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パシフィックコースト航空博物館~「ファイナルカウントダウン」と「スコシ作戦」

2014-08-05 | 航空機

サンフランシスコを北上、ワインカントリーであるナパ、ソノマ地域に
ある民間空港、チャールズ・M・シュルツ・ソノマカウンティ空港。

その一角にこの航空博物館はあります。

外に置きっぱなしの展示といい、寄付だけで賄われている感じといい、
いかにも退職老人の再就職先になっていそうな感じといい、
空港の片隅にある博物館にありがちな手作り感満載の小さなものですが、
いずれにせよわたしはキャリー・ブラッドショーが(今テレビでやってる)
マノロ・ブラニクのバーゲン会場を目の前にしたような気持ちで
この宝の山に脚を踏み入れたのでした。



マクドネルダグラス F−15 イーグル

前回911現場であるNY上空に航空機突入の時間駆けつけていたとして

「彼らは英雄かもしれないが、却ってこれは陰謀説を裏付けないか」

と書いてみたのですが、まあ、この話は軽く受け流して下さい(笑)
それより、このイーグルがどこから飛んで来たかと言うと、
バージニア州のラングレー空軍基地。
約600キロで、ちょうど東京大阪間くらいです。

確かに車なら7時間の距離ですが超音速戦闘機なら15分で来れますよね(棒)
2機目の突入のときだって、たぶん軍は捕捉していたはずですよね(棒)

それはともかく。


F−15はその後退役が進んでおり、現在軍使用されているのは
ネバダ州のネリス空軍基地のみです。

そもそも高価すぎてサウジとか日本とか、お金持ちの国にしか
買ってもらえなかったという戦闘機なんですね。



元々のペイントがうっすらと透けて見えています。
「ケープコッド」とあるのですが、F−15イーグルの名前としては
あまりイメージが合っていないような・・・。

パイロットがボストンのこのペニンシュラ出身でしょうか。



 コクピット下にはパイロットの名前を書く慣習がありますが、
ここに書かれた名前には軍階級がありません。

F−15は過去の空戦で撃墜されたという記録がなく、
現地の説明によると「100以上の空戦に勝利している」そうです。 



実はこの航空機には案内板がありませんでした。
展示マップにも該当場所には何も書かれていないので、
おそらく最近導入した展示ではないでしょうか。

しかし、今のわたしにはたちどころに機種がわかってしまうのだった(笑)

まずこの無理矢理な翼のたたみ方。
これは間違いなく艦載機の特徴ですね。



海軍所属で、おまけにホーネットの艦載機、と書いてあります。
これは

Grumman S-2 TRACKER

だと思われます。
去年の夏空母「ホーネット」を見学し、ハンガーデッキにこのトラッカーが
非常に肩身の狭そうな様子で展示されていたのを思い出しました。

そのときも書いたのですが、空母艦載機として運用することを大前提にしすぎて、
装備を小さな機体になんでもかんでも詰め込んで居住性を犠牲にしたため、
このトラッカー、搭乗員たちからは不満続出だったということです。

ところでたった今画像を見て気づいたのですが、このトラッカー、

MADブームがついていません。



お尻の部分を拡大してみると取り外されたように見えないこともありません。
このトラッカーは対潜用に作られたので電子戦の装備があり、
必ずブームをつけているのだと思っていたのですが・・・。

(追記:
その後読者諸氏のご指摘によりこれは

S-2 の機体を改造したC-1トレーダー

で、 
共通の機体として 他に

E-1トレーサー 

と言う早期警戒機が製作されているらしいことがわかりました。


ここにあらためて訂正します。
ちょーっとわかったつもりで調子こいたらこれ。
まだまだ修行が足りませんorz) 



Sikorski H-34 CHOCTAW

アメリカ陸軍のカーキーグリーンは、自衛隊のOD色よりも
かなり明度が高いように自称「絶対音感と絶対色感」
を持っているところのエリス中尉には思われました。

このチョクトというのは何度も同じボケですみませんが、
菅直人のことではなく、北米ネイティブアメリカンの部族名です。

日本でも現地生産して調達されていた機種で、
世界的には2261機が生産され、この台数を以て
この業界ではベストセラーとされているようです。

というか、軍用ヘリってこの程度生産されればベストセラーなんですね。




こういう説明のボードが全ての展示に付けられているとは限りません。

が、このヘリに関してはスポンサーが大物(ヒルトンホテルとソノマワイン組合)
のせいか、ちゃんとした説明板があります。
このように、この博物館、地元企業が何社かで一機を受け持ち、
そのメンテナンスのお金をスポンサードして、企業イメージ
と共にこういうところで宣伝をするわけです。

これ、いいシステムだと思いませんか?

