太宰治の『人間失格』をベースにしつつ、それとはまったく違った小説『新・人間失格』を構想している。
一応、小説という形態で書こうとは思うが、もしかしたら哲学書ないし思想エッセイのようになるかもしれない。
その際、人類滅亡という契機が重要な媒介役となって、「人間失格」という概念が刷新される。
また、哲学者ハイデガーのUeber den Humanismus(『ヒューマニズムを超えて』)という思想も参照される。
また誰かが言った「ナチズムはヒューマニズムである」という意見も参照される。
我々はヒューマニズムを野放図に賛美し、人間の尊厳を声高に叫ぶ。
しかし、3.11や新型コロナウイルス・パンデミックその他の危機的出来事を思うと、人間様は何ら偉いところなどなく、自然の猛威に打ち砕かれそうである。
私は心の哲学、生命の哲学、自然哲学を専攻している。
また精神医学を長年勉強してきた。
その経歴からすると、人間には特異的な尊厳などなく、単なる生物種にすぎない、と明言できる。
人類はいつか滅亡する。
自然を支配し、ヒューマニズムを極限まで推し進めた罰として、滅亡するのである。
それゆえ「人間合格者」は害悪でしかない。
私は、太宰とともに人間失格者の方が神に近いことを暗示したい。
しかし、私は神を信じていない。
私は自然の大生命と生命の大いなる連鎖を信奉する根源的自然主義者である。
その観点から、自然災害その他による人類滅亡を顧慮した「新・人間失格」を書きたいのである。
これは太宰にはない思想契機であり、私は人間と自然の根源的合一を目指して人間失格者の意外な偉大さを暗示したいのである。