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あんにょんはせよ

ロンドンで出会ったオトメン韓国人旦那と2014年12月生まれの娘と
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シティオブエンジェル(시티오브엔젤)

2019-09-04 | ミュージカル・演劇・コンサート

シティオブエンジェル
またまた観に行きました。
ビリー以外は基本的にはリピーター体質ではないのですが
推しの歌が聴きたい、は作品の好みをこえるのだなぁと実感した作品です。




スタイン役はジェリムさん
ストーン役はテイさん

声の相性、体格のバランスからか週末はほぼこの2人が組むようです。
5回中、4回がテイさんなのでそろそろジフンさんで観たいですね^^;

大苦戦中と思われるシティオブエンジェル…
わたしもボロクソ書きましたけど(すみません)プレビュー、初日の観客の感想があまりにもひどくて
まぁチケットが売れていません(涙)

休演日にキャストが作品について語るイベントをしたり
あれこれ企画してますが酷評は続いてます。
だいたいが「一幕で帰った」「キャストの無駄遣い」「話が酷くつまらない」など。

先週、私のためにシオエンを観に行ってくれた友人たちも
「チェジェリムは歌が上手い!以上!コメント無し!」と…(笑)

観劇5回目に感じたことは「いろいろ高度すぎる」という点です。
何度も話していますが、音楽、演出、セット、衣装、照明全てが秀逸な作品なんです。
歌詞も台詞も非常に洗練されていてお洒落。

その秀逸さが高度で初見じゃ拾いきれないんだと思います^^;
もう少し分かりやすい方がミュージカルファンを惹きつける気がするのですが
おそらく製作側はこのクオリティに絶対的な自信がありわざとこの状態を続けているのかな、と。

わたしが予習し予想していた以上にこの作品は頭を使います。
アメリカらしいシニカルさが作品の軸にしっかりあり更に1940年代のハリウッドという設定が
現代の韓国社会とは掛け離れた世界で共感が得づらいものなのです。

劇中に散りばめられたキーワードを拾いきれなきゃ全てのパズルのピースが揃わなきゃ
ガラガラと崩れてしまう、観客側の理解力をためすドS作品であることに
5回目にして気づきました(韓国語力の問題…?^^;)

作品の軸であるシニカルさは観客を皮肉ってもいたのですね…そりゃ不愉快だわ!(笑)




ていう事で、KTユーザー対象に全席半額キャンペーン始まりました(笑)
良かったらまたリピを!
解説するからぁ^^;

今回は5回観てわたしなり拾えた作品の魅力を書きますので
リピなり初見の方の参考になれば幸いです(セムのまわし者ではない 笑)
ネタバレ配慮はないのでそのあたりはご自身で判断し読み進めてください。

今回観に行ったら開演5分前に観劇ポイントのアナウンスがありました。
話し方がマチルダのときのエラセンの場内アナウンスの方に似ていましたがどうでしょう?
妙に含みある話し方をする方そんなに沢山いるもんですかね?

ミュージカル「シティオブエンジェル」は映画脚本家スタインのカラーの世界と
映画の中の主人公ストーンのモノクロの世界が交差しながら物語がすすみます。

カラーは現実、モノクロは映画の中と理解すればいい、とアナウンスありましたが
こんなに分かりやすい演出でも分からなかった方がいたんですね^^;
わたしは全く混乱しませんでしたが…。




左が現実(カラー)右が映画の世界(モノクロ)
見事に視覚的に世界が分かれてます。

You’re nothing without me(넌 안돼 나 앖이)はこのふたつの世界がひとつのステージ上で重なるハイライトシーンです。
とにかく凄いんですよ!
忠武アートセンターのつくりが前方席だとこの演出が全く楽しめないので
後方席か2階席以上をおすすめしています^ ^




これは左が映画の世界(モノクロ)のウーリーと右が現実の世界(カラー)のギャビーが
互いのパートナー(意味がそれぞれ違うのも意図した対比)に対し
What you don’t know about women(여자를 너무도 몰라)を歌うシーンです。

