福井県池田町で3月、中学2年生の男子生徒が自殺した問題で、町教委の調査委員会は「教師による厳しい叱責(しっせき)」が原因だったと指摘した。学校での指導をきっかけに子どもが命を絶ってしまう「指導死」はこれまで見過ごされることも多かったが、認識が次第に広まっている。

 「『指導死』親の会」代表世話人の大貫隆志さん(60)=東京=は池田町教委が依頼した有識者の調査について「生徒指導をはっきりと、自殺の原因と指摘したのは画期的だ」と評価する。報告書は、男子生徒が担任や副担任から再三叱られ、「死にたい」と漏らしたことや過呼吸を訴えたことを取り上げ、目撃した生徒が「(聞いた人が)身震いするくらい怒られていた。かわいそうだった」と感じていた実態を明らかにした。

 大貫さんも17年前、中2だった次男の陵平さんを亡くした。陵平さんは学校で菓子を食べたことをきっかけに、約90分間にわたって教師から叱られた後に自ら命を絶った。大貫さんは学校側に調査を求めたが、「自殺と学校は関係ない」と拒否された。

 対応に不満を抱いたことをきっかけに、2008年に親の会を立ち上げた。「指導死」という言葉を考えだし、同じような境遇の遺族約20人と一緒にシンポジウムを開いたり、相談を受けたりしている。

 文部科学省の調査では、07~15年度に「教職員との関係で悩み自殺した」と学校から報告があった児童・生徒は10人。ただ、大貫さんと共に活動する教育評論家の武田さち子さん(59)が新聞などから「指導死の疑い」も含めて調べたところ、同じ時期に26人が亡くなっていた。

 武田さんは「表面化していない指導死も数多くある。教員は普段の仕事の忙しさに追われ、ストレスがたまって感情をコントロール出来ないこともある。長時間の激しい叱責は虐待だが、学校では『指導』と正当化されやすい」と話す。