これも何度もしつこいですが、鹿屋の二式大艇、それからこの間お話しした
海洋大学の明治丸も、企業のスポンサーを募ればいいのでは?
その代わり、そのことを現地の案内やHPに明記するというのは?
匿名の篤志を募るより、効率がいいと思うんですが、いかがなものでしょう。



陸軍ヘリのチョクトー部隊のマークは凶悪面のブルドッグ。
ご丁寧にイガイガの首輪までつけています。
頭と尻尾になにやらついているのですが、これは画力が残念なため
何かは分かり難いながら、どうやらヘリのローターのつもりらしいですね。

たしかにこのチョクトーはずんぐりしていてブルドッグのようなシェイプ。
機体のイメージから「ブルドッグ」を自称しているいるのです。



ここはテールが持ち上がる部分。
排気のためにメッシュの窓がはめ込まれています。


自衛隊にも17機が導入され、そのうち1機は海保に移譲されて
南極観測船「宗谷」の艦載機として昭和基地と宗谷の間の
輸送に活躍したそうです。




使われることがなかった爆薬の類いが、ケースごと。
手前のは完璧にさびています。



 NORTHROP F−5E "FREEDOM FIGHTER " TIGER II

トルコ空軍の曲技飛行隊はこの機種を使っています。
小型軽量で大変運用しやすかったので、このトルコ始め
発展途上国に大量に輸出されたそうです。


もともとアメリカ空軍では使用する予定がなかったのですが、
供与された国が

「困るなーアメリカ空軍でも使ってその実績を教えてくれなきゃー。
あんたんとこ、今戦争してるじゃん?
それともなに?
自分とこで使わないような商品を売りつけようっての?」


とごもっともな要求をしてくるようになったため、(たぶん)
アメリカはこれをベトナム戦争に対地攻撃用として投入しました。

この際、F−5が参加する作戦は

「スコシ・タイガー・オペレーション」

と名付けられています。
「スコシ」って何だと思います?
そう、日本語の「少し」なんですよ。
なんだかすごく間抜けな響きがするような気がするのはわたしが日本人だから?


なぜわざわざ日本語を投入したかと言うと、外国空軍への供与、
並びにその実績説明というのがその第1目的だったため、
何となく雰囲気で外国語を使ってみたようです。
しかも「ガチ投入」ではありませんよ~、というのがこの
「少し」に現れている、と・・・。

供与先が日本ではなかったのが逆に日本語使用の理由かもしれません。
(日本相手だとふざけてんのかと思われるから・・・たぶん) 



そうと知ってみると、とたんに親近感が湧いて来るではないの。
やたら羽が短くて、こんなので大丈夫か、って気もしますが、
アクロバットに使われるくらいですからきっと制動性もいいのでしょう。



これはどこ海軍所属なんですか?
この赤い星・・共産系国のマークのような気もするのですが、
これがスコシタイガー参加機なんでしょうか。



グラマン F−14A トムキャット

グラマンの猫戦闘機、トムキャット。
冒頭の写真は正面から撮ったものですが、ウィングが可動式で
肩をすくめた状態になっているので、あまりかっこよくありません。
(感想には個人差があります)

なんだか変な色にペイントされてしまっていますが、これは
メインテナンスの途中なのだと思います。

・・・・途中ですよね・・・?

