アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「民族共生の象徴となる空間」の基本構想

2012-08-07 09:42:48 | インポート
さる、8月1日付の苫小牧民報と室蘭民報に、白老町の「民族共生の象徴となる空間」の基本構想を政府のアイヌ政策関係省庁連絡会議が決めたと報道されていました。

(略)アイヌ文化復興のナショナルセンターを白老町ポロト湖畔を中心とする地域に整備する。
 ナショナルセンターには、博物館や伝統的家屋群、工房などの施設を備え、異なる民族が尊重し共生する社会のシンボルとなるような空間を形成する。展示・調査研究、文化伝承・人材育成、体験交流、情報発信、公園、精神文化尊重の各機能を持たせる施設整備を行う。
 象徴空間の範囲は、ポロト湖畔を中心とする中核区域と周辺の関連区域で構成する。
 中核区域は博物館を核とし、ポロト自然休養林の一部を活用してさまざまな取り組みを展開する。関連区域は豊かな自然に人手を加えずに文化伝承や体験交流活動などの取り組みを実施する区域とした。
 ポロト湖畔には、中央広場、博物館、体験・交流の三つのゾーンを設定した。
 博物館や文化伝承・人材育成、体験交流活動などの具体的な取り組みは、来年夏をめどに一定の結論を出す。整備・管理運営手法の在り方は2013年度中に結論を出すことにした。
 政府は「今後、道や白老町などの関係地方公共団体と連携しながら、基本構想に基づき、象徴空間の一層の具体化に取り組む」とのコメントを出した。
(苫小牧民報 8/1 http://www.tomamin.co.jp/2012s/s12080101.html)


記事にある「アイヌ政策関係省庁連絡会議」が発足したことについて過去blog(2011/09/18)にも書きました。
http://pub.ne.jp/ORORON/?entry_id=3897346

内閣官房、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省らで構成し、会合が持たれているようですが、探し方が悪いのか、どこで報告がなされているのか見つかりません。情報がわかるように分かりやすく公開し、「アイヌ政策推進会議」などにリンクを張って欲しいです。そのことが国民の理解につながるはずです。

室蘭民報では、現在のアイヌ民族博物館の「人材や知見を象徴空間の管理運営に最大限活用することも言及された」とありました。

一年ぶりに開催された第4回アイヌ政策推進会議(2012/7/6開催)の配布資料 「『民族共生の象徴となる空間』の更なる具体化に向けて」 の中にイメージ図が載っていますが、この方向性でいくということなのでしょうか。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai4/siryou2_1.pdf

また、注視しているアイヌ人骨の返還や集約に向けた進め方などについては、政府は「検討を進める予定」とのみ記されています(室蘭民報)が、先の「具体化に向けて」の「今後の検討課題等」にも同じことが書かれています。
(室蘭民報 8/1 http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2012/08/01/20120801m_08.html)

先のイメージ図には「慰霊ゾーン」は記されていません。「研究」のためのゾーンは「博物館ゾーン」に入るようですが。

政策推進会議の議事概要(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ainusuishin/dai4/gijigaiyou.pdf)で、ある委員が(記録に名前がないので分からない)、アイヌ民族は無年金の方が多いと発言されています。また、「アイヌ長老会議」代表の小川隆吉さんは、以前から年金の要望を出されていますし、他の方の発言からも聞いています。現状を詳しく知り、対応を急ぐべきところでしょう。「『北海道外アイヌの生活実態調査』を踏まえた全国的見地からの施策の展開について(概要)」には年金に関することは書かれていません。



ポロ・ト (先日の台湾原住民族委員会の皆さんとお訪ねした時に撮影)
現在、「ポロトコタンの夜」開催中。詳しくは以下へ
http://www.ainu-museum.or.jp/poroto-night2012.html