ウーリーは探偵事務所の秘書でストーンに片想い
ギャビーはスタインの彼女で脚本に助言をする知的な女性

スタインもストーンも出かけぎわに深い意味のない軽い「사랑해(愛してる)」を相手に伝え
言った本人の軽い一言だと分かってはいても
「女のこと、自分のこと何一つ分かってない」と揺れる可愛くてかっこいい女性デュエットナンバーです。



シティオブエンジェルは男性キャラクターがみんな頼りない作品ですが
女性キャラクターはみんな違う方向に(笑)イキイキしていて観ていてスカッとします^ ^
このナンバーはどのキャストで観ても気持ちがよく一番お気に入りのシーンです(マニアック承知!)

ウーリー役のキム・ギョンソンさんもパク・ヘナさんも
ギャビー役のリサさんもパン・ジニさんも
4者4様歌い方と魅せ方が違いわたしは大好きなんです(マニアック承知!←二回目)

You’re nothing without meとWhat you don’t know about womenが
ひとつの舞台上にふたつの世界を描き出す素晴らしいナンバーなので
歌も聞きごたえあるし、視覚的にも楽しいです。

演出上も向かい合い同じ歌詞を歌っていても真逆の意味だったり
互いをさしていたりと非常に複雑に交差しています。
歌詞をしっかり聴きながら目で見える俳優さんの演技と見てると
別の解釈が広がるようになってます。
気付いた時はぶわぁと鳥肌立つくらい本当に凄いんですけど、わかりづらーい(笑)

シオエンを観劇する上で常に裏表、二面性を意識してると演出意図がわかると思います。
なぜ、スタインとストーン以外の主要キャストが一人二役かがヒントでもあるのです。






それからわたし的に最大の問題であると思っている主人公スタインについて。
ご存知のとおり、私はスタイン役のチェジェリムさんのファンであるので
ジェリムさんの歌が聴きたくてシオエンのプレビューと本公演初日を観に行きましたが
まずジェリムさんの歌がおそろしく少ないことに不満がありました。

もはやこの点に関しては致命的です。
Wキャストのカンホンソクさんファンもさぞがっかりされてるかと思います。

更に追い打ちをかけるように役に一切共感できない最低最悪なゲスいキャラクターには
もう全力でドン引き、全身全霊でこいつ嫌いだ!と思う始末^^;

失礼を承知ですけど決して美男子ではないしちょいワル顔なジェリムさんにホンソクさん。
どちらも可愛らしい面が魅力的であると思っているのですが
お二人から愛嬌をとったらいったい何が残ります...??
そう、ただの悪でしかない!(笑)

どうやらブロードウェイオリジナルの脚本のスタインはもっとゲスくお金や名誉に目がくらむ愚かなキャラクターらしく
稽古段階で徐々にスタインのそういった毒気を抜いていったんだそう。
しかし、主人公としてもあまりにも味気ないゆえ
観客に疎まれても良いからスタインの性格にあえてかるい毒気は残したと
各インタビューなどでお話されていました。

あ、あれで薄味だったのか…と驚きでいっぱいです^^;
初日の評判、特にスタインというキャラクターの抵抗感がかなり酷かったためか
翌週にはジェリムさん演じるスタインは可愛げのある子供っぽいスタインへと修正されていました。
台詞の言い回しもほぼ原型を留めていなかったし、歌詞も強調する場所が変わったり
それはそれは大変な作業だったのでは、と思います。

スタインの毒気、シニカルさは作品の妙だと言われればそれはそうなんでしょう。
でもやはりあそこまでゲスいとお金を払って好きな俳優さんたちの歌を聴いても不快感しか残らず
さすがにそれは嫌だなぁと思います。

