岩波文庫版の『失われた時を求めて』(吉川一義訳)の第1巻を読み始めた。
数年前にちくま文庫の訳で読んだのだが、今度はこれで読む。
有名な、菩提樹のお茶にマドレーヌを浸して食べた時に突如蘇る記憶の箇所がとにかく問題だ。
冒頭の「眠られない夜」の話も興味深い。
混沌から突如秩序が出現するような、過去の記憶の再現。
失われた時、忘却されていた自己と世界の存在の真の意味が突如顕わとなるのである。
しかし、この膨大な小説を全部読もうとは思わない。
数年前と同じで第1巻のマドレーヌの箇所までと最終巻の「見いだされた時」のサンドイッチであろう。
あとは構想力、創作力を働かせて、次の著書『存在と時空』において自説を展開するための糧とするのみである。
私は学者の態度ではなく、一種の芸術家の態度で書きたいのだ。