旅限無(りょげむ)

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そして誰もいなくなる? 其の八

2011-01-17 16:06:02 | 政治
■年明け早々に第二次改造内閣が誕生。こいつぁ春から縁起がいいわいなあ、と心底喜んでいる国民はほとんど居ないのではないかと思いましたら、内閣支持率が若干上昇したとの報道がありました。支持者・同情者からのお年玉みたいなものでしょうか?熱心に読んだ有権者にとっては既に紙くず同然となった選挙用『マニフェスト』ですが、どうやら改造内閣にとっては計り知れない重さを持った大荷物になっているようで、自民党在籍当時から増税論者として有名だった与謝野さんを引っ張り込んでの手早い組閣人事と相成りましたが、結果は賛否両論と言うよりも非難轟々のようですなあ。

■あちこちのテレビ局が新内閣の顔ぶれをパネルに貼り出して、あれこれ論評を加えておりましたが、改造内閣が発足したのが異例の仏滅だった!と早くも嫌な予感を煽り立てる意地の悪い論評も加わって、自ら仮免許から本免許に切り替えて張り切っている菅アルイミ首相の新たな門出はあまり目出度いものではない印象でありました。更に気になったのは1月14日午後零時52分から「新閣僚の呼び出し」が始まり、官邸内で事務的な打ち合わせが続いて午後6時から菅アルイミ首相の誰も聴いてくれない「記者会見」が開かれて実況放送され、初の閣僚会議の後、午後7時46分にはお決まりの「記念撮影」という流れが夜のニュースで形式的に紹介されたのでありました。

■しかし、午後3時27分に皇居で天皇陛下に「御報告」、引き続いて「認証式」が執り行われたのでありました。その間、約1時間半。第一次改造内閣が行なわれたのは2010年(平成22年)の9月17日でしたから、前回の認証式からたったの4箇月しか経っておりません。御高齢で健康に不安も囁かれる陛下にお出まし願っての「認証式」は、国事行為とは言っても各内閣の事情で急に決まることの多い内閣改造に付随した儀式ですから、出来れば午前中に「歌会始め」に御出席になった日の午後3時に行なうというのは、ちょっと迷惑な気もします。皇室軽視が目立つ民主党政権ですから、誰も気にしなかったのかも知れませんが……。

■因みに今年のお題は「葉」で、最年少で入選した兵庫県の中学3年生、大西春花さん(14)の作が菅アルイミ首相の改造後の記者会見の発言と重なって響きましたぞ。
「大丈夫」この言葉だけ言ふ君の不安を最初に気づいてあげたい
菅アルイミ首相は記者会見で性懲りも無く「最強」などという大仰な崖っぷちの表現を使っていたようですから、
「最強」この言葉だけ言う総理に不安を真摯に気付いて欲しい
とでも読み替えたくなったのでありました。

■第一次菅アルイミ改造内閣は「空き缶内閣」と悪口・陰口を叩かれていたものですが、実際に政府を動かしていたのは仙谷ノーコメント官房長官だというのは衆知の事実で、退任記者会見以降、マスコミに対する悪口をあちこちで言って歩いている模様であります。傍迷惑な「認証式」の2日前のことでありした……。1月12日の午前10時半から皇居・宮殿の「松の間」で催されたのが「講書始」という明治天皇以来の重要な行事で、皇族方や学術関係者と並んで閣僚も同席するのであります。今年は京都大学の立本成文名誉教授が「日本や東南アジアの国々が古くから海上交通によって交流し文明をつくりあげてきた歴史」を取り上げ、東京大学の佐々木毅名誉教授は「政治の精神」をテーマに話し、最後に京都大学の竹市雅俊名誉教授が「動物の細胞どうしを結び付けている「カドヘリン」という蛋白質が癌治療に利用できる」という話をしたそうです。

■3人の講義は正味40分ですが、両陛下は御着席になってから席を立つまでの50分間、決して椅子の背凭れに体を預けず、背筋をぴんと伸ばして微動だにせず熱心に講義に耳を傾けておられるのだそうです。その講書始めの儀の最中に、あろうことか仙谷ノーコメント官房長官は居眠りを始めて手にしていたレジュメをバサッと床に落としてしまい、講師の声だけが厳かに響く「松の間」の雰囲気を台無しにしてしまうという事件を起こしてしまったとか……。どんな謝罪や反省の言葉を両陛下に伝えたのかは存じませんが、最後に象徴的な椿事を起こしてしまったものであります。改造人事の構想も固まり、クラッシャー小沢の追い落とし・離党が見えて来たというので、何も知らない・何も出来ない首相の後見人という重責からも解放されると思った仙谷ノーコメント官房長官は、東大の佐々木毅名誉教授の語る「政治の精神」などは子守歌ぐらいにしか聞こえなかったのかも知れませんなあ。