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猫のAちゃんは、撫でて貰うと、にゃあにゃあの声を立てる。声が高くなる。いい気持ちだということを声が表現している。撫でる手を止めると、頭で僕の膝辺りを軽くタップして、「もう少し続けたらどうだ」といって来る。やさしくされると、彼女もやさしくなれるみたいで、そうやってとろんとして、目が閉じる。
僕は誰に撫でてもらえるか? 誰にも撫でてもらえない。にゃあにゃあ鳴いたら、一人くらい駆け付けてきて、そうしてくれるかもしれない。実験してみてみようか、一度。いやもうこの高齢で、そうしてもらえることを期待する方がおかしい。そうされている図は想定し難(にく)い。
相手が人でなかったら? だったらいいのか?
春風に撫でられているとか。赤い夕日に撫でられているとか。
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撫でるの漢字を読み解くと、「手が無い」になる。手が無くてどうして撫でられるのだ? 足で撫でるわけにもいかないだろう。背中と背中を合わせたら、撫で合うことはできるが。手がしないのなら、こころがするのかもしれない。
愛撫は熟語だ。二つの漢字は同じ意味なのかもしれない。愛することが撫でることで、撫でることが愛することなのかもしれない。(これは曲論か?)
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此処まで書いたら、「夕食ですよ」の声が掛かった。此処まではイントロダクション。結論は持ち越しだ。