毎日必ずどこかを補修しても、航空機が多いので一巡することには
最初の航空機はもうすでに補修が必要になっています。

サンタローザは夏の暑さは強烈ですし、雨も降りますから
外に置きっぱなしの展示は劣化しやすそうです。



オークランドのエアミュージアムではこの部分が旭日模様の

「サンダウナー仕様」

つまり「日本をやっつけ隊マーク」になっていたわけですが、
このトムキャットは第84戦闘機隊の所属マークがつけられています。



海軍第84戦闘機隊は、このスカル&クロスボーンのマークと共に、
1980年の映画

「ファイナル・カウントダウン」

に原子力空母「ニミッツ」と共にに出演したことで知名度の高い航空隊です。
航空隊のニックネームは

「ジョリーロジャース」。

英語圏では一般的に海賊旗をこう称することからです。



翼の下の配線もこのように展示してくれています。
ここの展示も手で触れることを禁止していません。


ところで映画「ファイナル・カウントダウン」はこういう話です。

1980年、真珠湾を航行していた「ニミッツ」が竜巻に遭い、
それが去った後、偵察に出た艦載機トムキャットが発見したのは
日本海軍の零戦だった。
「ニミッツ」がタイムスリップしたのは1942年12月6日、
つまり真珠湾攻撃の前日であったー。




ちょっと待て、それはまるで「ジパング」ではないのか、
と思ったあなた、あなたは正しい。
残念ながらこの映画は「ジパング」に先立つこと20年前に
すでに公開されており、この「タイムスリップ戦史もしも物」の
原型においてはこちらがオリジナル、つまり「ジパング」は
アイデアにおいてはこちらの二番煎じだったんですねー。

おまけに、このテーマソング、聴いて頂けます?


The Final Countdown 1980 theme John Scott

お時間のない方は4分20秒からだけで結構です。

「こりゃー”あれ”じゃん!」

と思った方、その通り。
業界では有名なパクリなんですね。
映画公開の2年後にヒットした曲なので、言い逃れできません。
今この曲のクレジットを見ると「ジョン・スコット」という名前が
作曲者「大森某」の名と共に併記されています。

これは、なんとファイナルカウントダウンの音楽担当、
ジョン・スコットが、わざわざ盗作を指摘するために来日し
さらに大森某も盗作であったと素直に認めたため、
作曲者として名前を連ねることにしたのでした。

うーん。恥ずかしい。
これは恥ずかしいぞ日本。

パクリがどうのこうのと某国や某国を日夜馬鹿にしていても、
実はわずか3~40年前にこんなことがあったというのは恥ずかしい。
まあ、しらばっくれずに盗作を認めて対処した、というところに
潔さと言うか日本人らしい気の弱さを見て少し安心しますが。

このころはインターネットは勿論ビデオさえ一般的でなく、
従って映画は映画館かテレビで放映された物を見るしかなかったんですね。
ましてや映画音楽は、よほどヒットした場合を除き、
一般の耳にほとんど触れることなく終わってしまったのですから、
ばれないだろうと思ってつい盗作に走ってしまったのでしょう。

「ジパング」の方はアイデアをパクりながらも色々と展開させているので
著作権的にはセーフなのかもしれませんが・・。

音楽といいストーリーといい、このファイナルカウントダウン、
日本人の「これをやってみたい!」という琴線に触れるもの満載だったようです。
そこそこ無名だったのがパクられる原因だったとも言えますが、
それにしてもこれはどちらもアウトだろっていう。






何の説明もなく展示されていたエンジン。
せめて包装を外してほしいと思ったエリス中尉でした。


ところで大森さんを庇うつもりはありませんが、
メロディが既存の曲に似てしまうということは
音楽家の立場から言っても、特に「歌もの」ではよくあることです。
音列に限りがあり、コード進行もパターンがある限り
これはある意味避けられないことなんですね。

以前お話しした「ライトスタッフ」のテーマがチャイコフスキーの
バイオリンコンチェルトに瓜二つ、という件に関しては

「宇宙開発でロシアと張り合っていたという映画の内容に合わせたシャレではないか」

と、1000歩譲って理解しようとしてみたわけですが、
もしそうであればこれは「故意犯」しかもそれを隠していないパターン。

たまたま知らずに似せてしまった、という確信犯と違い
「ララバイ」は完全に故意犯だったのがアイタタタでした。

世の中には

「青い影」(プロコル・ハルム)と「青春の影」(チューリップ)

の関係のように、聴く人が聴けばああパクったな、と思えても
コード進行が全く同じという程度では一般にはお咎めもなし、
という実例があります。

しかもこの件では「青春の影」はどこからも非難されておりません。
わたしの知る限り。
これは「ジパング」のシチュエーション類似と共に

「スコシ・パクリ作戦」

の成功例といえましょう。







続きます。