初日から作品に漂うシニカルさ、それは一貫して残してはいますし
スタインは決して可愛いキャラクターでもないんですが
深く考えないゆえ社会にもまれていく可愛げのある子供みたいな主人公に変わった事で
スタインの愚かさがくっきり明白になり失敗から学んで成長する物語が成立したな、と感じました。

おそらく制作過程で観客の抵抗感は想定範囲内であったんだとは思います。
随分はやく観客の視点を軌道修正したのでその判断は素晴らしいと思います。

5回目に観たジェリムさんのスタインは完全にストーンより精神年齢が幼く
浅知恵だけで生きているような子供のようなスタインになっていました。

スタインが歌う曲は全部で4曲です。
最初に歌うDouble Talkから歌い方を変えていらしてどの回も歌はとても上手いんですが
あとの展開をわかった上で聴くと5回目の今回の歌が素晴らしく鳥肌が立ちました。

まだ単純なスタインの能天気な歌い方が可愛らしく感じられる軽快な歌い方でした。

ですが残り3曲はすべて笑いながらも「泣き」の入った歌でその表現力には天晴れとしか言いようのない凄い歌を聴かせてくれます。

You’re nothing without meはストーンに指摘されでもどうする事もできない
自分の弱さ、非力さに八つ当たりするように子供が喚くような歌い方です。
決してプレスコの上から目線なゲスいオレ様スタインじゃないですからね(笑)←もう悪夢

憑依型俳優タイプのジェリムさんなのでストーン役のテイさんと
妙に仲良しというかキャッキャしてる近頃ですが今回観たらちゃんとテイさんのストーンの方が
精神年齢が高い大人で毅然とした態度でスタインの作家活動を否定する強いキャラクターになっていて
ようやくジェリムさんのスタインの方が弱い立場になったな、と感じる歌になりました。

プレビュー初日は完全にストーン消し去るくらい強かったし
前回のマチソワは同等レベルな感じでしたが
今回ぴたっとハマって歌と2人の演技に演出が見事なケミストリーを生み出したように感じました。

酔いながらタイプライターに向かって不本意なシナリオをを書いていたスタインに
ストーンが「せっかくプロの作家になったのにゴミみたいな文章しか書けないのか」と言った途端
サッと顔色が変わりYou’re nothing without meを歌い出します。
いまにも泣き出しそうに全身で暴れるように歌うスタインが何とも可哀想になります。

明るい音楽ですが観ていてなんだか切なくなるのがこのシティオブエンジェルの魅力なんです(好みじゃない)






そして二幕のクライマックス
I’m nothing without youは一幕のラストYou’re nothing withou youの対比となるシーンです。

一幕ではスタインがタイプライターに向かいストーンが操られながらシリアスなアクションシーンを見せますが
二幕ではストーンがタイプライターに向かいスタインがコミカルなアクションシーンを見せます。

いずれも「カット!」という台詞が起爆剤です。
一幕ではスタインの頭の中のストーンが
二幕では現実の世界でスタインが。

弱かったスタインが強いストーンとなる瞬間です。

劇中、プロデューサーのバディが「영화는 그림자다(映画は影だ)」と言います。
この台詞が作品の全てを示していて全幕、影の演出が印象的なんです。
リピーターの方は影の照明演出を必ず観てください。
影だけで映画の世界がうまれているのです(すごいの!)

現実の世界にモノクロのストーンがひとり同じ空間にいる映画撮影シーンのクライマックス
ストーンはスタインの横で皮肉りながらもスタインが望む勇気のある強いスタインの姿を
タイプライターに向かって書き上げます。

スタインとストーン
表と裏
光と影

난 안돼 너 없이!!(オレはお前なしではダメだ)と一幕と真逆のことを言いながら
強さと弱さ、互いを認めあいます。

スタインが起こしたアクションは頭の中で起きた出来事で現実は
警備員に連れ出されたんだといまの段階ではわたしはそう解釈してます。

でもスタインがバディに言い放った言葉は現実でスタインは職は失ったんでしょう。
「自分の言葉で書く時が来た」と言い放ち誇らしげにストーンを見つめます。
職は失っても誇りは取り戻したんだと思います。

