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日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

イタリアブックフェア2015「文学作品と移民」&「イタリア絵本の紙芝居イベント」リポート(2015.4.4)

2015年04月16日 | イタリアの本・絵本・雑誌
イタリアブックフェア2015「文学作品と移民」&「イタリア絵本の紙芝居イベント」に行ってきました(2015.4.4)@イタリア文化会館



イタリアブックフェアに足を伸ばした2日目のこの日には まずは翻訳者による本の紹介「文学作品が描く『イタリアと移民』」に行ってきました:

アマーラ・ラクース著『ヴィットーリオ広場のエレベーターをめぐる文明の衝突』/「マルコーニ大通りにおけるイスラム式離婚狂想曲」、ジョン・ファンテ著(『デイゴ・レッド』(以上未知谷)

イタリアの現代史は「移民」と深いかかわりを持っています。十九世紀末から二十世紀の半ばにかけては、アメリカ大陸や北ヨーロッパへたくさんのイタリア人が移住していきました。一方で、第二次大戦後に「奇跡の経済成長」を成しとげたイタリアは、アフリカ、東欧、南米やアジアから、移民を引きつける立場になりました。

イタリア系アメリカ人のジョン・ファンテや、アルジェリア系イタリア人のアマーラ・ラクースなどを中心に、「イタリアと移民」をめぐる文学作品の魅力をご紹介します。(イベント紹介文より)

    *      *      * 
 
皆もよく知っている「地球の歩き方 ローマ」のガイドブックの中に書かれた日本人旅行者の「テルミニ駅近くでは外国人の給仕係が多く イタリアではないようでなじめなかった」という投稿文の紹介から始まりました 

その瞬間 昨年秋に行ったナポリで 移民の一家が普通列車に乗って来た時の印象がよみがえりました...そして ベルリンのクロイツベルク地区に行った時に たくさんのトルコ人がまわりにいた時のちょっと緊張したあの記憶も...


この一冊目の本 『ヴィットーリオ広場のエレベーターをめぐる文明の衝突』(アマーラ・ラクース著)の舞台となったヴィットーリオ広場は テルミニ駅近くにあり いろんな言葉の看板が そしていろんな国籍の人たちがひしめいています 

このアマーラ・ラクースという作家はアルジェリア系イタリア人で 95年よりローマ在住ですが 幼少期よりアラビア語やフランス語が併存する多言語的な環境の中で暮らしていた作家で この小説を含めた3作を 最初はアラビア語で執筆し 自身の手によってイタリア語に執筆し直すというスタイルを取っているそうです

小説は ヴィットーリオ広場のアパートのエレベーターで起きた殺人事件をめぐる謎解きですが 殺人の嫌疑をかけられたアメデオが 実はイタリア人ではなく アメフド・サルミという名のアルジェリア人だったことが明らかになってゆきます 作家は実際にこのヴィットーリオ広場に住んでいたとのこと


マルコーニ大通りにおけるイスラム式離婚狂想曲』は マルコーニ大通りに暮らすアラビア語に堪能なシチリアの若者が イーサーという偽名でチュニジア人になりすまして テロリスト集団にスパイとして潜入する またもうひとりのエジプト人女性 ソフィアことサフィーヤとが出会い惹かれあうも ソフィアと同郷の夫サイードとの離婚騒動が描かれてゆくが 二重の名前に象徴されるアイデンティティのゆらぎや 西側社会とのさまざまな確執などが描かれてゆきます 

この作品の中の「名前」に関する部分の朗読を聞き 国籍やイタリア生まれかイタリア語に堪能かどうかにかかわらず 名前を聞いた途端に 乗り越えることのできない境界が生まれる というくだりが印象的でした 

もうじき雨になる(Sta' per piovere)」という映画に出てくる 突然強制送還されることになって 「自分はイタリア人だ!」とマスコミに訴える主人公のアルジェリア系イタリア人青年の名前もサイードでしたっけ...(8th難民映画祭/2013より)


3冊目の作品『デイゴ・レッド』(ジョン・ファンテ著)のデイゴという言葉は ワップと並んで イタリア系移民に対する侮蔑的な言葉だったそうです 

この作家ジョン・ファンテはイタリア系移民の第二世代としてデンバーに生まれ これらの蔑称にまつわる記憶や体験が文学作品として結晶化したもので 19世紀末から20世紀前半にかけて ヨーロッパから大量の移民が米国に流入する中 イタリアからも500万人に近い移民が海を越えてわたってゆきました 

作品の中では アルゼンチンは憧れの移住先として描かれており それがやがて二十世紀末には経済状況が逆転し イタリアがアルゼンチンにとっての憧れの豊かな移住先となるという 逆転が起きました 

この本の中には当時の 貧しいイタリアから豊かなアルゼンチンに移住した時代の イタリア系アメリカ移民家族の悲喜こもごもがユーモラスに美しく描かれていて 文学作品における移民の生き生きとした姿が映し出されていることが 翻訳者の朗読により感じられた とても貴重な機会となりました

* ISTAT(イタリア政府中央統計局)によると 2011年現在 住民登録をした正規の移民だけでも460万人 総人口の7.5%に及ぶとのこと 

* 補足ですが ドイツは今後もっと多くの移民を受け入れないと少子化により国がたちゆかなくなる という主旨のニュースが Deutsce Welle(2015.3.27)の中にありました  
また やはり今のドイツでも移民作家・映画監督の活躍が目覚ましい時代を迎えています 

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そしてすぐに1階のエキシビションホールで行われた 「イタリア絵本の紙芝居イベント『絵のすきなライオン』」(ワールドライブラリーが出版したの紙芝居イベント イタリア語と日本語で上演 イタリア文化会館子供のためのイタリア語Il Girasoleとのコラボレーション)を聞きました 

イタリア語の回が上記のイベントと時間がかぶっており 日本語の回だけを聞きましたが 子どもの描いた絵が大好物のライオンと子供との駆け引きにハラハラドキドキ...絵もとてもステキで惹きこまれました 

 
* イタリアブックフェア2015 開催のお知らせは こちら(2015.3.27~4.11)@イタリア文化会館 桜とともに終わってしまいましたね...

* 貴重なイベントを開催してくださいましたイタリア文化会館様 掲載をご快諾いただきました 翻訳者の栗原俊秀様に心よりお礼申し上げます



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