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映画「ファイナルカウントダウン」~零戦vs. F-14トムキャット

2015-02-01 | 映画

映画「ファイナルカウントダウン」、2日目です。

謎の時空の歪みを突入してタイムワープしてしまった、
1980年現在の原子力空母「ニミッツ」。
艦長始め乗組員の誰もがその後起こる「不思議なこと」からある一点・・・、

「自分たちはもしかしたら異次元に迷い込んだのではないか」

という可能性を想念に置きながらもそれを認めることができません。
とりあえず全員が想像したのは、どこかの国、それはおそらく・・・
当時の可能性としてはソ連なのですが、どこかの国と戦争が始まり、
相手が「心理戦」を仕掛けてきたのではないかということでした。



そこで「ニミッツ」は総員戦闘態勢に入ります。
F-14に爆装を・・・・って、これ全部積むんですか?

それと、どうにも不思議なエレベーターだなあ。
海の上をせり上がっているように見えます。



すべての航空機が総力戦に向けて準備を始める中・・・、



その同じ太平洋上では一隻のクルーズ船がのんびりと航行しています。
乗っているのは上院議員のチャップマンとその秘書、そして友人。
クルーに操縦を任せ、どうやらバカンスを楽しんでいる模様。



この映画の紅一点、キャサリン・ロス。
キャサリン・ロスというと、今どきの女の子は
お洋服の名前だと思っているかもしれませんが、
そもそもこのアパレルメーカーの目指したイメージは彼女の出世作、
「明日に向かって撃て!」で演じたエッタ・プレイスの
ファッションから。
つまりこの時のロスは
とってもイケてたということなんですね。

今は知らん。

他には「卒業」でダスティン・ホフマンに結婚式場から拉致される役が有名です。



本作品での彼女は上院議員の秘書として、その演説やら草稿を
ゴーストライターとして全て引き受けている頭のいい、
この時代にしては野心家の女性を演じています。

愛犬のコリー、チャーリーはいつも彼女のそばにいます。
しかしなぜか落ち着きなく外に向かって走りながら吠えるチャーリー。

皆が一緒に空を見上げると空を飛来する信じられない速さの航空機2機。
そう、われらがニミッツの艦載機、トムキャットでした。

「あれが米軍機なら極秘の新型だ」



ニミッツ艦上ではヨット発見の報を受け、監視を続けさせるとともに
A-6給油機を空中空輸に向かわせました。

・・・・なんで?

よくわかりませんが、F-14の監視が長引くと思ったのでしょうか。
それとも単に映像で空中給油を見せるためのサービスシーン?



相変わらずラジオからは妙な放送が流れてきます。
「ルイス」というボクシング選手の試合実況。

「誰だ?」

ジョー・ルイスは1914年生まれのヘビー級ボクサー。
史上二人目のアフリカ系チャンピオンで、あだ名は

褐色の爆撃機(The Brown Bomber)」。
1934年から1949年まで現役で、11年間の王座在位中、
世界王座25連続防衛の世界記録を作り、この偉業は未だに破られていません。


しかし彼らは相変わらず

「軍放送の懐古番組だろう」
「海軍の秘密演習ではないでしょうか」


などと言い合っております。
国防省がラスキーを視察によこした日にこんなことが起こる、というので、

「国防省が圧力下における我々の様子を観察しているのでは」

という意見もでてきました。

まあこれなら可能性もありますかね。



しかし、偵察機が送ってきた真珠湾の写真を見て全員が絶句します。

写っている軍艦が全て旧式艦ばかり。
戦艦アリゾナが完璧な姿で写っています。


・・・・ん?

なんか海面に雷跡みたいなのが見えてるんですけど・・。
それに、なんだか大きな波紋がありませんか?

そう、これはですね。
フィルム全盛時代であまり観客が細部を見られず、
もとよりPhotoshopなどの写真加工技術もない頃の映画ゆえ、

ばれないだろうと思って、スタッフが

真珠湾攻撃のときの航空写真をそのまま流用

しているんですね。
これはウェストバージニアに実際に雷撃が命中した時に撮ったもので、

魚雷が立てた水柱もはっきり写っている写真です。
だから「完全な姿」のアリゾナもこの少し後には沈没する運命なのです。


しかし、ツメが甘いというのか、この後戦史ヲタのオーエンス中佐に持って来させた
スミソニアンの「真珠湾攻撃の写真」と
この偵察機が撮った写真が、
全く同じ写真。
角度も波紋もまるで一緒。んなあほな(笑)



