◎龍・中華帝王のシンボルが怒ったのか
台風5号くずれの4日連続の大雨で北京市西郊外を中心に大きな水害になっているらしい。twitterには隠れて投稿したらしい動画が何本か上がっているが、先年の鄭州の数キロの地下自動車道の水没では何百台かの自動車がオシャカになったらしいが、今回の北京では片側数車線の幹線道路の車が何十台も次々と泥の奔流に飲み込まれていくすさまじい様子の動画もある。
北京市は、今や世界に冠たる2千万都市だが、意外や水の不足している町である。
降雨量に基づく一人当たりの年間水資源賦存量は、世界平均レベルの30分の1に過ぎない。国際基準では,一人当たり水資源量が1700㎥より少ない場合は非常に不足と判断される由だが、北京は、1949年の1,871㎥から2007年の243㎥に急速に減少した。(出典:中国・北京の水問題/松浦茂樹・趙揚/水利科学No.3092009-https://www.jstage.jst.go.jp/article/suirikagaku/53/4/53_43/_pdf)
欧州では日本に比べ水が貴重な印象を受けるものだが、北京ではそれに輪をかけて水が恒常的に不足しているのだろう。
北京の今の都市の外形は元代に作られたものだが、当時から北京中心地の西を流れる永定河の治水は課題だった。今般の洪水も永定河流域が中心の模様。
北京中心部は永定河扇状地の扇端部分に発達しており、中心部の地形は西北が高く東南が低い。これは、京都と東西が逆。(永定河の流域面積47,000平方kmは、利根川の約3倍)
商・周の時代、北京は薊と呼ばれ、その中心地は、今の盧溝橋のそばにあった。盧溝橋は、永定河にかかる橋であって、交通の要衝。そこで盧溝橋事件があったのも軍事的にも重要だったからなのだろう。
北京には官庁ダムと密雲ダムという巨大ダムがあるが、水質汚染で官庁ダムは飲料には使えないという。
何十年か前、北京では水洗トイレに紙を流せなかったが今もそうなのだろうか。
洪水への対応能力は、春日部などの地下神殿に見るように下水道施設のキャパによる。
北京は、上水道のキャパが小さいからそれに相応して、下水道のキャパも小さく作られているのだろうか。ならば洪水対応は厳しいのではないか。
最近石川県、九州北部、秋田県と水害があったが、復旧に必要なのはまず水。北京の水害も復旧にはまず水が必要となるが、それをどう捻出するのだろう。
今般の北京水害は、ほとんど報道されていないが、実は北京のウィークポイントを突いていたのではないか。もともと水の足りない都市北京が、却ってその水によって半世紀では最大の洪水に見舞われるのは、水の神様である“龍:中華帝王のシンボル”が怒ったのだろうか。そういうのはよくよくの人為の結果である。