こぶとりばばぁの鬼退治日記

ぶっそうな題名でスミマセン。

『だから、あなたも生きぬいて』大平光代著

2005-08-18 22:12:59 | ひとり言
『だから、あなたも生きぬいて』大平光代著(講談社)を読了。
子供にも読めるように漢字にルビがついている。いじめを苦にして割腹自殺未遂。非行。極道の妻になり、そして一転、司法試験を一発で合格。
もっといろんな複雑なことが絡み合っていただろうけど、さらっと簡潔にまとめられている。やっぱり中学生を対象に意識しているからか?それにしても根拠のないイジメに憤慨する。大平光代と私とはそんなに年齢差がない。あらためて陰湿なイジメに会わなかったことに感謝の念を覚える。もちろん、軽いイジメはされた。けれど、クラス中に、ということはなかった。イジメをされた方は、一生、心の傷として忘れられないけれど、イジメをした方は結構忘れていて、いい親になってたりして、世の中の不条理を感じないわけにはいかない。

私はおかげさまで不良と呼ばれることなく、学生時代を過ごしてきた。ひとえに、私が小心者だったおかげもある。けれど、ある出会いもあった。
中学1年の頃、父がどう言う知り合いなのかわからないけれど、暴力団組長の娘を我が家に引き取ったことがある。彼女は私より2つ年上。組長だったお父さんが亡くなったそうで、頼りない母親の元に置いておくのは危ぶまれた、と言うこと。詳しいことはわからない。でも彼女はお父さんッ子で、カセットテープにずーっと、
「パパ、おはよう」と、録音していたのを聞いたことがある。
彼女はいわゆる「札付きの不良」で、中学もろくに通っていなかった。でも歳の近い私にはとても優しくて、彼女の何処が「不良」なのかわからなかった。
ある日、彼女と一緒に夕暮れ、公園の脇を歩いていたときだった。子供だった私は、何の悪しぶれもなく、
「ねぇ、不良っていい?」
と彼女に聞いた。不良ってカッコいい、となんとなく思っていたのだ。
突然、彼女の顔つきが変わった。
「不良なんて、なーんにもいいことないんだからねッ!不良なんかになったら絶対だめよ!」
その剣幕に、私はびっくりして、おとなしく、「ハイ」と言うより他なかった。

しばらくして彼女は何処かに消えてしまった。子供だった私には何も話は伝わってこない。
まわりの大人達は、彼女と私が親しくしているのを見て、父に私まで不良になるんじゃないか、と言っていたようだった。私には「不良」になる要素が沢山あったから…。
私は違う意味で、不良になったようだけれど、いわゆる一般的な不良にはならなかった。

この本を読んで、彼女のことを思い出した。きっとこの空の下の何処かで、幸せにお母さんになっているだろうと、願う。