乗員の間でもパニックは広がりつつありました。
皆が戦争に突入したと感じています。



ラスキーの乗艦とこの現象の間に何らかの関係があるとみて彼を問い詰める艦長。

・・・まあ、それはある意味正しいんですが。



これこそがある意味タイムパラドックスそのものです。

ネタバレごめんで言ってしまうと、ラスキーは、謎の人物タイドマンに
「ニミッツ」乗艦を命じられて、今ここにいるわけです。

それではタイドマンは彼になぜそれを命じたか。
「歴史では」タイドマンが彼を乗せた日、「ニミッツ」は
1941年12月6日にタイムワープすることになっているからです。

言い方を変えると、タイドマンは39年前、
ラスキーが「ニミッツ」に乗っていたことを記憶していたからこそ、
1980年のこんにち、全く同じ現象を起こす必要があったわけです。

しかし、それではいったい原初、ラスキーは

何のために「ニミッツ」に乗らなくてはいけなかったのか。

その継ぎ目のないメビウスの輪のような流れの中からは

「ラスキーがニミッツに乗らなければならない理由」

はすでに消滅してしまっているのです。
わたしはこういうのに
なんとも言えない恐怖を覚えるのですが、
この感覚をどなたか
理解し共有してくださる方はおられませんでしょうか。




ここでサービスシーン。

A-6から先がバドミントンのシャトルのような形をした
給油用のコードがスルスルと伸びてきて、F-14に近づいてきます。
右に出ているF-14のノズルをすっぽりくわえ込み、
空中給油を行う様子を見せてくれるわけ。



「給油が済んだらガラスを拭いてくれ」

もう100回は繰り返して誰も言わなくなったに違いない軽口をあえて叩いてみせています。
これもサービスシーンならでは。



給油終了。



「ニミッツ」に国籍不明機確認の連絡が入ります。



「アラート1 イーグルだ」



「Two Japanese Zero, sir.」
Two, WHAT?!
「Mitsubishi, A 6M ZERO.」

いやいや、その判断は違ってますぜ旦那。
このかっこ悪い水平尾翼は紛れもなくおたくのA-6ではないですかやだなあ。
翼の形も全然違うしー。

というわけで、またまた零戦のふりをした敵さん、
じゃなくてテキサンだったんですね。
なんどもこのテキサン、国内外の戦争映画で零戦を「演じて」いるわけですが、
言うほどこれ似てるかなあ?




「上方から監視を続けろ。攻撃はするな」


 
「何者かが我々を1941年に引き戻そうとしている」
「ソ連だ」
「心霊現象かも」

「いや、可能性を否定するのはやめましょう。
これは現実かもしれないという」

 

ところで上院議員のヨットに危機が迫っていました。



真珠湾攻撃の偵察に零戦でやってきた(ここは笑いどころ?)
かれらは、目撃者
を抹殺するつもりです。

真珠湾攻撃の際、第一波空中攻撃隊は艦戦43機、艦爆51機、
艦攻89機、計183機が一気に空母から発進して現地に向かいました。
その前日に日の丸をつけた戦闘機がうろうろしていれば、
民間軍関係なく目撃されて当たり前だし、
それではまず奇襲にならないと思うのはわたしだけ?


しかも一般人の目撃者を攻撃・・・。
マイケル・ベイの抱腹絶倒映画「パールハーバー」では、
やたら日本軍が一般人を殺戮したというイメージを植え付けようと
色々とやらかしてくれていましたが、ここでもそれをやっとるわけです。



「やっつけろ」

ってか?
それはいいんだけど、コクピットの下に書いてあるカタカナがどうしても読めない。
というか意味がわからない。


「大て左ノ ヂヤツク ホルデン」

・・・・何かの暗号?
もしかしたら後半は「ジャック・ホールデン」?
すごく無理があるけど、もしかしたらアメリカ航空隊のノリで
「大好きなジャックホールデン」とパイロットが零戦に書いたとか?

