回復早い心臓弁膜症 手術切開の傷目立たず 松江赤十字病院で島根初
2021年9月13日 (月)配信山陰中央新報
島根県内で今夏から、現代病とも言える心臓弁膜症の手術が、大きな切開を伴わない手法でもできるようになった。松江赤十字病院(松江市母衣町)に経験のある医師が着任し、特殊機材が整ったことで7月中旬、70代女性に初の「低侵襲心臓手術」を実施。胸の中央ではなく、右胸部の目立ちにくい場所の切開で済み、退院も早いメリットがある。
松江日赤によると、低侵襲心臓手術は県内初。
心臓弁膜症は心臓内の逆流防止弁が狭窄(きょうさく)したり、逆流したりして心不全を起こす疾患で、先天性と後天性がある。主因は、かつての幼少期の感染症から、高齢化に伴う動脈硬化との関連や心筋梗塞などの合併症に変わってきており、いわば現代病。松江日赤の心臓血管外科が担う手術の中で最も多く、昨年は79例の実績があった。
弁膜症の手術はこれまで胸の中心を20~30センチ切開し、胸骨を割って行う方法が主流だった。執刀医が直視しながら施術できるが、出血が多く胸骨感染のリスクもあるという。術後の回復にも時間がかかり、自動車の運転を3カ月控える必要があるなど、日常生活にも影響が大きい。
一方、低侵襲心臓手術は特殊な器具と内視鏡を用いて直接手をかけず施術する。右胸下付近を5~10センチ程度切開し、肋骨(ろっこつ)の間に器具を通して患部の処置をするため、傷が目立たず、早期に日常生活や仕事に復帰できるという。
昨年4月、鳥取大医学部付属病院で手掛けてきた中村嘉伸医師(現・松江日赤心臓血管外科部長)が着任。機材の導入など準備を進めていた。
動脈硬化の度合いや胸郭の形状などで受けられないことがあるが、中村部長は来年以降、弁膜症の手術で毎年20~30人は低侵襲手術に置き換わるとみており、「対応できる医師も育成したい」と話す。