米軍は原発から50マイル、つまり80km以内は立入禁止にしたという。日本政府の20-30kmよりはるかに厳しい処置である。ただ、原発から30-60km離れた地域で年間にして100-175ミリシーベルトという安全基準の100ミリシーベルトを越える数値が報告されていることを考えると、この数字は妥当であると思われる。ただ、現実にこれを実行すると、会津以外の福島県の大部分は無人地帯になる。200万人の人間を強制移動させることになるのだ。これは事実上福島県に滅亡を宣告するに等しく、それ故に日本政府は避難勧告地域を拡大していないのだと思われる。米軍のガイドラインでは、50ミリレム(=0.5ミリシーベルト=自然放射線一年分の五分の一)以上の被曝は要観察らしい。この基準は厳しすぎるのではないかと思う。0.5ミリシーベルトから5ミリシーベルトの間では4000人に一人の割合で癌が増加し、5ミリシーベルトでは400人に一人の割合で癌が増えるという。実際には世界の専門家の間では100ミリシーベルト以下の低線量の被曝では癌の有意な増加や遺伝的影響は起きないとされているので、これも厳しすぎると思う。ラドン温泉で被爆して喜んでいる人がいるように、少量の放射線被曝はかえって人体に有益であるという(ホルミシス)仮説も存在するぐらいであり、100ミリシーベルト以下の被曝は恐れる必要はないと言うのが私の結論である。使用済み燃料プールの冷却水喪失と加熱が問題になっている。加熱が進めば使用済み燃料が破損・溶解して飛び散りやすくなる。場合によっては燃料が沸点を超えて蒸発することもあり得るだろう。これは重大な核汚染を引き起こす。再臨界についても触れられているが、私は可能性は高くないのではないかと考えている。冷却水はウラン分裂時に放出される高速中性子を減速して他のウラン原子に捕捉させやすくさせ、これが連鎖的な核分裂反応=臨界に繋がるというメカニズムを考えると、超高温(酸化ウランの融点は2800度)のウランの周囲に液体の冷却水が存在することは考えられず、それ故に再臨界には至りにくいと思われるからだ。ただし、万一、大量の核物質が一カ所に集積して再臨界になった時には核物質の温度は更に上昇し事態が悪化するので、硼素をばらまいておくことが有益であることには同意する。関東地方の放射線観測値は危険基準を大きく下回っており、今のところ脱出する必要性はないと考えられる。 . . . 本文を読む
20km地点の放射能レベルについては昨日の記事「福島原発周辺の放射線の現状:2011年3月16日」で触れたが、もう少し詳細なデータが出てきた。毎時195-330マイクロシーベルトという値は一年間継続するならば骨髄死の域値を超える水準である。実際には恐らく骨髄死は起きないがリンパ球減少による免疫不全や発癌の増加などが起きると予想される。
一方、30km地点から60km地点の福島県庁付近までは毎時13-20マイクロシーベルト程度であり、一年間この値が継続すると100-175ミリシーベルト程度になる。100ミリシーベルト以上になると発癌や遺伝的影響を含めた影響が出てくるとされているので、要注意の線量であるが、半年程度までの滞在なら問題ないレベルである。20km圏と30km圏で大きな線量の格差があるが、これは放射性物質のばらまかれ方が均等でなかった為と思われる。「20-30キロ圏内でも、希望者は栃木、茨城への避難を支援」との報道は恐らくパニックを回避するために最初は希望者のみを対象にしたのだと思われるが、20km圏の高い数値から考えて、最終的には30km圏全員を少なくとも一時的に全員退避させるべきであると考える。
また、その他の都道府県の放射線量を見ると茨城県が突出して高い。茨城県内のデータを見るとかなりばらつきが大きく、ひたちなか市堀口が最高値となっている。数値は毎時1マイクロシーベルトで、一年間で9ミリシーベルトに相当する。自然放射線の毎年2.4ミリシーベルトの4倍弱の水準だが、健康に被害が及ぶ100ミリシーベルトや、放射線取扱者の安全基準である5年間で100ミリシーベルトの基準は下回っており、安全範囲内である。この茨城県の高い数値は、3月15日頃の北東風に乗って放射性物質が流れてきたためと考えられる。東京の数値はこの約三分の一であり更に安全である。今のところ関東地方からは脱出する必要性はないと考えられる。ただし、万一高濃度の放射性物質が流れてきた時のことを考えるならば、箱根以西に脱出するか、あるいは家で空調を切って待機するかの準備をしたほうがよいと思われる。
今後2-3日は原発周辺では北西の風が吹き、放射性物質はほとんどが太平洋上に拡散することになるので小康状態である。この間に原子炉や核燃料の冷却と再臨界突入防止が進むことを祈りたい。
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