~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

萩原麻未リサイタル

2010年08月28日 23時07分20秒 | ピアノ
今年6月、パリ国立高等音楽院修士課程を首席卒業された萩原麻未さんのリサイタルに行ってまいりました。

彼女の演奏は、たしか2005年3月高校を卒業した直後に初めて聴き、その後2回、そして今日、で4回目です。


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<プログラム>
1.モーツァルト:デュポールのメヌエットによる変奏曲
2.べリオ:5つの変奏曲
3・ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲
   ♪休憩♪
4.ショパン:「24の前奏曲」より1~8番
5.シューマン:子どもの情景
6.ドビュッシー:喜びの島

アンコール:第5協奏曲のフィナーレによるトッカータ ヘ長調(サン=サーンス)、ノクターン2番(ショパン)
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非常に勉強&練習の行き届いたすばらしいコンサートだったと思います。
特に前半プログラム(変奏曲3つ)については、大学の卒業試験のテーマにしていたとかで、説得力のある演奏。
後半のシューマンについても卒論が「『子どもの情景』の解釈の違いについて」だったそうで、インスピレーションに満ちていながらも、深い洞察を感じるものでした。

過去3回聴いた演奏会の印象から言うと、彼女の演奏はインスピレーション優位で、弾き方も何かが乗り移ったかのような動き。感銘を受ける一方で、あまりの没入の深さにややもすると聴き手として置いていかれるような感もありました。
ところが、今日について言えば、弾き方は動きはあるものの重心が安定してブレがなく、内容は、これまでのインスピレーションや技術に加えて「分析」が全体を支え、専門に勉強してこられた堂々たる立派な演奏で、心から感嘆いたしました。

2曲目のベリオという作曲家は1925年イタリア生まれで、あらゆる特殊奏法や超絶技巧を駆使した作品で有名な方なのだそうです。
今日の曲「5つの変奏曲」については特殊奏法はありませんでしたが、とても難解な感じがしました。まずは「変奏曲」といいながらテーマがない。「9度の音程と付点のリズム」がもと(テーマ?)だそうで、最初から変奏で始まっていました。
・・・よくもこんな曲を暗譜で・・・(驚)
なんでも譜面を見るかどうかで担当の先生とも話し合われたとか。「譜面をみないと<ウソ>を弾いているのではないか、と思われかねないし・・・」とのトークで笑いを誘っていました。
私、現代曲がとくに好きというわけではないのですが、現代曲をライヴで聴くのは大好きで、次になにがくるのかの期待と衝撃でついつい引きこまれてしまいます。
麻未さんの演奏は「ウソを弾いているのではないか?(笑)」というより、楽譜の景色が目に浮かぶようで、とてもおもしろく聴きました。
終演後、最後の最後まで残っていて楽譜を見せていただいのですが、果たして第1曲目(第1変奏)は2ページ以上にわたって小節線がまったくない・・・。自分で区切って拍をカウントして弾くのだそう。第2変奏以降は小節線はありますが、小節ごとと言っていいほど拍子が変わりまくる。暗譜は大変困難だったそうです。
「でも、この曲以前に弾いたシュトックハウゼンよりは楽でした、シュトックハウゼンは暗譜はしなかったのですが(特殊奏法が多い故)」とのお話でした。


ほかの曲も、時代のスタイル、ディナミークの幅広さ、音色の多様さ、テクニックの確かさ、・・・ぐーーっと高みにいかれたなあという感想を持ちました。

さらにパリのほうで学ばれるようですが、今後ますます楽しみにしております。