広島市は人口約120万人の政令市で、政治・経済・文化の中心都市である。高速交通体系も整備されていて、広島駅ではJR線の列車は新幹線を含め、すべて停車する。これだけ拠点としての価値が高く、原爆ドームや広島平和公園など観光名所も数多い。
同市中心部の地形は海が近く、川が多いことや地盤が弱いことで、地下鉄建設には不適当である。その影響を受け、中心部には路面電車網が広く整備されている。第二次世界大戦前から運行され、原爆投下の翌日も運転されていた。広島電鉄が経営する路面電車は今日まで運転され、市内外の人に広く利用されている。同市の路面電車網は全国最大級であり、運行本数が多いことで、待ち時間が短く、地下鉄のように上下の移動がほぼないという大きな利点がある。
広島電鉄は新電停を43年ぶりに新設するという。広島駅の近くに位置する場所であり、線路の付け替え工事に伴い線路を移設することで、途中に電停を新設する。同駅という便利な場所で、人が集まる場所であり、一定の利用者がいるものとみられる。
路面電車において、新電停の開設はあまりないケースである。鉄道ほど電停(停留所)の間隔が長いわけではないので、沿線住民から新設要望はほぼないのが実状である。どちらかというと、バス停の距離間隔に近く、それだけ目的地の近くまで行きやすいといえる。ただし、道路上にある軌道を走行することで、信号の影響を受けるので、鉄道よりも定時性ではやや落ちるといわざるを得ない。
広島駅は現在、駅ビルを含め、再開発事業が進められている。駅ビルは来年3月下旬の開業となっている。しかし、駅ビルの2階に乗り入れる予定である路面電車は当初の予定よりも遅れ、夏ごろに乗り入れ開始となる予定である。
駅ビルと路面電車の電停が直結するのは良いことである。利用者にとっては、移動する時間が短くなり、天候に関係なく、移動することができる。過度なクルマ依存を脱却し、環境負荷軽減にもなる。都市交通を充実させ、接続をグレードアップすることで、公共交通機関の利用促進にも寄与こととなる。合わせてヒトの移動をしやすくさせ、回遊性を増すことで、商業施設への誘客にもつながる。ひいては観光客を含め、飲食や買物等でカネが落ちることとなり、地元経済への波及効果は大きい。同駅には新幹線が乗り入れている関係で、遠方からも数多くの人が訪れているので、自ずと利用者は増加する可能性が高い。