国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

植民地化する中近東・北アフリカ産油地帯

2011年02月27日 | 中近東地域
●NATO、リビア情勢巡り緊急会合開催へ 2011年2月25日 読売新聞

 【ブリュッセル=工藤武人】北大西洋条約機構(NATO、加盟28か国)は25日、リビア情勢に関する緊急の大使級協議をブリュッセルのNATO本部で開くと発表した。 米国は、リビアの最高指導者カダフィ氏の治安部隊による一般人を含む反体制派への攻撃をやめさせるため、飛行禁止区域の設定を検討しており、大使級協議で主要テーマとなる見通しだ。

 NATOのラスムセン事務総長は25日、「リビアで起きていることは、我々全てにとって重大な懸念だ」と述べた。大使級協議に先立ち、欧州連合(EU)27加盟国の国防相とも協議することも明らかにした。

 事務総長はNATOによる軍事介入の可能性について「国際連合の要請が不可欠」との認識で慎重姿勢を示しているが、21か国が重複加盟するEUは、情勢悪化に備え「人道目的」の軍事介入の可能性を検討し始めている。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110225-OYT1T00860.htm?from=top





●<リビア>人道目的での軍事介入 EUが検討 毎日新聞 2011年2月24日

 【ブリュッセル福島良典】リビア情勢が悪化し、難民救援などの必要性が生じた場合に備え、欧州連合(EU、加盟27カ国)が人道目的での軍事介入の可能性について内部で検討を開始したことが明らかになった。EU高官が24日、記者団に語った。

 EU高官によると、想定されている「最悪のシナリオ」は混乱によりリビア国内の空港・港湾が完全に機能不全に陥り、リビア国民や在留外国人が隣国のチュニジア、エジプトへの陸路脱出を強いられる場合だという。

 一方、EUは23日、自然災害時のための危機管理制度を運用して、リビアに残留する加盟国民の出国支援に乗り出した。EUは日米、オーストラリア、カナダ、国連とも連携を取っているという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110224-00000092-mai-int




●リビア:「人道に対する罪」適用 国連安保理が制裁協議  毎日新聞 2011年2月26日

 【ニューヨーク山科武司】リビアへの制裁決議を目指す国連安全保障理事会は25日も同国の情勢を協議した。毎日新聞が入手した決議案によると、最高指導者カダフィ大佐を名指しせずに、リビア政府による国民への攻撃を「人道に対する罪」に当たるとして国際刑事裁判所に付託することや、同国指導者らの資産凍結と国外渡航禁止、同国への武器輸出の禁止などが盛り込まれた。ただ、決議案では同国上空での飛行禁止区域設定は見送られた。安保理は26日午前に協議を再開する。

 潘基文(バンキムン)国連事務総長は25日、「1000人以上が殺害され、トリポリ周辺の3都市で武力衝突が起きている」と現状を報告。「カダフィ大佐は家ごとに捜索して反対派を逮捕している。病院では負傷者も殺害しているという。チュニジアにはリビア人2万2000人が、エジプトには1万5000人が流出している」と述べた。
http://mainichi.jp/select/world/news/20110226dde035030026000c.html




●バルチスタン、クルド、シーア派の聖地ナジャフ:米国の描く新中東地図とイラン - 国際情勢の分析と予測

http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/b7bdffa6e87d9de2508be8741c3b3c1a




【私のコメント】
NATO、EU、国連安保理などがリビア情勢を人道的見地から取り上げ、制裁や軍事介入を検討し始めた。これは、非人道的独裁政権として米国が非難し軍事介入を行ったイラクと同じ状況である。今後、サウジアラビア東部の少数派シーア派が住む油田地帯でも同様の紛争が発生し、西側諸国による制裁や軍事介入が起きることが予想される。イランの大油田地帯であるフゼスタン州も少数民族であるシーア派アラブ人が主要民族であり、将来イラクからサウジ東部にかけてシーア派アラブ人国家が誕生した場合にはフゼスタン州もそれに参加する可能性がありうる。その結果は、中近東や北アフリカでの広範囲な国境線の引き直しである。

