国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

日銀の金利引き上げについて考える

2007年01月15日 | 経済
●日銀利上げ「合理的な理由ない」 自民幹事長が強く牽制 朝日新聞 2007年01月14日22時45分

 自民党の中川秀直幹事長は14日、愛知県豊川市で講演し、日本銀行が利上げに踏み切る方向となったことについて、「政府の景気判断に変更はない。12月に(利上げの)判断を見送った日銀が、今月政策変更する合理的な理由は見あたらない」と述べ、日銀を強く牽制(けんせい)した。さらに中川氏は、日銀が利上げに踏み切った場合、政府が日銀の議決の先延ばしを求めることができる「議決延期請求権」を行使すべきだとの考えも示した。

 安倍政権が掲げる経済の「成長重視戦略」の旗振り役を自任する中川氏としては、政府がデフレ脱却に取り組む中での利上げは景気の拡大を阻害する要因になりかねないと懸念。政府方針に足並みをそろえるよう日銀に異例の「最後通告」を突きつけた形だ。利上げについては大田経済財政相も14日のテレビ朝日の番組で「消費は弱くなっている。これが事実。この認識のうえで、日銀が責任をもって判断すると期待する」と述べており、17、18両日の金融政策決定会合に向け、日銀の最終判断が焦点になる。

 中川氏は、講演で「政府・与党は今年3月までにデフレ脱却させると公約した。ここは政府・日銀が共同責任で頑張らないといけない」と指摘。さらに、日銀法が定める議決延期請求権に触れ、「日銀が抵抗するなら、政府は権利を行使する義務がある」と強調した。速水優前総裁時代の00年8月のゼロ金利政策解除の際、利上げを決めた日銀に対する議決延期請求を日銀が拒否した経緯にも言及し、「そういう道を繰り返すならば、重大な法制度の欠陥ととらえざるを得ない」と述べ、日銀法を改正する可能性も示唆した。

 日銀の金融政策は、9人の政策委員の多数決で決まる。政府は議決延期請求権を行使することで議決先延ばしを求めることができるが、延期するかどうかの最終決定権は政策委員が持つ。
http://www.asahi.com/politics/update/0114/009.html?2007






【私のコメント】
1月14日のブログ「株式日記と経済展望」では、「日銀が金利を引き上げれば、バブル崩壊が起こる」と題して、1月18日にも予定されている日銀の短期金利引き上げが地方自治体の財政破産を引き起こすと予測している。しかし、私はこの主張にはやや疑問である。日本の国家債務(政府+地方自治体)は確かに膨大だが、日本政府は膨大な金融資産も保有しており、純債務で見ると日本の財政状態はそれほど悪くない。従って、仮に一部の地方自治体で財政破綻が起きるとすれば、それは日本国内での税金の分配が不適切であることを示すに過ぎない。無論、不適切に税金を配分することで一部自治体を破産させて金融市場に混乱を作り出すというシナリオはあり得ると思われるが、それは一時的な混乱に留まるであろう。

また、世界的な過剰流動性のために資産インフレが発生しており、それに対応するために欧米では金利引き上げが行われてきている。日本が短期金利を0.25%から0.5%に引き揚げても、ドルやユーロとの金利格差は大きな変化はなく、行き過ぎた最近の円安が多少解消される程度だろう。

それよりも問題なのは、現在の米国や中国、欧州辺境諸国などの異常な不動産バブル、あるいは世界的な株価上昇であろう。この資産バブルは米国のイラク戦争に伴う膨大な支出、米国の中間選挙前の株価下支えによるものであると考えられ、いつ破裂してもおかしくない状態になっている。日本の金利引き上げや中東・朝鮮半島情勢の変化がこの資産バブル破裂の引き金になる可能性は十分考えられる。そして、このバブル崩壊はドルの暴落を引き起こす可能性がある。

最近、日本を含め先進主要国は頻繁に首脳会議を開いている。今回の東アジアサミットを含め、東アジアでも頻繁に地域内の首脳会議が行われ、ドルに代わる決済通貨の準備も進められている。このような動きを見ると、米国の資産バブルを一挙に破裂させることで米国の敗北を演出し、それによって米軍のユーラシアからの撤退と世界の多極化、更に国際金融資本の世界支配の終焉を実現するというシナリオが組まれている様にも思われる。1980年代にはソ連が故意に自己崩壊を演出して国際金融資本の包囲網から脱出している。今度はアメリカの番なのだろうか?

もう一つ考えられるシナリオは、日銀の金利引き上げを巡る政府と日銀の対立を捻出することで日銀に対する世論の批判を扇動し、それによって日銀法の改正を行って中央銀行の政府からの独立というシステムから政府が中央銀行を保有するシステムに移行するというものである。日本の行動に引き続いて米国や欧州諸国も中央銀行の国有化に踏みきるならば、ドル支配による国際金融資本の世界支配体制は崩壊する。
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-01-19 17:09:34
米国防総省:政策組織改編 アジア部門独立で「最重視」 
 【ワシントン及川正也】米国防総省は、新たにアジア・太平洋安全保障問題担当の国防次官補を創設するなど政策立案・遂行部門の一連の組織改編を完了し、3月から新体制で本格始動する見通しとなった。新設のアジア・太平洋担当次官補には在日米軍再編を手掛けたリチャード・ローレス国防副次官(アジア・太平洋担当)の昇格が内定しており、上院の承認を経て就任する。

 毎日新聞が入手した同省作成の最新の任務分担表によると、アジア・太平洋担当次官補は、従来の国際安全保障問題担当次官補の組織から分離・独立して新
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Unknown (Unknown)
2007-01-22 02:50:19
丞相   橘みゆき(経済社会改革PJリーダー)
ttp://www.teamrenzan.com/tachibana/

現在、世界で一番アメリカ国債を保有しているのは
中国の北京政府です。もし、日銀が金利をあげれば
多少の時間を日本人は得るでしょう。

しかし、株式日記の作者を初めマネーに魂を
売った銀行員OBがそれを阻止しています。

全ての鍵を握るのは、橘氏でしょう。
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