私は、最近、「世界史像の組み換え」と題するコラムを発表しました。(「晴釣雨読」第18号、
2012年1月、または、末尾のブログ参照)
その中で、これまでの世界史が、一国史を束ねただけであり、かつ、ヨーロッパ偏重であったことに異議を提起しました。これからの世界史は、一つの歴史事象を多面的に見る交渉史であり、比較史であるべきで、それによって初めて、近代の植民史や官僚制が検討できるようになる、という趣旨でした。
同じことを説いている本があるよ、と知人から教えられました。羽田正『新しい世界史へ』(2011年11月、岩波新書)がそれです。羽田氏は東京大学東洋文化研究所の所長ですが、長い間、イスラームの研究をしておられるとのことです。
それで、ヨーロッパ中心史観に強い違和感を覚えたのは想像に難くありません。私たちは、等しく、2001年の「9・11」以降、アメリカを中心としたキリスト教文明とイスラーム文明との「衝突」を目の当たりにしたのですから。
本書の第3章「新しい世界史への道」が羽田氏の主張の核心です。節の名を並べれば;
1 新しい世界史の魅力
2 ヨーロッパ中心史観を超える
3 他の中心史観も超える
4 中心と周縁
5 関係性と相関性の発見
また、羽田氏は、第4章でさらに踏み込んだ「新しい世界史の構想」を提案しています。節の名を一部並べれば;
3 世界の見取り図を描く
4 時系列史にこだわらない
5 横につなぐ歴史を意識する
氏は、歴史上のある時点の世界を輪切りにして、各地の歴史事象を集めることを提案しています。これは、歴史事象の連続的継起に過度に意味を持たせるべきではない、という主張と重なり合います。しかし、これはどうでしょう。歴史とは過去の歴史事象の吟味・反省などから未来を切り開く使命を担っているという従来の歴史観を私は捨てることはできません。
最後の「横につなぐ歴史を意識する」には全面的に賛成で、私はそれを「交渉史」と「比較史」で実現したいと提案したのでした。詳しくは、以下のブログを参照願います。 (2012/2)
「世界史像の組み換え」 http://blog.goo.ne.jp/ozekia/d/20111104/
http://blog.goo.ne.jp/ozekia/d/20111106/