恐らく欧米支配階層は、人道的見地という建前のもとに中近東や北アフリカの産油地帯を軍事的に支配し勢力下に収めることを狙っているのだと思われる。これは、事実上の半植民地化であり、19世紀に欧米各国が途上国を植民地化した状態への逆戻りを意味するのではないかと思われる。欧州の植民地を独立させた20世紀の米国の世界覇権が終焉し始めて、世界は19世紀へと回帰するのではないかと私は想像している。





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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-07-16 00:28:16
http://ameblo.jp/t-kazuo/entry-11894403655.html

2014-07-15 08:49:51 スンニ派過激派が「イスラム国」樹立 狙いと今後の影響は?

6月末にISIS(イラクとシリアのイスラム国家)という組織が、「イスラム国家(IS)」の樹立を宣言し、その指導者のアブ―バクル・アルバグダーディを「カリフ」に選びました。


支配地域はシリア西部からイラク北西部

そもそもイラクで活動していたISISという組織は、その活動範囲をシリアにも広げ力をつけてきました。当初はアルカーイダの系統とされていました。だが、処刑場面をネットで公開するなどの手法を批判してアルカーイダは、ISISを破門した形になっています。

そのISISが6月にイラク北部で攻勢に出ました。シーア派のマリキ首相の政権に不満なスンニー派部族やフセイン時代の支配政党であった旧バース党の残党などの協力を得て、イラク第二の都市モスルを含む北西部の大半を電撃的に制圧しました。この勝利を受けての前述のイスラム国の樹立でありカリフの選出でした。

その支配地域はシリアの西部からイラクの北西部に広がっています。重要な点はシリアでは油田地帯を支配下においており、それなりの安定した収入源を確保している点です。また軍事的な成功によって人気が上昇し、アラビア半島の産油国の豊かな個人からの寄付も増えています。さらに、このカリフの下で戦おうという急進的な若者が世界から馳せ参じています。特に欧米のイスラム教徒が多く参加しています。この「国家」は、SNSを利用した巧みな宣伝を展開しています。


イラクとシリアの統合狙う「イスラム国」

カリフというのはイスラムの創始者である預言者ムハンマドの後継者という意味です。ということは、選出されたカリフは、全てのイスラム教徒の指導者ということになります。

シーア派の大国イランや、イラクのシーア派のマリキ政権、またアラウィー派(シーア派の分派とされる)のシリアのアサド政権には、スンニー派のイスラム国家の樹立宣言は何の意味も持ちません。サウジアラビアなどのスンニー派諸国にとっては影響があります。それは国民が、このイスラム国家に魅力を感じるとすれば、過激化し自国の指導者ではなくカリフの方に忠誠を誓うようになるからです。特に影響を受けるのが、アルカーイダなどの過激派組織です。過激派組織の間では、世界のイスラム教徒の支援を求めての競争があります。このイスラム国は、最近の軍事的成功に裏打ちされて人気を高めています。

イスラム国はシリアとイラクの統合を狙っています。しかし、周辺諸国の激しい反発をうけています。しかも、協力関係にあった旧バース党員やスンニー派部族との対立も表面化しつつあります。イスラム国の将来は不透明です。
返信する
Unknown (Unknown)
2014-07-14 23:18:18
http://ameblo.jp/t-kazuo/entry-11887097157.html


2014-07-02 08:30:00 イラク、イスラエル、クルド、ロシア

イラク政府がロシアから中古の戦闘機を購入。ロシアの思惑は油田権益の維持なのか?