・・・ジャックホールデンって誰。


前にもお話しした「パールハーバー」なんかは「ねーよw」の宝庫で、
やはり映画製作に日本人の関与がなかったことがはっきりしてますが、
こういう人を小馬鹿にしたようないい加減さってなんなんだろう。

だいたい日本人くらい日系人に演じさせろよっていうね。



それはどうでもよろしい。よくないけど。

まず一航過して銃撃で一人殺した零戦、



こんどは60キロ爆弾でヨットを全力爆破
いったい民間船相手に何やってんだよ(笑)

まるで中国の山村の民間を全兵力を駆使して攻撃し、銃弾を使いまくって
民間人を殺戮する、映画「戦争と人間」の中の帝国陸軍みたいだわー。
(説明っぽいな)



ヨットが襲われた時から、上空のF-14は艦長に対し発砲許可を求めていましたが、
イエランド大佐は頑として許可を出しません。

もしこれが歴史通りなら、後世の人間が零戦を攻撃することによって
「バタフライ効果」が起こる恐れがあるから。

だと思いたいのですが、
このおっさんがそんな深謀遠慮をするようなタマではないことが
見ていればすぐにわかります(笑)




ところが零戦が目撃者を残さず殺すため、またもや帰ってきて銃撃を加え、



それで海に潜れない一人が殺されてしまいました。
しかし艦長はトムキャットのドライバーに、
とにかく零戦を「追い払うように」命令します。



ここのドッグファイトシーンが映画の中でも特に見もの。
でも、なんかわたしは嫌な感じでしたね。



大東亜戦争中には陳腐化し、いずれ王座を明け渡す運命とはいえ、
零式艦上戦闘機は開戦からしばらくは無敵だったわけです。

ところがこの映画ではその零戦の前に40年後の「未来の戦闘機」が現れ、
その機能を相手に見せびらかすのです。



因みにF-14のスペック
は速度マッハ2.34零戦は533.4km/h。
速度を表す単位すら違うっつの(笑) 



このアイデアをパクった疑惑のある「ジパング」でも、
護衛艦「みらい」がアメリカ海軍相手にVLSを撃って
旧式戦艦の乗員を驚かせていますが、
やっているのが日本側だから面白かったのだと、
ここで逆をやられて初めて知りました。



びびりまくる零戦搭乗員。
アメリカ人は、さぞこの映画公開時ここでスカッとしたんでしょう。
このときF-14を操縦していたドライバーもきっと(笑)



零戦の周りを旋回するだけでビビらせていたF-14にいきなり発砲を許可する艦長。
その理由は?

零戦が「ニミッツ」の方角に向かったからでした。

タイムパラドックスの観点から人命は見逃せても、
40年前の人間に「ニミッツ」を見られたら・・。

「Splush the zero. I say again, splush the zero!」



いやっほーい!撃墜していいんすかー!

って感じでF-14はあっという間に零戦を撃墜してしまいます。



瞬時にして一人戦死。
もう一機もミサイルであっさり撃墜。



F-14にすれば零戦を撃墜することなど、弱ってじっとしているハエを叩くよりも
簡単なことだったに違いありません。


 

その後人員救出するため、あっという間にシーキング現場到着。
ダイバーが海中に飛び込むところ。
これは本物のクルーだと思われます。



まずヨットの生存者2名プラス1匹。



すっかりソルティドッグ(潮水漬け犬)状態のチャーリー。



破壊された零戦の翼につかまる搭乗員。
彼もヘリに救出されニミッツに連れていかれるわけですが・・。

ここでアメリカ人は大きな勘違いをしております。
もしこんな状態、しかもそれが大作戦の偵察途中ならば、
日本軍のパイロットがおめおめと捕虜になどなるでしょうか。

陸軍の東条英機大将からのお達しとはいえ、日本軍には

「生きて虜囚の辱めを受けず」

という言葉が生きていて、戦闘機搭乗員が携帯していたピストルは
これ即ち敵の手に落ちる前に自決するためのものだったわけで。

わざわざ韓国系に日本人を演じさせることと言いこれと言い、
やっぱりアメリカ人って日本人のことを何も知らんのだなあ、
とこういうところでも嘆息させられます。

 

40年前の人間を乗せたヘリが着艦しました。
早速ヘリのホイールに車止めを置きに来るスタッフ。



搭乗員が海上から拾い上げられて一体何時間経っているのでしょうか。
海面からニミッツまでシーキングで運ばれている間に
分厚い飛行服もライフジャケットも、すっかり乾いています。

それから普通捕虜を護送するときには手ぐらい縛りませんかね。



ヘリから降りてきた零戦搭乗員。



不思議そうに乗ってきたヘリを眺め、首を巡らせてコルセアを凝視したりしています。
まあ、彼にとっては宇宙船を見るような気持ちでしょうな。
しかもその機体には、よく知ったアメリカ軍の星のマークが、
これは全く変わらないままでつけられているのですから。

「俺を撃墜した戦闘機といい、艦上の飛行機といい・・・・解せぬ」

さあ、どうなる零戦搭乗員。


続く。