ACCI Gusto2017でセミナー「新発見!ルネッサンス期のイタリアにソムリエがいた!」を聞いてきました(2017.11.15)@日本イタリア料理協会
ACCI Gusto2017は 初日にざっとブースをまわってから サルデーニャ文化オペレーター・美術史研究家のMartino Cappai氏のセミナー「新発見!ルネッサンス期のイタリアにソムリエがいた!」を聞いてきました:
ルネサンス期に最初のソムリエの役を担ったサンテ・ランチェーリオというローマ法王のbottigliere(飲み物係) 兼地理学者がいたという貴重なお話を イタリアから届いた 枢機卿への手紙をまとめた本とともに 当時の数々の絵画を示していただきながら詳しく解説していただきました
通訳の長本和子氏も(Tharrosのサルデーニャのイベント以来です)大変すばらしく もっともっとお話を聞きたかったくらいです…♡
ルネサンス期の食卓は イタリアのみならずヨーロッパの食文化を形づくりました
まずは 後期中世からルネサンス期にかけては 多くの食卓を描いた絵が描かれました それらをひとつひとつ見ながら 食事をする人だけでなく 食卓のまわりで働く人たちもみてゆきました
『最後の晩餐』(1584, ボンボニオ・アマルテーオ) 後期中世の時代はフォークはまだなく(フォークはルネサンス時代に生まれた) ナイフやグラスはほんの少ししかなく 手で食べて 同じグラスで飲んでいたそうです
「credenza(credenziere)」というのは 食器係 皿を用意する人のことです
『カナでの婚礼』(1561,ティントレット) この絵から 座って食べる人たち(tavolata)と 働く人たちを分けてみてゆきました 音楽を奏でる人たち 皿を運ぶ人 カメリエーレ 給仕係(Valletto)たちなど...
← 明るい色が 食卓で働く人たちを目立たせたものです (『カナでの婚礼』)
ルネッサンス期には 食卓はさらに複雑になってゆきます バンケットは 富を表すように豪華な広間で行われました (フィレンツェのヴェッキオ宮殿など) また ピッティ宮では 海戦などのスペクタクルを見ながら食べたとのこと オペラ等はバンケットとともに発展したのですね
ヴェネツィア貴族の使ったグラス コンキリエ(貝)の形の脚つきグラス(coppa)にスプーン ここでカラヴァッジョの「バッカス」の絵が登場 貴族のために作られた盃があります
また複雑な形の複数のグラスや(どうやって使ったのか?) くじゃくの形に折られた美しいナプキン(tovagliolo)なども紹介されました
← くじゃくの形のナプキン
次に 『カナでの婚礼』(1563,パオロ・ヴェロネーゼ/ルーブル美術館)という12メートルもある絵を見てゆきました
彼は大変豊かだったヴェネツィアの画家で「食卓の画家」とも呼ばれていますが この絵の中心に描かれたキリストの上に 肉切り役の 「トリンチェンテ(trinciente)」が配置されているのですね これはキリストの未来を暗示しており 劇場のような表現とのこと
またテーブルの下には犬がおり(食卓の絵には必ず犬がいる) 残り物を犬にあげるのですね 一皿ずつ取り分けるその量も 重要な人が量が多いのだそうです
「scalco」という役が バンケットプロデューサーのようなもので メニューを決めどこで何を買うか 宴会の進行もすべて司ったそうです
「bottigliere」は飲み物係 ワイン貯蔵室(cantina)からワインを出して運び 容器に移しかえ テーブルに運びました
また 「coppiere」は酒つぎ係 つまりカップ(coppa)を扱うソムリエの役で 1400年代末に消えてしまい bottigliereが両方の役割を担うことになりました
また当時は小人たち(i nani)が道化師(buffoni)を演じたのですね
scalco (宴会プロデューサー) trinciante(肉を刻む人) coppiere (酒つぎ役)の3役が「口局(Uffici di bocca)」とされていました
* * *
マルティーノ・ダ・コモ(Martino da Como)は 後期中世からルネサンス期の橋渡しをした給仕係(scalco)
バルトロメオ・スカッピ(Bartolomeo Scappi/1500-1577)は イタリア料理の最初のマニュアルの本「Opera」を作り イタリアの厨房の道具もすべて表しました
