
ひいじじの似顔絵
岳翁は“耳の遠い人は長生きする”という俗説を地で行くような御仁である。が最近は杖とも頼りにしていた補聴器もあまり装着しようとしない。代わりにホワイトボードでコミュニケーションをもっている。
冒頭の似顔絵は、正月の年始あいさつに訪ねた曾孫が、そのホワイトボードにサラサラと描いたもの。年輪であるシワこそ描き洩らしているが、実にうまく特徴を捉まえており、消すには忍びないのでカメラに収めた。
家内と二人して三日にあげず訪ねているのだが、その際に好物の刺身(決まってサワラかブリ)は欠かせないし、日本酒だけは切れないように気遣っている。私には「酒の燗をつける」、「サンドイッチを作る」、「リンゴを擂る」の三点くらいしか能がないが必ず心掛けている。
それでも岳翁が念仏を唱えるかのように感謝の念を表しながら、刺身を肴に一合ほどの酒で微酔い機嫌になるのをみていると、飲んでない此方までえも言われぬ幸せを感じ、一緒に一杯やっている錯覚に陥る。残されし唯一人の親父だから・・・。