超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

千と万 2巻/関谷あさみ

2014-07-10 18:57:23 | 漫画(新作)

















関谷あさみ「千と万」2巻読了。実に1年ぶりの新刊!




















待った甲斐あってめちゃくちゃ面白かったです
関谷あさみは元々生々しさだとかリアリティに関しては得意な印象ですけど
この作品の中に流れている空気だとか思春期感は本当に現実のそれに近い雰囲気があって
それもあって一言で「日常もの」と言っても他作品とは一線を画した漫画に仕上がっているなあ、と
主人公は女の子で女の子特有の悩みも出て来ますけど、
男でも「ああこれ分かるわ」っていう思春期ネタがちょいちょい出てくるので
ある意味読み手として普遍的な懐かしさを感じる事の出来るコミックスじゃないでしょうか
夏休みの終わりの風景だとか、失敗して友達と気まずい空気になったりとか
まだまだ子供なのには変わりがないのに必要以上に子供じみた行為を恥じる気持ちだったり
周りの目を気にしだす頃会いの生々しさがよく出ていて正直分かるなあ、と
本当はまだまだ子供じみた事が好きなくせに
周りの声を異様に意識しちゃって
結果的に少し息苦しさを感じながら周りに溶け込もうと頑張るあの感じの再現には
読んでてこしょばゆくなりつつも相当感情移入しながら読んでましたね
また家では自由に気ままに振る舞えて幸せっていうのも本当にあの頃の真理の一つなんですよね
詩万はまだまだ子供だからその有難味はそこまで感じ取れてはいないみたいだけれど
あの描写こそ本当は物凄く恵まれてる事実の証拠なんだと思います

また普通の何気ない会話の中にも子供の視点から見た「親の嫌な部分」が滲み出ているのがいいですね
こっちの好みに合わせてくれない融通の利かなさとか何度も呼びつけるわずらわしさだったり
子供の前で大喧嘩する無神経さ
それは別に今考えればそこまで悪い事ではないんだけれども
それでも経験から共感出来ちゃう、っていう(笑
自分の価値観で買って楽しんでるものを安易に否定されたり誰でも経験あると思う
そういう「子供の視点から見た理不尽」が上手い具合に表現されてるのが流石だなあ、と
 ただ、大人になった今こういう作品を読むと大人の気持ちもそれはそれで「分かる」と言いますか
「仕方ないよね」とか「必要だよね」って感じる事も多々あります
等身大の中学生を描いているのと同時に、
等身大の大人も描いているのが尚素敵な作品ですね
子供(詩万)の気持ちも理解出来るけど、大人(千広)の気持ちも理解出来るという
その意味じゃ親子漫画としては理想的なバランスに仕上がっている作品だと感じました
またこの父親の千広もさり気にいじらしくて可愛い部分があるのが実にいいなあ、って思います(笑
生理痛を武器に取られてしおしお状態になるシーンは情けないけどそれもまた「分かる」な、と。


先ほど「等身大」という言葉を使いましたが
主人公の詩万は普通の日常漫画の女の子と比べて誇張されていない
人として未成熟で滑稽な部分も多々描かれているので余計に感情移入出来るというか
人間らしいな、と感じて好きになれるのかも、とか読んでて感じました
ちょっとわがままで父親似で融通の利かない部分もありますが
それでも基本的な手伝いはやってくれたり、
サボりすぎる事もなかったり
時折父親に対して恥ずかしながらも愛情に近い念を見せてくれたり
本当に「普遍的な女の子」を意識されて描かれている気がしてそこがすっごく好きで面白いなと
そういう未成熟で滑稽な部分を含めて「可愛い」と思えるキャラに仕上がっているなって
この2巻を読んで改めて感じる事が出来たのは個人的に大きかったですね
すごく「生きてる」キャラというか・・・
そんな風に思いました。

なんか一緒に出かけたはいいけれど、些細な事で不機嫌になって親を困らせたりするのは
自分もあったよなあ、って思い出しつつ(笑
一番可愛かったのはマニキュアのお話で思春期の女の子の可愛さが全部出てましたね
最後の「はぁあー!?」も含めて色々と難儀な詩万がとってもキュートでした
また千広のデリカシーのなさも面白かったけど(笑)。
流石女流作家だけに思春期女子を描くのは天下一品だな、と読んでて素直に思いました
休校の日の二度寝とか家でやりたい放題のワクワク感の再現も上手く
冒頭に戻りますがマニアックな題材に思えて実はかなりの普遍性を携えた作品だなと感じますね
詩万ちゃんも思春期ではありつつも何だかんだ素直な面もある可愛い子なんだと全体を通してそう思えました
そのバランス感覚も含めて読んでてひたすら楽しかった新刊でした。やはり関谷あさみはイイです。




















しかし詩万は1巻と比べるとまた更に可愛く読んでて楽しいキャラクターになってますね
表情のバリエーションも豊かですし色々な意味で魅力的な女の子に感じられます
好きな男の子を意識する場面ではニヤニヤ出来たり、
体育祭では珍しく素直に感謝の気持ちを照れながらも伝えるシーンが凄く良かったり
泣き顔は泣き顔で可愛く、ちょっと計算高い部分もそれはそれで小悪魔的な魅力があったり(笑
読んでて見てて飽きないキャラクターだなあとつくづく思いましたね。
リアリティを含む日常ものが好きなら是非触れて欲しい一作です。