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アメリカのビフォーアフター番組に見るテレビ番組の作り方

2011-07-22 | アメリカ

アメリカに来ると、テレビを見ます。
日本では決して見ない(持ってないし)テレビを、こちらなら見る気になる理由は唯一つ。
「面白い事をやっている番組が一つくらいはどこかにある」から。

事実上は100近いチャンネルがあって、そのチャンネルは一日中ほぼ同じ傾向の内容を放送しています。
スポーツ、ニュース、移民のためのスペイン語チャンネルは勿論のこと、

「映画ばかりのチャンネル」
「SF、ミステリー映画専用(Sy-Fy)」
「歴史モノばかり(ヒストリーチャンネル)」
「子供番組専門(PBS)」「アニメ専門(cartoon)」
「お天気や災害関係ばかり(ウェザーチャンネル)」
「料理、食べ物(フードチャンネル)」「旅行(トラベルチャンネル)」
日本でも観ることができるようになった「ディスカバリーチャンネル」は、「ナショジオ・チャンネル」
とともに、自然科学系の番組です。

そして、通販チャンネルや芸能チャンネルとともに、主婦が好きなんだろうなあと思える、
「家を買ったり、リノベーションしたり、ということばかりショーにしているチャンネル」。

今日は、この中からTLCの「MOVING UP」という「お引っ越し番組」を紹介します。

アメリカ人が家を購入するときは、日本のように新築をすることはあまりなく、
大抵年月を経た家を自分なりに作り変えていく方法を好みます。
この番組は一口で言うと、ビフォーアフターものなのですが、いかに変わったかはポイントでなく、
引っ越しした人が、以前自分の住んでいた家が新しい住人によって作り変えられた様子を見て、
あれこれ(文句を)言うのが番組のテーマ
、という妙な企画です。


実際に画像で説明していきます。
登場する転居家族は三組。まず
ある家から引っ越すおじさん。

おじさんの家に引っ越す夫婦。

夫婦の引っ越したあとの家に引っ越すカップル・・・・ん?

男性カップルです・・・・。

この辺りがアメリカですねえ。
年寄りの白人男性と若い東洋人男性のゲイなのですが、当たり前のように「夫婦」として
番組に出演しています。
誰もゲイとかホモとか口にしません(当たり前か)。
この番組は、引っ越しと家の改装を中心に、各カップルの人間模様も時おり垣間見せる、
というよくある作りになっているのです。
このゲイカップル、W(ダブリュー)とイアン(じーさんの方)は、二人の馴れ初めを語ったり、
ノーマルな?夫婦のキーシャとイブがペンキ塗りの時にこういうマネをして

いちゃいちゃするというような愛情表現は残念ながら見せてくれませんでした。
しかし、狭いアパートから引っ越すにあたり、イアンはWに、すっぱらしいプレゼントをします。
 

なんと!ピアノですよ。
左画像のキャプションを見てもらえば分かりますが、ピアノが欲しくてたまらなかったWに、
イアンがこの際大盤振る舞いプレゼント決行、と言うことのようです。
うーん、この二人の関係、一体何なの?イアンって、仕事は何?
視聴者はそんなことも思いながら「覗き見」する気分でこういう番組を見るのです。(たぶん)
「じゃーん!」といってピアノを誇らしげにWに贈呈するイアン。
熱く抱擁するかと思ったら、そのシーンは自主規制によりカット(たぶん)。そのかわり

喜んでさっそく演奏を披露するW。なかなかお上手でした。

さて、番組は

1「自分が長年住んでいた家を思い入れたっぷりに紹介」
2「いよいよお引っ越し、胸キュンの日」
3「新しい家を渾身の力を込めてリノベーション」
という順序で進んでいきます。

ご存知と思いますが、アメリカの家は壁を塗り替えることをよく家人が行います。
これがやりたくて仕方がない、と言う人もいるようで、ホームセンターには実にバラエティに富んだ
壁塗り用の便利グッズと、勿論気の遠くなるような色のバリエーションがあります。
そして、彼らはペンキ塗りのみならず、多少の工事なら自分でやってしまいます。

 

 

前住人の残して行った棚を撤去したり、暖炉まで作り変えてしまっています。
ところで、三枚目画像で
W?学校に行っているよ」
ってイアンが言っていますね。(映っているのは床の張り替えに来た知人の大工さん)
未だ学生なのかW
いやそれとも学校の先生か?
こんなに年が離れていて、本当に愛はあるのか?
もしかしてパトロン?それともただの養子?

