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新しい治療標的分子続々、中村祐輔氏【癌治療学会2018】

2018年12月05日 22時17分10秒 | ガン
新しい治療標的分子続々、中村祐輔氏【癌治療学会2018】
新薬開発に利用可能な106個を同定
MMJ2018年12月5日 (水)配信 癌

 第56回日本癌治療学会学術集会(会長・野々村祝夫大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科教授)が10月18~20日、横浜市内で開かれ、19日には特別企画シンポジウム5「Precision Medicineの検証 分子標的治療薬:新規治療標的分子の発見と実用化」があった。がん研究会がんプレシジョン医療研究センターの中村祐輔所長は「ゲノム解析に基づく分子標的治療薬の開発」をテーマに発表し、新規標的分子に阻害活性を持つ化合物による臨床試験の実施や計画などについて語った。(MMJ編集長・吉川学)
TOPK阻害は臨床試験を計画中
 中村所長は最初に、がん特異的に過剰発現しているタンパク質をもとに創薬しようとの目的で、2000年から研究を始めたとし、タンパク質を発見した後は、低分子化合物、抗体医薬、ワクチンという3つのアプローチで、創薬までの研究開発を続けていると話した。これまでに、1500以上のサンプルのゲノムワイド解析により、抗がん薬の開発に利用可能な106個の新規分子標的を同定したと述べた。このうち、TTK(チロシンスレオニンキナーゼ)、TOPK(T-LAK細胞由来プロテインキナーゼ)、MELK(胚性ロイシンジッパーキナーゼ)は、さまざまな幹細胞に高頻度で発現していると報告されている分子の上位20位にランキングされていると説明した。
 MELKは、予後を悪くする、抗がん薬に抵抗性を示す、がんの幹細胞に関係するものとして知られ、約5年かけてMELK特異的に増殖阻害活性を持つ低分子化合物OTS167を同定したと述べた。マウスの静脈注射実験では、用量依存的に肺がんの増殖を抑え、体重も減らず、明らかな毒性は示さなかった。また、MELKが発現していない場合、全く効果がなかったという。分子生物学的な機序を調べた結果、がん細胞内でP21、P53の発現が強く誘導され、細胞死が引き起こされるのではないかと述べた。経口の場合、ヒトでは40%の吸収性が確認されたため、米MDアンダーソンがんセンターなどで乳がんを対象に試験が実施されていると話した。
 TOPKは血球系の細胞から見つかり、発現を抑えると細胞が分裂できず死ぬため、がん細胞の有糸分裂に重要な役割を果たしているとした。肺がんや乳がんなどさまざまながんに発現し、4、5年かけて阻害活性をもつ低分子化合物を開発したと述べた。これらは、用量依存的に増殖を抑え、体重減少などはなかったが、白血球が減少したと話した。これらのうちOTS964は経口吸収性が高く、マウス実験では15日で投与を打ち切った後も、がん細胞は小さくなり、29日目に6匹中6匹で消失したと述べた。がん幹細胞を抑えることで幹細胞がまず死に、投与を打ち切った後も分化した細胞が死んでいくため、腫瘍縮小が継続すると考えられると説明した。白血球減少は起こるが、投与中止後2週間で元の状態に回復するため投与効果が期待できるとし、臨床試験を計画していると話した。
 さらに、阻害薬で血小板が増加するので、血液がんで意義があるのではないかと考え、AML(急性骨髄性白血病)細胞を調べたところ、FLT3突然変異がある予後の悪いタイプでより高い効果が確認され、来年中には臨床試験を始めたいと述べた。

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