~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

お得なひととき

2006年12月14日 23時09分13秒 | ピアノ
街中の楽器店で催された、新製品発売の記念コンサート(ちなみに無料)を聴いてきた。

ピアニストは、今人気のドラマ「のだめカンタービレ」や来年公開の映画「神童」(←については私のHPの<BOOK>欄で紹介している)の吹き替えを担当している清塚信也氏。

氏についてはこれまでもいろいろなコンクールで名前や写真を拝見していたし、現在の人気ぶりからして、おそらく「聴きやすい演奏」をされる方だろうと推測していた。
そして、今日は楽器店内で、しかもツリーの前で、しかも外部の音の入ってくる環境なのだから、たぶんこれまた「耳にやさしい小品」を弾かれるであろうと、ほぼ一方的に決めてかかっていた。

登場した清塚氏、よく見るプロフィール写真より精悍な感じ。
そして一曲目。
モーツァルトのソナタK457 ハ短調
おお、いきなり。本格的プログラム!
そしてまた演奏がかなり濃い・・
激しいとかねっとりしてるというのではなく、メッセージ性が強いというか思索的というか。
演奏そのものは音の処理もペダルも丁寧で考え抜かれていて、さすが数々のコンクールで活躍されている方だと思ったのだが、それ以上にこの演奏者の人柄に非常に興味を覚えた。

1曲終えて、立ち上がってにっこり。
「では次は、ベートーベンの『熱情』を弾きます」
な、なんと・・・いきなりソナタ2曲。しかも相当ヘビーな。
好きです、そういうの、たまりません。
この曲(の3楽章)は、映画『神童』でワオが入試で弾く場面があるのだそうだが、
プロデューサーから「ここは、奇跡的な演奏が出来る場面なので、そういう感じで!」と指導があったそうだ。
ご本人「そういう演奏ができたかどうかわかりませんが、ぜひ公開されたら、見てください」と、ちょっとだけコマーシャル♪
で、熱情全楽章の演奏があった。
私はかなり後ろの席でみていたのでよくわからないのだけど、結構低めにすわって、それほどアクションも大きくなく、でも非常にテンションの高い演奏をされた。
音量もモーツァルトとは全然違うので(会場に合わせてかなりコントロールされていたとは思うのだが)、さすがに多くのピアノがところ狭しと並んだ店内で弾かれると、共鳴やら反響やらがあって、音の響きを楽しむことは難しかった。ぜひホールで聴いてみたいものだ。

2曲のソナタを弾かれたあとで、さぞお疲れと思いきや、にこにことして、
「もう時間もないようですので、ショパンの・・・」
・・・・きたきた、子犬か?ノクターンか?マズルカか?
バラード1番を弾きます」
いや~ほんとに清塚氏、やってくれるのであった。

そして、これも店内をビリビリいわせながらの熱演。
清塚氏は、ショパン関係のコンクールで何回かお名前を拝見したのだが、
これもなかなか濃い系のバラードだった。
ますます、いかなる青年なのか(ちなみに24歳だそう)。

その後のインタビューなどでは、映画で知り合った俳優さんとバイクで落ち合っては、酒も飲まずに戦争について語りあったりされる日常のこと、
昨日は一人で平和公園など散策されたらしいのだが「この地で日常を送っておられる方々はどういうお気持ちで日々こうした場所に接しておられるのか・・・」と思われたこと、などを語っておられた。

ほかには、テレビドラマ撮影現場の過酷な状況の話。
たとえば、ラフマ二ノフの2番の本番風景を撮った時のこと。
いったんは某ホールを貸し切って、プロのオーケストラにも来てもらって、1楽章を撮り、やれやれと思っていたところ、
その後連絡があり「どうしてもあと2分だけ足りない」ということで、
2~3日後に、別のホールを朝から貸し切り、(取り直しということで)機嫌の悪いオーケストラに再度来てもらい、たった残り2分のためだけに演奏して収録。
もちろん音楽を担当する人間も大変なのだが、役者さんはさらに大変なのだ、というお話。

そして、みなさんも気になっているであろう、のだめの飛んだりはねたりのメチャクチャな(?)演奏についての秘話。
これについては、今日直接きいた者の特権ということと、
いちおう「秘密事項」らしいので、ここでは残念ながら・・・