いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

わが軍、わが闘争。 my army , my struggle of premier abe

2015-03-26 19:46:23 | 日記
 (1)自衛隊は「軍隊」かどうかの議論が政府官房長官と野党で白熱している。事の発端は安倍首相が20日の参院予算員会の答弁で自衛隊を「わが軍」と呼んだことが原因だった。安倍首相はすぐに「自衛隊」と言い直していた。

 安倍首相は憲法改正を目指して自衛隊を「国防軍」とする草案を検討していることもあり、安倍首相が「うっかり」と(あるいは意図的に)自衛隊を「わが軍」(my army)と呼ぶことがあることもこれまでの経緯からして考えられることだ。
 憲法改正による自衛隊の「国防軍」への改称、あるいは組織編成改組が日本の自衛隊にとってふさわしいのかの議論、判断は十分尽くさなければならないが、今回の安倍首相の「わが軍」発言はすぐに自衛隊と言い直しているのだから、これまでの国会答弁にもある間違い訂正ということでよかったのだ。

 (2)ところがこれに菅官房長官が「自衛隊は国際法上は軍隊に当たる」(報道)として意味不明(indistinct meaning)の釈明をして問題はないと説明している。
 日本国憲法は第9条で「戦力」を保持せずに「交戦権」を放棄しているわけだから、武器を使用して敵と戦う組織集団としての「軍隊」を持たないことになっているのは明白だ。

 官房長官が国の基本法(憲法)を超えて、概念論(conceptualism)としての「国際法」を持ち出して自衛隊も軍隊に当たると説明しても説得力はない。国際社会では日本の自衛隊は国際社会が認める個別的自衛権としての「戦力」からすでに「軍隊」だとの評価はあるが、抽象的な概念でのものだ。

 (3)国の基本法(憲法)を差し置いて抽象的な概念論で「軍隊」と決めつけても理解を得られない。野党が問題にすべきは、日本国憲法で戦力を保持せずに交戦権を放棄するとして軍隊を持たないことを明記している中で、安倍首相が国会答弁で自衛隊を「わが軍」という言葉を使った政治思想、理念だ。

 首相が自ら現憲法遵守(compliance)の精神を否定して、反して自らの保守的右寄り思想、理念で国の安全保障を考えていることが政治的に危険な問題だからだ。
 だから安倍首相は憲法改正を目指しているわけだが、それと首相としての現憲法のコンプライアンス精神とはもちろん別問題であり、そのあいまいさ(vagueness)の中での「憲法解釈の変更」による集団的自衛権の行使容認だった。

 (4)三島由紀夫は70年に憲法で否定された自衛隊の存在理由(軍隊ではないという)の「解消」、正当化のために彼なりの理念、哲学にもとづいて自衛隊にクーデター決起を促したわけだが、方法論(methodology)は別にしても憲法解釈、理念としてはわかりやすい筋の通ったものではあった。

 安倍首相は一国の首相でありながら国の安全保障という基本的重要政策について、あいまいでばくぜんとした理念で国の政策を自らの政治思想の方向性に向かわせていることが政治的に問題なのだ。

 (5)自衛隊の「わが軍」発言も既成事実化のために意図的に使うことだって考えられる。こういう問題(憲法解釈、改正)はやはり筋を通すことが肝要だ。
 自衛隊の文民統制も政府の自衛官の防衛官僚と対等関係に置く法改正による組織変更で揺らいでおり、安倍首相の「わが軍」発言は官房長官の国際法上は問題ない発言と相まって、政治の基本理念が都合よく「私物化」されて大きく揺らいでいる証しである。

 平和憲法にもとづくこの国の有り様について、よく考えてみなければならない事態だ。

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