読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『「オードリー・タン」の誕生』

2022年06月12日 | 評論
石崎洋司『「オードリー・タン」の誕生』(講談社、2022年)



台湾のIT担当大臣になって、コロナ禍の初期にマスクの配布で混乱していた台湾の状況を、仲間たちに声をかけて数日でアプリを作って、落ち着かせたことで、日本でも一気に有名になった。私も彼の名前を知ったのは、これがきっかけだった。

たんに天から才能を与えられたギフテッドというだけだったら、彼はこれほどの人物にはならなかったということが、この本をよむとよくわかる。

小学校での虐め、教師からの体罰、家庭での両親の無理解、普通なら人間性を歪めてしまうはずの経験をしてきた、もちろんいろんな偶然や幸運(ドイツでの経験)があってのことではあるけれども、そういう経験をしてきたからこそ、そして時代がちょうどネット社会の幕開けの時代だったからこそ、人間的にも成長することができたのだろう。

それに性的同一性障害を持っていたことも、公平でオープンな世界を模索することを可能にした。さらに彼の成長と並行して、台湾の社会そのものが「たんぽぽ運動」のように改革の方向に動き出していたことも幸運だっただろう。

台湾でも韓国でも国民が下からの運動で社会を変えて活気のある国にしているなかで、戦前回帰の動きが力をつけて、古い考え方にしがみついている日本だけ例外的に社会が停滞している。

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