と、多分視聴者は興味を(以下略)

さて。
このあとインテリアショップで好みのインテリアグッズを買い、カーテンやクッション、ベッドカバー、
全て自分たちのテイストでデコレーションし、各自死力を尽くした改装は終わりました。

ここからがメインイベント。


実はこのショウは、この司会者が仕切っています。
これから、改装済みの新居を、前の住人(キーシャとイブ)に見せ、その様子を録画したのを
見るのですが、ここで「彼らがなんていうか、ドキドキしませんか?」って聞いていますね。
これに対しイアンは「昨日は寝られなかったよ」なんて言うんですが、

WHY?

前の持ち主がどんな感想を持とうが、新しい住人に何の関係があるのだろう?
などと突っ込んでは番組になりません。
これはそういうショウなのです。(たぶん)
 

こうやって真剣な顔で彼らの反応を見るイアンとWの二人ですが、キーシャとイブ、
さすが名は体を表す。
KYです。

二人が選んだ「エインシェント・アジア風」のインテリアを画像のように
「わからないねえ。古代の伝統、っての?wwww」とか
(この二人はWとイアンを見ていないので、Wが東洋人であることは全く知らない)
「まったく気にいらないわ。私たちの好みとは全然違うし」「ヘンな色の壁」
とか、クサしまくり。
さすがに二人はムッとして?
「好みが違うから改装したんだよ!何言ってるんだこの人らは」
(キーシャの口マネをして)「気にいらないわ!って、もういいから俺たちの家から出て行けよ」
「この旦那はかみさんの言うことをそのまま言ってるだけだな(尻にひかれてるんだきっと)」
とか、こっちも言いたい放題。

でも、この「カゲ口言い放題」が、えてしてアメリカのテレビでは売り物になります。
皆いい人、悪口も無し、めでたしめでたし、は視聴者にすぐ飽きられてしまいますから。
これに限りませんが、アメリカのショウはワンパターンの繰り返し。
人が変わるだけです。
しかし、実にいろんな人が次々と出てくるのでそれだけで番組が続いてしまうんですね。
日本のように面白いことを言うために雇われた「ひな壇芸人」などおりません。
面白い一般人はその辺にいくらでもいるのです。
たとえ面白くなくても、覗き見趣味だけで十分楽しめてしまうわけです。
(低俗な興味には違いありませんが、この覗き見趣味こそ大衆を引きつけるポイントかと)
だからこそワンパターン番組にはが必要となってきます。

というわけでこのKYはやらせですね。(確信)

そして今度はそのキーシャとイブの渾身のリノベーションによる家を、前の住人のおじさんが見る番です。
人のインテリアを貶しまくったくせに、この二人はおじさんが何を言うかビビっています。

 

ところが、ディレクター的にはマズーなことにこのおじさん、「実にいい人」。
人の気分の悪くなるようなことは決して言いません。


10点満点で?と聞かれて「うーん・・・6・5かなあ」と言うくらいですから、
あまり気に行っていないのは明白なんですけどね。
このおじさんのお気に入りだった部屋のペンキの色を、KY夫婦は
 

趣味悪うー!と言ったり、まるでピーマンの色じゃーんと笑っていたわけです。
(自分が同じような色の服を着ている件はスルー)

このピーマン部屋のアフターは右画像。
見かけによらず派手色好きらしいおじさん、かつてのお気に入りの部屋を地味色に変えられてしまい、
ただ悲しそうに「なんだかなあ」と煮え切らないコメント。
まあ、このおじさんも実のところ
「後の住人がどう部屋を変えようとその人たちの自由だが・・・」
って思ってただけなのかもしれませんが。

そこでテレビ的に美味しく終わらせるのが仕事のこの司会者、
「しいて言えば、豆をすりつぶしたベビーフードの色・・・・って感じ?」
と善良なおじさんに無理やり悪口らしきことを言わせて
どんな味だよ!」「オホホホ!」
という、しょーもないオチをKY夫婦に(なんとか)つけさせています。
許さん。
・・・ってそういう話じゃないんだけどさ。

テレビのやらせはここでも必要悪ってことのようですね。