フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

2月23日(金) 晴れ

2013-02-24 09:24:28 | Weblog

   8時、起床。朝食はとらず、9時前に自宅を出て、大学へ。今日は大学院の科目等履修生の入試(面接)がある。

   昨年末に開店したばかりの「ドトール」早稲田店で朝食をとる。ここは以前、ある会社のオフィスがあった場所で、オフィスの中が道から丸見えで、従業員の女性たちはいつも通行人に見られていてさぞや落ち着かない気分だろうと思っていた。窓際の席は、そのときと同じく、外から丸見えだが、カフェの場合は、客の方も道行く人を眺めるので、「見られる」人は同時に「見る」人でもある。私はこういう道路に面した窓際の席は落ち着かない(レースのカーテンをかけてくれるといいと思うのだが)。

  10時半までの「朝だけセット」の中からCセット(ジャーマンドッグ+ブレンドコーヒーSサイズ:380円)を奥の席で食べる。 

   10時半から面接開始。欠席者もあって11時には終わる。

  本部キャンパスの総合図書館へ行って本を借りる。『生活学入門』という昔の放送大学のテキストで、私が書いた本である。もちろん持っているのだが、もうボロボロで、一部ページが抜け落ちているのだ。数冊持っていたはずだが、なぜか一冊しか残っていない。実はもう一冊自分の書いた本で借りたい本があったのだが、貸し出し中だった。自分の書いた本を図書館で借りるということ自体、おかしなことなのだが、しかも貸し出し中で借りられないというのは、いよいよおかしなことである。

  図書館のそばの「金城庵」で昼食をとる。天丼フェアというのをやっていて、普段は1650円の上天丼セットが1250円だったので、それを注文する。普通の天丼よりおそらく海老が大きいのだろう。「金城庵」は大正8年創業の老舗だが、私が学生の頃は、海老を開いて(あじフライみたいな)天ぷらにしていた。しばらく前に経営者が変わって(看板はそのまま引き継いだ)、普通の形の海老天になった。

   食後のコーヒーを「金城庵」の向かいにあるジャズ喫茶「ナッティ」で飲むことにする。ここは蒲田にあった花屋さん「サッチモ」のご主人が4年前(2009年1月)にこの場所に開店したお店である。開店当初、一度訪問したことがあるが(そのときのブログはこちら)、そのときは営業時間外で、営業中の訪問は今回が初めてである。私はジャズ喫茶というものに入ったことがないので、ドアを開けるときは緊張したが、3人の客がいて(みな一人客で中年男性)、一人は本を読み、一人はじっと目を閉じ、一人は身体をスイングさせながら、ジャズを聴いていた。名曲喫茶に似ているが、名曲喫茶よりも(とはいっても私が知っている名曲喫茶は金沢の「パルティータ」くらいなのだが)音量はずっと大きい。マスターはドアを開けて入ってきた私を見て、一瞬の間があって、私であることに気づかれた。コーヒーを注文するときに他の客の迷惑にならないか気にしながら挨拶をする(名曲喫茶やジャズ喫茶ではおしゃべりはNGなのではないかと私は思い込んでいたのだが、そうでもないらしい)。途中で、奥様がやってきて、会計のとき、3人で互いの家族の近況などを語り合った。ずいぶんご無沙汰してしまったが、ジャズやジャズ喫茶というものにも興味があるので(村上春樹の文学を味わうための一助にもなりそうだし)、これからはときどき訪問したいと思う。

  今日は、思い切ってドアを開けてよかった。震災の後の私は、「ドア」を開けようかどうしようか迷ったときに、「ドア」を開けるようになった。そのことは自分でも気づいている。

   丸の内丸善で本と雑誌を購入。蒲田に着いて、「ムッシュのんのん」に寄って、ココアを飲みながら、ひとわたり目を通す。

  夜、『泣くな、はらちゃん』第6話を観る。いよいよ佳境に入ってきた。越前さん(麻生久美子)は自分で描いている漫画のストーリーにどのような結末をつけるのだろうか。

  物語とは出来事の連鎖への意味付与である。大澤真幸は「物語化できない人生」というものが現代社会の特徴だと述べている(『「正義」を考える』NHK出版新書、2011)。いま直面しているつらい状況が、一体何のためにあるのか、どのようによい方向に展開していくのかわからない人生、それが「物語化できない人生」である。つらい出来事というのは人生にはいろいろあって、それは昔からあったわけだが、そのつらい出来事を物語化する(解釈し、了解する)仕組みが失われてしまったのが現代社会なのだというのが大澤の見解である。

 越前さんは生きづらい毎日を送っていた。「物語化できない人生」を生きている人である。漫画を描くことは、バーチャルな世界に物語を構築することである。漫画の中の登場人物が現実の世界の中に飛び出してくることで、彼女の世界が物語化していく過程、それが『泣くな、はらちゃん』である。

  漫画を描くことを趣味にしている人は多くはないだろう。けれど、ブログを書くことは漫画を描くことと似ていないだろうか。論文を書くことも漫画を描くことと似ていないだろうか。

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