そしていよいよ初のソムリエ(sommelier)とされる サンテ・ランチェーリオ(Sante Lancerio)(1500-1565)に入ります
← サンテ・ランチェーリオ
ルネサンスの晩餐会には もはやソムリエがおり そのトップはサンテ・ランチェーリオというローマ法王のbottigliere 兼 地理学者で 法王のワイン蔵を管理していました
← 講師から直接見せていただいた 彼がグイド・アスカーニオ・スフォルツァ枢機卿(cardinale)に宛てて書いた書簡集「I vini d'Italia」
彼はまたローマ法王に フランスやスペインやギリシャ等から贈られたワインの毒見役でもあったそうです 法王の旅行にもついてゆき 土地のぶどう畑やワインについて記録してゆきました
イタリアや地中海地方のブドウ品種の説明から 53もの郷土ワインの説明をして 白 赤 デザートワインの流れを初めて作ったのだそうです なので世界最初のソムリエと言ってよいでしょう
今のソムリエが使うのと同じ表現でワインを表現したとのことで 初めてアビナメント(abbinamento/ワインと料理を合わせる)をしたのですね
また 「ソムリエ(Sommelier)」という言葉の語源となるラテン語sagmaも紹介していただきました それがフランスに伝わったとのこと
1290年に初めてイタリアでソムリエという言葉が登場したそうです
cantiniere(ワイン貯蔵庫の管理係) の役も兼ねていたのだろうとのこと 1500年代のヴェネツィア(当時の世界で一番豊かな町)の方言でもsomoglierという言葉がありました キプロスから来たワインがヴェネツィアまで来てヨーロッパ(ボルドーやイギリス)にも広まったというお話もありました
← ソムリエの語源について
ワインの起源の古代ギリシャ ワインはどろどろで(denso) 味もあまりおいしくなく 水と割って はちみつを加えたりしながら飲んでいました テラコッタに入れてコルクで蓋をして布で縛っていたとのこと
ワインの調合管理者はギリシャ語でSymposiarcaと言いました
そして古代ローマでは 宗教行事と結びつき 聖なるワイン Merumという 水なしで飲むどろどろのワインがあり バッカスにささげたそうです アウストーレスというソムリエのような役があったそうです
そして 大カトー(Catone) ストラボン コルメラ 大プリニウス(Plinio Vecchio)等が ワインを扱う様々な本を書いたとのこと
長本氏によると 古代ローマには マヨネーズもプリンも生ハムも焼き菓子もあったのですって!! でも古代ローマ帝国の崩壊とともに イタリアから一度ワイン文化は消えたのだそうです... のちに修道院で受け継がれましたが 一度は消えたのだそうですね...
ワインの仕事をされている方はぜひ この500年前の初のソムリエ サンテ・ランチェリオに近づいてください とのことです
大変貴重な興味深いお話を聞けて 私も大満足です(*^-^*)
← ACCI Gusto会場
← ヨロ研(さいたまヨーロッパ野菜研究会)のブース
ACCI Gustoは こちら
* * *
昨年(2016)のACCIGUSTOのリポート「第6回イタリア料理専門展ACCI Gusto2016に行ってきました!今年のトピックはサルデーニャの旅!!(2016.11.17)@日本イタリア料理協会」は こちら
* この中で「Calle Crabittu」という 子ヤギが母ヤギの乳を飲んだすぐあとの胃をチーズにしたものについて触れられていますが 折しも今開催中の「世界イタリア料理週間」(2017.11.17~26)のチーズのセミナーでチーズの歴史を およびシンポジウム「食の伝統と革新、持続可能性、および栄養 ユネスコ無形文化遺産としての地中海式食事法と和食」(11/22)で 麹菌や発酵食品の研究について聞いてきましたので 世界イタリア料理週間の真っ最中でもあることですし 掲載させていただきました♪
私は明日(11/24)にも 「イタリア料理のアイデンティティ」の本の紹介セミナーに行ってきます
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