ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

Take Me Out To The Ball Game

2011-07-16 | アメリカ

ボストンの某校で夏季キャンプに参加して二週間目。
いつものドロップオフ(車でエントランス前に子供を落とすこと。スタッフが迎えてくれるので親はそのまま走り去る)
の場所がいつもと違う雰囲気。
なんだかレッドソックスのユニフォームを着たお兄ちゃんがテンションハイでお迎えしています。


「な、なにこれ?場所間違えたのかな」
そこでふと気づけは、このような看板が。
そう、この学校では今週からこの
「レッドソックス・サマーキャンプ」が開催されるのでした。
長年この学校のキャンプに参加していますが、どうも今季初の試みで
「本物のレッドソックスの選手だかコーチだかの関係者の指導を受けて
君も明日のレッドソックスプレイヤーを目指さないか?」
という趣旨のものが始まったようです。
息子のキャンプはこの派手―なお迎えの向こうでいつも通りのドロップオフでした。

この緑色の物体は、レッドソックスのマスコットです。
アメリカのこの手のものって、どれもセサミストリートに見えてしまいますが、これなんだろう。
カエル?
どうやらワリーというらしい。
(以下わりーわりーというシャレ自粛)
お母さんが無茶苦茶喜んでます。
このキャンプに参加させるからには、親も熱心なレッドソックスファンでしょうからね。



何年か前松坂投手がレッドソックス入りしたとき、スポーツ用品店で松坂大輔人形を見つけました。
今ならネタのために絶対購入するか写真にこっそり撮ってブログにアップするのですが・・・・。
それは誰にも似ていない謎の東洋人の人形でした。
これは野茂投手人形のデザインをそのまま流用したと言われてもおそらく納得したでしょう。
髭を生やしたアメリカ人を見たら「バースや!」と言ってた関西人みたいなノリだったのかも。

当時地元のスポーツ紙が、でかでかと松坂選手の大アップ写真を表紙に載せてるのも見ましたが、
何しろボストニアンのマツザカに対する期待たるや凄いものだったようです。
ボストン響の常任を長らく小澤征爾氏がつとめていたこともあって、ボストンの人々は
「日本」に対して特に親近感を持っているらしいこともうすうす感じました。

そういえばシアトルに旅行に行ったときパーキングの料金所にいたおじさんが
「おお、日本人か、昨日イチロー見た?見てない?凄かったんだよおお」
と声をかけて来ましたっけ。
スーパースターこそがその国の印象アップに多大な貢献をしていると感じたものです。

アメリカにいると、嫌でもこのキャンプのようなものを目にしたり、このように話しかけられ、
野球がアメリカの文化に占められる大きさを意識せざるをえません。


このキャンプ、指導者のほとんどは勿論二軍選手などではなく、おそらくアルバイト。
おそらく何人か、球団関係者が混じっているのではないかと思われますが、


他のひょろひょろした若者たちと少し違うたたずまいの貫禄のある人を発見。
ちょっと年配のようだし、何の根拠もなくこの人を勝手にレッドソックス関係者と認定。
二軍コーチってとこでしょうか?

馬鹿もん!これは、あの有名なジミー・ドゥーガン(←適当)ではないか!
っていうことはないかな。

ジミー・ドゥーガンで思い出したのですが(自分で適当に思いついた名前で思い出すという)
ジミー・ボートンっていう大リーガー、知ってます?

1939年生まれのピッチャーでニューヨークヤンキースなどに在籍し、アメリカ人であれば
野球に詳しくなくても名前くらい知っている、という、日本で言えば落合選手ってところでしょうか。
野球に詳しくない日本人であるところのわたしは勿論聞いたこともない名前でしたが、
あるパーティーでジム・ボートン夫妻と同席したことがあります。
また理由はいずれ書くこともあろうかと思いますが、911の起こった後のサンクスギビング、
ニューヨーク州の田舎の宿での出来事でした。

その911でがれきの撤去にそれこそ死ぬ思いで従事している消防士たちをねぎらう食事会を
地元の有志が企画したもので、その同じテーブルに奥様とともに座っていた寡黙な男性が、
ジム・ボートンその人だったわけです。

奥様はとても明るい社交的な方で、私たちにしきりに話しかけ、
近くにあるノーマン・ロックウェル美術館のことなどでひとしきり話が弾んだ後、
「ところで、野球はお好き?」
と聞いてこられました。

これは「大好きです!イチローも頑張っているし」
などという私たちの答を期待して
「うふふ、うちの主人ね、元大リーガーなのよ。ヤンキースにいたの」
「ええっすごい!サインいいですかー」

と言う話につなげるための(後から思えば)伏線だったわけですが、知識もなければ興味もなく、
さらに空気も読めないうちのTOったら、
「好きではありません!」(直訳)
って答えてしまったんですよ。

いかん!いかんぞお!
ここはアメリカ、野球国家。ここで実は野球が好きか嫌いかなんて問題ではないんだ。
「好きですか」と聞かれれば
「あまり詳しくはありませんが・・・・」
くらいソフトに答えるのが会話の潤滑油っていうか、社交ってもんだろうが。
と、横から心の中でTOに突っ込むも遅し。
奥様、がっかりした顔をして、(ごめんなさい・・・<(_ _)>)
「あらああ・・・・・でも、イチローはすごいわよね!」
と会話をそちらにつなげ、場がしらけないようにして下さいました。
いい人でよかった。

そして、その会話を横で黙って聞いていた男性が次の瞬間、司会者に呼ばれて壇上に。

「皆さん!驚きのゲストが今日はここに来ております。
元大リーガー、ニューヨークヤンキースの名ピッチャー、
ジム・ボートンです!」

どよめく会場。ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿

たまげる私たち。( ゜д゜ )( ゜д゜ )

さらに往年の名ピッチャーが、演説の時におそらく必ずすると思われる話のつかみが、
「この間、あるところで、ヤンキースにいた、と言ったんだ。そしたら、
『本当か!俺ジミー・ボートンのファンなんだけど、彼のことなんか知ってる?』
って聞かれちまってさ。HAHAHA」
皆「HAHAHAHA」

だったという・・・・・。
まあ、ジョークとはいえアメリカ人でもこんなですから、日本人が知らなくて当然ともいえますが。

本日タイトルのTake Me Out To The Ball Game、
「私を野球に連れてって」は、まさにアメリカと言う国の野球の歴史を感じさせる、レトロな曲。
しかし、今日もこの曲は必ず試合前にスタジアムにいる全員によって歌われます。
日本人大リーガーの進出以来日本でよくも知られるようになりました。



この子供たちの中から、レッドソックスのスターが生まれる(かもしれない)ころもきっと、
この歌は歌い続けられているのです。

このキャンプ、息子の「普通のキャンプ」と違って、おそらくかなり遠くから参加している家庭も
あるのでしょう、ものすごい人数の子供たちが気合一杯で集まってきていました。
どこまで「英才教育」をしてくれるのかは知りませんが、
将来のチチロー(イチローの父)を夢見る方は、息子さんを参加させてみてはどうでしょうか。

何、英語が分からない?
あなたがもしまったく分からなくても、このキャンプなら息子さんはきっと全く大丈夫ですよ。
野球の世界に国境はありませんから。
(と美しくまとめてみたけど、責任は持ちません)