フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

7月27日(木) 晴れ

2006-07-28 11:12:34 | Weblog
  朝起きてメールのチェックをしていたら、「はじめまして」という件名のメールがあったので、てっきり風俗系のジャンクメール(毎日たくさん来るのだ)と思って削除しようとしたら、差出人の名前が男性名であることに気づき、削除ボタンを押すのを中止して開いてみたところ、フィールドノートの愛読者だという共同通信社のニューヨーク支局長のO氏からのメールだった。見知らぬ読者の方からメールを頂戴することはたまにあるのだが、半年ほど前に、やはり共同通信社のワシントン支局長のS氏からもメールを頂戴していたので、これは偶然なのか、それとも支局から支局へ回覧板でも回っているのか、いずれにしろ、東京の片隅で慎ましく暮らしている男の日常が地球規模のメディア・ネットワークの中でウォッチされていることに、これがインターネットというものかと改めて感嘆した。
  そんな感慨に耽っていると、机上に置かれた携帯電話のメール着信音が鳴って、卒論ゼミの学生の一人から「本日のゼミに遅刻します」という連絡が入った。「本日のゼミ?」と私は首をかしげた。ゼミは明日のはずである。そう思いつつ、念のために手帳を見て飛び上がった。今日なのである。一日勘違いしていたのだ。現在の時刻午前11時15分。ゼミは午後1時からなので、いまから支度をして自宅を出ればこれには十分間に合うのだが、ゼミの前に2つの用事、11時から学生の面談を一件、12時から後期の総合講座「現代人の精神構造」の打合せを入れていて、前者は完全にアウト、後者も大幅な遅刻が免れない。まいったな~、と思いつつ、いま研究室のドアの前で私を待っているであろう学生にとりあえず連絡して(携帯電話で連絡が取れることが不幸中の幸いであった)、事情を説明し、申し訳ないと謝ってから、大急ぎで身支度をして自宅を飛び出す。東京駅に着いたのが会合の約束の12時ちょうどだった。ホームから携帯電話で教員ロビーに連絡を入れ、そこで私を待っておられるはずのM先生を呼び出して貰う。30分ほど遅れますので、F先生とお話を進めていて下さいとお願いする。JR東京駅と地下鉄大手町駅の間はいささかの距離がある。遅刻の時間を少しでも短縮するにはここで頑張るしかない。道行く人々が「刑事ドラマのロケ?」と振り向くくらいの勢いで私は走った。気分は『太陽に吠えろ』のゴリさんであったが、端から見るとチョーさんだったかもしれない。
  会合を無事すませ、午後1時からの卒論ゼミに臨む。今日の報告者は5名。長丁場である。午後6時半からコンパの予約を入れているので、1人あたり1時間として、6時までに終わらさねばならない。Tさん、Dさん、H君、Wさん…と予定通りに進んだが、最後の報告者であるF君が来ない。欠席のメールも入っていない。ドタキャンか、あるいは私のようにゼミは明日だと勘違いしているのか。コンパの幹事のTさんに連絡を取ってもらったところ、案の定ドタキャンで、しかし、コンパには出ますとのこと。一体、何を考えているのか、このスラムダンク野郎は!(注:F君の卒論のテーマは漫画「スラムダンク」である)。コンパの会場は高田馬場の「井戸坊」というイタリアンのお店。コンパというとがさつな料理が出てくるところが多いが、ここは違った。前菜からデザートまでまっとうなイタリアン料理できちんと統一されていた。幹事のTさんは、身長1メートル70センチを越える長身で、剣道の達人、デートはサファリパークという一見体育会系の女性だが、味覚を含めて、繊細な神経の持ち主のようである。で、問題のF君はといえば、臆することなく私の隣に座り、正座を崩さず、「先生、料理をお取りします」とか言っていた。変な奴だが、憎めない男である。