ロシアの意図は、短期的には石油ではないだろう。自らの中東における主要なプレイヤーとしての役割をアッピールすることだろう。またマリキ政権を強化することは、イスラム過激派のイスラム国を弱めることとなる。このイスラム国がロシアの支援を受けるアサド政権を脅かしている。この面からもロシアの政策には合理性があるだろう。

ところで、マリキ政権にロシア製の航空機を飛ばせるのだろうか。航空機を整備し飛ばすには、それなりの訓練を受けた人材がいる。これはシリアのアサド政権が提供するのだろうか。またスンニー派の地域の爆撃を始めれば、多くの民間人を巻き込む、さらにマリキ政権への憎しみを深めることになるだろう。

イスラエルがクルド人による北部地域の独立支持を表明している。このイスラエルの表明がイラク情勢に与える影響について・・・

イスラエルとイラクのクルド人は長い間にわたり同盟関係を維持してきた。1960年代からイスラエルはクルド人の独立運動を支持してきた。イラクの分裂と弱体化はイスラエルの安全保障を高めるとの発想があるからだ。今回のイスラエルのクルド独立支持は、そうした長い歴史的な文脈から理解されるべきだ。支持はありがたいが、クルド人にとっては、しかしながら、イスラエルの大声での応援は迷惑だろう。なにせ、まだ形式的にはアラブの国イラクの一部なのだから。またクルド人口を抱えるトルコやイランの動向も気にせねばならない。クルド人はイスラエルの静かな支援を期待していよう。

実質的な面でイスラエルがクルド人のためにできることの一つはアメリカを動かすことである。アメリカ議会にはイスラエルの影響力が強い。イラクが分裂しているという事実をアメリカ政府が承認するように、議会を通じて働きかけることである。オバマ政権の言動から判断すると、アメリカはバグダッドの政権にイラク全土の支配を回復させることが可能だと未だに信じているようだ。しかしイラクをクルド、スンニー、シーアの三つの自治地域からなる連邦国家に再編成するほうが現実的な対応であろう。また、そうすればクルド人の自治は、ますます強固になるだろう。

2014年7月1日(火)記
返信する
Unknown (Unknown)
2014-07-14 23:14:43
http://ameblo.jp/t-kazuo/entry-11887021551.html

2014-07-01 09:22:52 「イスラム国」の誕生

ISISが宣言した「イスラム国」樹立宣言をどうみるか?

日本時間の6月30日にISIS(イラクとシャームのイスラム国家)が「イスラム国」の樹立を宣言し、その指導者のアブ―バクル・バグダーディーにカリフとして言及した。カリフとは、そもそもは後継者という意味である。つまりイスラムの預言者ムハンマドの後継者を、ということは全イスラム教徒の指導者を意味している。その「カリフ」との名称にふさわしいほどの数のイスラム教徒を指導した最後のカリフは、オスマン帝国のスルタンであった。そのオスマン帝国は1922年に滅亡している。実質上の最後のカリフ制度の消滅であった。



それ以来、カリフを名乗って広く人々の忠誠の対象となった人物は、いない。



今回「樹立」されたイスラム国は、イラクとシリアのかなりの部分を支配下に置いている。オスマン帝国のアラブ地域の領土が第一次大戦後にイギリスとフランスに分割されて以来、シリアとイラクの両国にまたがる広い地域を支配した国家は存在しない。新イスラム国の樹立宣言の歴史的意義であろうか。マスメディア的には、この組織をISISと呼ぶか、あるいはISILとして言及するかで混乱があった。これでイスラム世界の統一は難しくとも、用語はイスラム国で統一されるのだろうか。


カリフの復活をわざわざ宣言した意味は何だろうか?



最大の狙いは他のイスラム急進派との差別化であろう。この宣言によって、イスラム法シャリーアに基づく国家の樹立を目指す運動から、実際にイスラム国家を統治しているとの実態となった、との宣言である。しかも支配地域を拡大を目指す意図を明確にした。これによって、いっそう多くの戦闘員を世界各地で募集しやすくし、しかも募金活動も容易になるだろう、との計算であろう。お金と人の流れを他の急進派ではなく自らに集中させることを狙っての動きであろう。