あと一幕では銃を奪われるストーンですが
二幕ではスタインが銃を手にするんですよね。
あの銃は現実には手にしてはいないと私は解釈してるんですが
銃は劇中、ストーンを意味していていたので
わーお、と銃を手にした瞬間がスタインがひとまわり成長したという抽象的な表現なのかなぁ、と。
でもまだこのあたり分かっていません。

またストーンが静止状態のバディからスタインの鉛筆を取り返しスタインへ渡し
スタインは手にした銃をストーンに渡すんですが
鉛筆は劇中スタインをさしてもいますが
また鉛筆自体にスタインのプライドも意味してるのかなと感じる
ジェリムさんとテイさんの演技でした。

またストーンが「オレ達だけこう終わらせるのか」とスタインに問いかけ
タイプライターに向かい「ハリウッド式ハッピーエンド」というと
ギャビーが後ろ向きで立ち登場します。

くるっと前を向いたギャビーは銃を乱射しながら「You’re nothing without me」と歌うんですがその後スタインに銃口をつきつけ
「あなたのやり方でやり直しなさい」と言います。

その瞬間のジェリムさんは前回は哀しげに投げキスを送っていましたが
今回はギャビーを見つめながら立ち尽くしていました。

この意味がまだきちんとわかりません。

そして、ストーンにあっちへ行けよ、と促しタイプライターの前に座りシナリオを「書き直す」のです。

そして今までは鉛筆を手にして「자유롭게 써나갈 진짜 얘기(自由に書く本当の話)」と歌うところを
今回は原稿を手にして歌っていたジェリムさん。
なにか意図があったのか間違えたのか…

언제나 주인공은 나(いつだって主人公は自分)で鉛筆を持っていたのは
鉛筆がスタインのプライドだと解釈していたんですが原稿とは…また謎が増えました(笑)

それとですね。
そもそもスタインはギャビーが本当に好きだったのかなぁという疑問が…。
単純にギャビーの編集能力を必要としていただけでギャビー自身を見ていたのか…???
非常に不快な男スタインなのでまぁ自業自得としか思えません(笑)

でもなんともいえない物哀しさは残ります。
初日には感じなかったものです。
見事に観客の感情の方向を変えたなぁ、と感じます。
初日のスタインはただただ不愉快でしかなかったので。

またバービー。
スターを夢見てストーンを悲しませ堕ちていった新人女優
ストーンのもとを去っていったのに何故ニコニコ戻るのかよく分からないんですよね。

都合よく「書き直し」?
ストーンが言うんです「考えを変えろ」と。
すると巻き戻されスタインのアクションシーンになりスタインが自由を手にするのですが
巻き戻し、は一幕序盤にもあり果たしてどんな意味があるのか私はまだ理解出来ていません。

このシオエン。
拾わなきゃならない単語が多くその単語に裏表の意味がありすぎて
んん?と思う部分がこのクライマックスに凝縮してます。

ただ必ず紐解いていけるうまい仕組みになっているのは
5回観てすでに分かっているので閉幕の10/20までまだまだ深く掘り下げて観劇していきたいと思います^ ^






もう長くなったのでここまでにしますがジェリムさんについてはもう少しだけ^ ^

この日のジェリムさんはFunnyの泣き笑い演技と歌が絶品でした。
囁くように泣きたいのを堪えるように歌い中盤から徐々に声量をまるで機械のように
じわじわあげていく歌い方には感嘆の声をあげてしまいました。

毎回歌い方を変えているようでリピーターには嬉しいジェリムさんの歌です^ ^

声楽出身とはいえあそこまで繊細に丁寧で的確な音で歌えるミュージカル俳優さんは
なかなかいないと思います。
本当に出会えて良かった^ ^


































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