こうに行ってしまいました。



こちらにはマイクがあるのでどこにいても一応音は聞こえます。
女性隊員が「ひこうき雲」の歌唱を披露しました。

その向こうの報道カメラの放列が遠目にも凄い・・・・。



本番のストリームでの中継をご覧になりましたか?
わたしは今回本番のみこれで鑑賞しましたが、
砲撃の瞬間、カメラを目標に切り替えて弾着を見せてくれたり、
会場からは見えない戦車の通路を映してくれたり、
ある意味、現場で見ているよりもわかりやすくておもしろかったです。

現場ならではの空気を震わす轟音、振動などの臨場感を一度味わったら、
もう一度今度は映像で楽しむというのが、一番「効果的」というか、
通な総火演の鑑賞法ではないかと思ったくらいでした。

そして、その映像配信を行っているのがこの部隊。
陸自第301映像写真中隊・映像小隊の皆さんです。



偽装網の上は写真小隊の隊員が写真を撮っており、下はビデオです。
ビデオカメラは、ヘリのコクピット(おそらくパイロットのヘルメット)
や、戦車の操縦席にも設置されており、これらの映像を切り替える
映像小隊のディレクターもどこかにいるはずです。

左の可動車上タワーの頂点に備え付けてあるのは通称「千里眼」という
高感度・高性能カメラで主に弾着の様子をとらえて放映します。



富士学校の校長に報告を受ける偉い人。



なぜかこのときだけ大きな国旗を打ち振る観客あり。



そこに宮澤博行防衛大臣政務官が登場。
黒塗りの車から愛想よく皆さんに手を振っております。



そして会場では白い煙の上がる「二段山」、黄色の「三段山」など
会場の目標についての説明が行われます。
二段山は戦車の目標、三段山は特科火砲の目標となります。

目標は砲の種類によって距離を違えてあり、攻撃のたびに
放送がどこに当てるかを言ってくれます。



さて、そこでいよいよ装備紹介を目的とした前段演習の始まり。
まずは遠距離火力である特科火力の紹介からです。

特科部隊とは火砲とロケット、ミサイルを装備しています。



左から155mm榴弾砲、FH70(えふえっちななまる)、
203mm自走榴弾砲。
これらの射程距離は約30km。

そして99式155mm自走榴弾砲2門。
装填など全てに自動化が進んでいて準備いらずの楽なやつです。 
射程距離は約40km。

射程距離が違うこれらの砲で、同じところに同時に弾着させるという
超ハイパー技が特科火砲の展示の見どころとなります。



まず155mm榴弾砲が着発射撃(砲弾が地表で爆発する)。
号令では「自走15榴」と呼んでいました。



続いて203ミリ自走榴弾砲の集中射撃。
車上の砲員は射撃方向の反対を見ているのが不思議。
赤い旗の側の人が手を上げ、砲の根元にある発車のためのレバーを
押し下げる人は、それを凝視しています。



赤旗の横の人が手を振り下ろしたところで発砲します。



ストリームのキャプチャ写真で同じ瞬間を。
右側のレバー係は体ごと思いっきり下に押し下げていますね。

旗の人は次の瞬間赤旗を緑に付け替える役目です。



このFH70の砲撃は、後ろの方にいる(つまり見えない)中隊の
計5門が同時に弾着させるというもの。



「だんちゃ〜〜〜〜く、 いまっ!」

でほぼ同時に(写真は3発しか写ってません)弾着。
すごいー。 



TOT、と書くとまるで泣いている人みたいですが、
”Time on Target” のことで、ほぼ同じ地点に同時に弾着するように
タイミングを調整して間接砲撃を行う技術を意味します。

これらの装備がたとえ全く違ったところにいたとしても、
一点を同時に攻撃することができるのです。

ここでは合計22門が空中の一点を狙います。


だんちゃーく、いまっ。

とても22発の破裂には見えません。
一つだけ上方を撃ってしまったようですが、この日だけで、
27日の予行、本番は完璧でした。



続いてT0Tの「曳火射撃」です。
「曳火」とは英語で言うと「エアバースト」、空中破裂。

砲弾が空中で炸裂し、大量の破片が目標範囲に降り注ぎ、
敵の頭上から破片を降らせて敵を殲滅します。

この射撃は姿勢を低くしたり塹壕などの穴に潜った敵にも損害を与える、
大変有効な、つまり残忍な武器なのですが、わが自衛隊では
それで空中に絵を描くというとんでもないことをやってしまうのだった。

まずはFHと29榴が撃ちます。



少し遅れて15榴が。
そして・・・・。



お見事〜!!TOT (←これは顔文字)

放送でも言っていましたが、ことなる火砲、異なる場所からの車距離による弾着で
このように何かを描くというのはそれだけで高い技術を要します。
その中でも最も難しいのが、お待ちかね曳火射撃で描く富士山。

22門の火砲が描く富士山。
リハーサルではイマイチでしたが、今回はどうでしょうか。

「対 TOT富士、発動!」

という掛け声に続きまず20榴、一瞬遅れてFH70発砲。



そして15榴は2門が瞬きくらいの違いで発砲しました。



あっぱれじゃ〜〜〜!

  ___
  \●/ ))
(・∀・)ノ           /´・ω・`\



ところで今回はわたしもこれらの瞬間を全て撮り逃しませんでした。


なぜか。


答えは簡単、それは周りをがっつり固めていた撮り自な人たちの
カメラの操作音とか向きに、シンクロさせて撮ったからです。

Nikon1にはストップモーションという機能が付いていて、
シャッターを押している間撮り溜めしてくれるのですが、その機能か、
スピード優先シャッター(1/1250) 、5枚連射くらいでなんとか撮れました。

「どこでも写真は撮れる」などとうそぶいてしまったわたしですが、
27日にはそうでもないところに座ってしまい、ろくに撮れなかったので、
この周りの人たちの影響も含め、「撮る場所って大事」
とあらためて知ったのが今回の収穫かもしれません。


撮り自な人たちがあれだけして場所の確保に血道をあげるのも
こうなってはよくわかる、と言うしかありませんが、それを知ることが
わたし自身のために果たしてよかったのかどうかは謎です。




撃ち終わるとほぼ同時に敵がレーダーで陣地を補足して攻撃してくるので、
すぐに陣地変換を行います。



15榴は片付け要らずですが、一番大変なのがFH70。
砲口にかけたロープを全員でえいやー!と引っ張り、
手動で向きを変えて固定させ、自走して退却するまでがお仕事です。



それでも全部の自走砲たちが退場する最後尾に付くという素早さ。

ところで、この富士山ですが、100分の1レベルの弾道計算をもとに
発射のタイミングが決められています。
その弾道計算というのは、実は陸自の一隊員が行っていたらしいのですが、
今年か来年にその方が退官してしまうらしいんですね。

「その人が退官したら後それをする人がいないんだとか」

「計算、マニュアルにしてそれを受け継いでるんじゃないんですか」

「それが毎年違うらしいんですね」

「そんな・・・・匠の技みたいな・・・。
その人を永久隊員にして死ぬまで弾道計算やって貰えばいいのでは?」


まあ、自衛隊のことだから来年には誰かがしれっと後を継いでるような気もします。

ミツバチの世界だって猛烈に働いているグループを取り除いたら、
今までのらくらしていた怠けバチが猛然と働き出すらしいじゃないですか。


・・って全く関係なかったですね。すみません。


続く。