スズキRE-5は世界初のロータリーエンジン搭載のバイクでした。
ウェブ上にはいくつかのカタログや広告が載っていますが、それをピックアップしてみました。
まず、基本的なエンジンの内部構造を描いたものから。
なんかすごいですね。
これを1973年に発売したなんて。
とにかく機能美を感じます。
次に、車体とエンジンを合わせて表示した広告。
ドイツ語で書かれています。
ベンツとポルシェとBMW(英語でビーエムダブリュー、ドイツ語でベーエムベー)を生み出したメカ大国ドイツ人をも魅了した日本のスズキの技術なんです。
次に、諸部分の解説を載せた広告。
「新しいバイクの指標」と絶賛されています。
数々の四輪と二輪の名車を生み出したドイツのメーカー技術者にとってもRE-5のロータリーエンジンと車体諸部分は目を見張るものだったのです。
「来たるべき新バイクの時代の先駆け」として最高の賛辞をドイツの技術者から送られたRE-5でしたが、排ガス規制その他の事情により短命に終わり、後続モデルは現れませんでした。
つまり、この種でロータリーバイクは絶滅してしまったのです。
その後現れたスーパーバイクはどれも味がない画一的なレーサーまがいのフルカウルをつけた大型車ばかりでした。
そうした中でクラシックなバイクらしさを遺したモデルも多々ありました。
たとえば、カワサキW650とかヤマハSR400とかトライアンフとかハーレーとか。
しかし、そうした中でもRE-5は独特な典雅さと格調の高さを兼ね備えつつ、かつ時代を先取りする未来的な風貌をもっていたのです。
これこそ九鬼周造が『の構造』で表現した「粋(いき)」を示唆する、高度の機能美としての「美」なのです。
「地味派手の小粋さ」とか「wayout but classic」と表現される、あの「粋な美しさ」です。
まるで美人薄命の言葉のように、RE-5は短命に終わり、子孫を残さずにこの世を去りました。
花火のように一瞬のきらめきをバイク界に遺して、永遠の「瞬間の美」を演じたのです。
美しいままで死んだのです。
少しセンチメンタルになりましたが、中古車は、バカ高いけど手に入るので絶望するには至りません。
たとえば、このように状態のよいものが中古屋にいくつもあるのです。