ISISは、6月に入ってからの電撃的な勝利でイラクの広い部分を支配地域に加えた。この勝利が、ISISの人気をアラビア半島の急進的なスンニー派の間で沸騰(ふっとう)させた。イスラムの名を語る急進派は、世界各地に存在する。しかし、ISISほどに広い領域を統治する勢力は、存在しない。アイマン・ザワヒリのアルカーイダは、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯に根拠地を構えているが、広い地域を統治しているわけではない。ナイジェリアのボコ・ハラムも、それなりの支配地域は持っているが、しかし国家を運営していると言えるほどの安定した統治ではない。ISISは、シリアにおいては、かなりの長期にわたって広い地域を支配し統治してきた。そして6月に入ってイラクに支配地域を拡大した。それなりの実績を踏まえてのイスラム国宣言と見ることができよう。


ほかのイスラム武装組織はどう反応するとみているか。特にアルカイダについて?



そもそもアルカーイダは、あまりに過激なISISの戦術に批判的であった。またシリアにおいては、すでに存在するヌスラ戦線というアルカーイダ系組織のみに活動させる意図であった。だがISISは、アルカーイダ本部の意向を無視してイラクとシリアの両方で活動した。その結果、アルカーイダからは破門されていた。そして今回のカリフ宣言である。アルカーイダは強く反発するだろう。すでにシリアではヌスラ戦線と新イスラム国との間の戦闘の激化が伝えられている。



だがアルカーイダは、2000年代の一連の欧米でのテロ以来、大きな「戦果」を挙げていない。それに対してISISは、シリアとイラクで「勝利」を積み重ねてきた。そのために、この組織に魅力を感じる人々も多い。世界のイスラム過激派の一部が、新カリフ国に忠誠を誓う可能性もあるだろう。ある意味では、新イスラム国はアルカーイダの強力なライバルである。


ほかのイスラム教国家はどう反応するのか?



ISISに資金を流したのは、アラビア半島の豊かな産油国の裕福な個人だとされている。こうした資金の流れを取り締まってこなかったサウジアラビア政府などは、新イスラム国の誕生に怒っているだろう。過激派を管理しているつもりでいたが、気が付いてみると、サウジ王家の目から見ればコントロールの効かないフランケンシュタインを育てていたわけだ。



ISISへの志願者の多くはトルコ経由でシリアに入った。この人の流れを黙認してきたトルコ政府も、困惑している。シリアのアサド政権を倒すために、ISISを利用したのだが、アサド政権は倒れず、ISISがイラクに侵攻してトルコ市民を人質にしてしまった。スンニー派諸国はISISを担いでいるつもりでいたが、実際はISISに担がれていた。そうした思いだろうか。


アブ―バクル・バグダ―ディーについて



歴史的にはスンニー派は、預言者ムハンマドの最初の後継者としてアブ―バクルを支持した。そうした伝統を踏まえると、この人物の名前アブ―バクルは、カリフらしいとも解釈が可能だろうか。名前の方のバグダーディーも都合が良い。バグダードに首都を置いてアッバース朝は、英明なカリフの支配下で繁栄を極めたからである。バグダッドのカリフの多くは文芸の保護者であった。また女性を愛し少年を好み葡萄酒の味を知っていた。このバグダーディーには、そうしたアラビアン・ナイトの香りは期待できそうもない。そもそもバグダッドを攻略できかも明らかではない。

2014年7月1日(火)記
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Unknown (Unknown)
2014-07-14 23:11:12
http://blog.livedoor.jp/nevada_report-investment/archives/4704383.html


2014年07月04日




サウジアラビア軍3万人がイラクとの国境に

サウジアラビアとイラクが一触即発状態になりつつあり、イラクは事実上サウジとの国境警備を放棄したと言われており、イラクからサウジに武装勢力が入り放題になっていると言われています。これを防ぐためにサウジアラビア軍3万人が配備されたものです。

中東戦争が勃発するリスクが高まって来ています。
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Unknown (三井住友VISA デビュープラスカード )
2012-08-18 09:06:13
ブログ更新楽しみにお待ちしております。
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