■「かつてないほど困難な状況」のもと、ワイヤレスジャパン2009が開幕
ワイヤレスジャパン2009が開幕した。冒頭挨拶をしたリックテレコム取締役 編集長 土谷宣弘氏は、金融危機などの影響で、今回の開催は「かつてないほど(開催が)困難な状況に直面した」と吐露。WiMAXやLTE、Androidなど、今年の注目の技術などを紹介した。また主賓挨拶に登壇した総務省 総合通信基盤局長の桜井 俊氏は、電波新産業創出に対する総務省の取り組みについて語った。
【FNN・動画】■「ワイヤレスジャパン2009」 最先端のワイヤレス・モバイル技術を取材しました。
NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏による基調講演「ドコモの変革の取り組みと新たな成長に向けたチャレンジ」が開催された。動画サービスの一層の充実を図りつつ、そのトラフィックを支えるためにフェムトセルやLTEなどの各種技術を積極的に導入する方向性を示した。
ドコモブースでは、次世代のGUIを体験できる展示が行われていた。「触力覚メディア」と「直感検索・ナビ」の2つだ。前者は、遠隔操作のフィードバック要素に「触覚」という圧力、反力、手触りのような感覚を追加したものであり、後者は、携帯電話をかざした方向の店舗情報を行ったり、その方向にいる友人を検索したりするというものだ。
NTTドコモブースで、今秋にも提供する予定の「フェムトセル基地局装置」を公開した。宅内を模した展示コーナーを設け、プレゼンス機能などともに利用シーンが紹介された。
KDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏による基調講演が行われた。「KDDIの描くICTの役割」と題し、携帯電話を取り巻く市場状況、auが標榜する「アンビエント社会」などについて解説した。
KDDIブースでは、参考出品として、1Gbpsの高速赤外線通信機能「Giga-IR」が展示された。
■microSDサイズの無線LANカード USB 2.0の赤外線ワイヤレス化――KDDIの新技術
KDDIは、無線LANを内蔵しない端末でも無線LAN利用を可能にする“microSD無線LANカード”の展示や、USB 2.0の赤外線ワイヤレス化のデモンストレーションを行っている。
同社ブースでは、主力製品となる次世代通信規格「LTE」「モバイルWiMAX」に対応したソリューションやオールIPブロードバンドソリューションに加え、イー・モバイルや海外向けに提供しているハンドセットやデータ通信端末、モジュールなどが展示されている。
京セラブースは、auやウィルコムに提供している国内向けのモデルや、各事業者に提供中の通信設備を紹介するものとなった。
UQコミュニケーションズ代表取締役社長の田中孝司氏による講演が行われた。「固定系のインターネットではアプリケーションやデータがクラウド側に存在するようになってきており、これがそのままモバイルにも適用される時代が来ている」として、こうした時代には何よりもスピードが必要であり、それを実現できる技術がモバイルWiMAXだと強調した。
国内で初のモバイルWiMAX方式による高速データ通信サービスを展開しているUQコミュニケーションズのブースでは、自社ブランドのサービス「UQ WiMAX」向けの端末だけではなく、メーカーブランドの端末も数多く展示されている。
■AndroidとWinCEを同時起動、ヴイエムウェアがデモ
ヴイエムウェアが携帯端末の仮想化市場に乗り出す。「ワイヤレスジャパン2009」でモバイル向けの仮想化ソリューション「VMware MVP」(Mobile Virtualization Platform)を展示。モバイル向けOSのAndroidとWindows CEが同一端末上で起動できる様子をデモンストレーションしている。
■イー・モバイル講演、DC-HSDPAやLTEも「早く、安く提供」
基調講演では、イー・モバイルのエリック・ガン代表取締役社長兼COOが、事業戦略について話した。ガン氏は、日本の通信事業の流れについて触れ、固定一般電話の普及、長距離電話(LCR)の普及、携帯電話の普及、固定ブロードバンドの普及を順番に挙げ、「これからは、モバイルブロードバンド市場が拡大する」とした。
ウィルコム代表取締役社長の喜久川政樹氏は、「ウィルコムが目指す、もうひとつの未来」と題し、エリア限定サービス中の「WILLCOM CORE XGP」について、高速データ通信サービスを提供するにあたりどのような点で優位と言えるのか、技術的な根拠を説明した。
基調講演では、端末メーカーとして唯一シャープから、商品事業を統括する代表取締役副社長執行役員の松本雅史氏が登壇した。松本氏は「新しいコミュニケーションを創出するシャープの移動体通信ビジネス」と題し、世界的に携帯電話端末の売上が縮小する中での同社の成長戦略を説明した。
ウィトラコメント: どの程度うまくいっているのか分かりませんが、中国でアクオスケータイで存在感を示せれば成功につながる可能性があると思います。
ソフトバンクモバイル 取締役副社長の松本徹三氏による基調講演が行われた。「モバイル通信情報サービスの将来像とソフトバンクの戦略」をテーマに、携帯電話事業の重要性、iPhone登場以降変わりつつある携帯端末事情などについて語った。
アナログテレビ放送のデジタル移行にあわせ、総務省では周波数再編を行う方針をかねてより示している。その再編によって電波の使い方が整理され、これまでなかった新基軸のサービスにも周波数を割り当てることが決まっている。その新サービスの1つが「携帯向けマルチメディア放送」だ。
ここ数日、情報通信白書の研究開発投資の国際比較を紹介してきましたが、それによると
①日本のICT企業の研究開発費比率は欧米企業より低い
②政府の研究開発費比率(民間と比較して)は欧米より低い
③日本の研究開発費のGDP比率は低くない
ということが示されています。一見、①、②と③は矛盾するようですが、なぜそうなのかを考えてみます。
一つの理由は日本のICT企業以外の企業の研究開発費が高い、ということです。素材産業、製薬業などではこれはありそうな話に思えます。
もう一つの理由は研究開発の必要性が高いのが第2次産業なのだが、日本は諸外国と比べて第2次産業の比率が高く、研究開発を必要としない産業のGDPへの寄与が低いので、個別企業の研究開発投資は低くてもGDP比では低く見えないという点です。これもありそうに思います。
上記いずれの理由にしても、日本のICT産業が研究開発投資で遅れ気味なのは間違いないので、「GDP比で日本の研究開発投資は少なくない」といって結論付けるのはおかしいと思います。白書はこういう点での踏み込みが物足らなく感じます。
もう一点、政府の研究開発投資は生かされていない、という感じがします。ヨーロッパなどではFP7とかいって民間の長期的研究開発投資に多額の補助を出しているのに対して、日本ではNICTのような政府系研究機関に研究開発費が流れている。しかし、政府系研究機関は自分たちの成果を実用化に結び付ける手段を持たず、かつ新規性を求められるので大学のような役に立たない研究に走る傾向が高いと私は感じています。
この理由の一つは民間が研究開発に対して政府からの援助を受けたがらない、という点にあります。なぜ援助を受けたがらないかというと、「政府のお金で研究したものの特許などの成果はすべて国民に公開すべき」、というからです。
ヨーロッパのFP7などは必ずしもこうなっていません。政府は研究開発費の使い方を、研究成果の運用方法も含めてもっと国力が強くなるように検討すべきだと思います。