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妊娠糖尿病の診断基準

2011年09月24日 13時23分57秒 | 仕事
第47回 欧州糖尿病学会(EASD2011) 【開催期間:2011年9月12日~16日】

妊娠糖尿病は一般的な糖尿病とは診断基準が異なり、軽症であっても治療すべき
2011年9月16日  カテゴリ:一般内科疾患・循環器疾患・内分泌・代謝疾患

ポルトガル、リスボン市で開催されている第47回欧州糖尿病学会の3日目、“Controversies in gestational diabetes”と題するシンポジウムが開催され、妊娠糖尿病の診断基準、軽症例を治療すべきか否か、妊娠糖尿病によって転帰不良となる症例の同定と管理という3つのテーマについて、欧州のエキスパート3名が講演を行った。


まず、デンマークUniversity of CopenhagenのPeter Damm氏は、IADPSG(International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups)が提案した妊娠糖尿病の定義と、その妥当性について解説した。従来、妊娠糖尿病は妊娠中に初めて発見された耐糖能異常で、妊娠中に診断された明らかな糖尿病(overt diabetes)も含むとされ、診断基準となる血糖値もさまざま提示されていた。IADPSGでは妊娠糖尿病の定義の国際的な統一を目指し、2008年に開催したコンセンサス会議で、妊娠糖尿病を「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常」と定義し、明らかな糖尿病を除外した。妊娠中に血糖値が上昇すると、LGA(large for gestational age)児、帝王切開、Cペプチド値異常などのリスクが上昇するが、特に閾値は認められない。そこで、コンセンサス会議ではオッズ比が1.75となる空腹時血糖値92mg/dL以上、OGTT 1時間値180mg/dL以上、同2時間値153mg/dL以上を妊娠糖尿病の診断基準とした。

次に、英国University of SheffieldのRobert Fraser氏は、軽症の妊娠糖尿病を治療することの意義について論じた。HAPO Studyでは一般的な糖尿病の診断基準に満たない血糖値であっても妊娠転帰が不良であること、妊娠糖尿病に対する介入試験(ACHOIS、M-FMUN)の統合解析では、治療介入によって子癇前症/妊娠高血圧症候群、新生児体重増加、LGA児、肩甲難産のリスクが減少し、帝王切開のリスクも低下傾向となったことから、「積極的な治療介入の必要性が高いことは明らか」と指摘した。また、妊娠糖尿病のリスクが10%を超えた場合には、耐糖能異常のスクリーニングを行った方が費用対効果が高いことも示されている。治療の基本は食事療法、血糖自己測定、インスリン、経口血糖降下薬で、これまでに血糖上昇係数(glycemic index)の低い食事によってインスリン投与の必要性が減少すること、インスリン療法と経口血糖降下薬の有効性に違いはないことなどが報告されている。

最後に、英国Cambridge UniversityのDavid Simmons氏は、妊娠糖尿病によって転帰不良となるリスクの高い症例の管理法について論じた。これまでの検討では、血糖値やBMIの上昇に伴ってLGA児、Cペプチド値異常、新生児低血糖などのリスクが増加すること、トリグリセライド(TG)が転帰不良のリスク因子であることが明らかになっている。さらに、MODY2遺伝子が糖代謝異常に関与するという報告もある。超音波検査で胎児が巨大児かどうかを確認することも重要である。妊娠糖尿病患者に治療介入を行うことで、死産、巨大児/LGA児、低血糖、子癇前症、高ビリルビン血症などのリスクが著しく低下することも報告されている。こうした知見に基づきSimmons氏は、「適切なタイミングで診断し、血糖コントロール、体重管理、TG低下などの治療介入を行うことが重要。さらに、超音波検査を行って巨大児かどうか確認し、産科的な管理を十分に行うことで、妊娠糖尿病に起因する転帰不良のリスクは抑制できる」と解説した。

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