旅限無(りょげむ)

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解散・解党・憲法改正 其の七

2010-09-27 15:48:58 | 外交・情勢(アジア)
■『日本新華僑報』の分析が続きます。

(4)中国政府は衝突事故を期に各国の態度を量った。米国は日本に肩入れすることなく、他の主要国及び東南アジア諸国も中国を批判することはなかった。逆に国家主権を守る中国の態度を称賛し、日本の振る舞いに対して疑念を抱いたほどだ。各国は明らかに中国を刺激することを避けている。もし軍を動員して尖閣問題を解決したとしても、各国の態度は変わらない。そのことがはっきりとした。 

■「中国の態度を称賛」した国の名前は寡聞にして存じませんが、援助を受けているアフリカの某国あたりのことでしょうか?まるで北朝鮮の宣伝報道みたいですが、「日本の振る舞いに疑念を抱いた」というのは、逮捕・拘留ではなく「処分保留」で「釈放」してしまったことであるなら、息を潜めて事態の推移を見つめていた関係諸国が呆れ返って「日本は何をやっているんだ?!」と返答不要の疑問を持ったという話ならば本当でしょう。

■「もし軍を動員して尖閣問題を解決したとしても……」の下りは、日本が世にも珍しい憲法を後生大事に守っていて「軍隊」を持っていない事を承知の上で書かれているのなら、チャイナが軍事的に尖閣諸島を占領して「専守防衛」の自衛隊を蹴散らしてしまっても大丈夫、という恐ろしい話なのでしょうなあ。もう憲法前文に書かれた「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」することがちょっと難しくなったと正直に表明しては如何でしょう?現場の海上保安庁の皆さんに外交問題の重荷まで押し付けるのも、もう限界ではないでしょうか?勿論、その後ろに控える海上自衛隊も手枷足枷で身動きが取れずにいるのも実に変な話です。


5)衝突事故は北朝鮮情勢の緊張緩和をもたらした。哨戒艦沈没事故以後、米韓は頻繁に合同軍事演習を繰り返している。中国は米韓を刺激することを避けてきたが、それは決して譲歩を意味したわけではない。衝突事故を通じて米国の注意をひきつけることで、朝鮮半島の安定と北朝鮮労働党代表者会の開催を有利にする効果があった。
以上の通り、今回の衝突事故は一石二鳥どころか、一石五鳥という大きな成果をもたらし、中国の国家利益保持に貢献した。
2010年9月23日 Record China 

■北朝鮮が「代表者会」を開催できないのは、将軍様の病状が悪化して突発的な椿事や事件が起きる惧れがあるとか、噂される世襲候補が若過ぎたり別の候補も完全に消えたというわけでもないとか、今年の大洪水が独裁体制の崩壊の引き金になりそうだとか、可哀想な国内事情があってのことだと言われていますし、米韓両国の合同軍事演習も軍部の暴発を牽制するのが目的で代表者会議の開催を妨害するためではないでしょう。こんな牽強付会・我田引水の分析で恩を着せられては北朝鮮も不愉快でしょうなあ。

■9月24日に香港の政治学者、林泉忠という人が「日本の民主党は対中政策を転換させたのか?」と題した記事をブログサイトに発表したそうです。/font>

……事件前に公表された2010年度版防衛白書で日本は中国を仮想敵国と明確に位置付け、事件後に発足した菅直人首相の改造内閣では対中強硬派の前原誠司氏が外務大臣に任命された。民主党は対中政策を転換させたのか?その背景とは?中国はどのように対応すれば良いのか。…… 

■代表時代に「現実的な脅威だ」と名指しして来た相手ですから、懸念する気持ちも分かりますが、元々、寄せ集めの民主党政権に「転換させる」ほどの外交政策があったとは思えないのですが……。前の代表・首相が13年も掛けてまとめた普天間基地の移設問題を「最低でも県外!」と向こう見ずな寝言で大混乱させてしまったのは日米同盟を「転換」させ兼ねない騒動ではありましたが、挙党一致で寝言を実現しようという動きは見えず、最後には「公約ではない」などと言いだしっぺの首相本人が尻に帆掛けて敵前逃亡したのでしたなあ。

■今年度の『防衛白書』に関しては、チャイナが目くじら立てて怒って見せなくても竹島問題への言及があるのを嫌って、お詫び作文を用意していた仙谷官房長官が公表の日程を遅らせて韓国に気遣ってみせた事で、北方領土問題で攻められているロシアが日本政府のダブル・スタンダードを言い立てて来るぞ!と休職外交官の佐藤勝さんが警告を発していましたが、実行支配された竹島を譲るのなら東シナ海は俺のものにできるぜ!とチャイナが思わない方が不思議でしょう。仙谷さんは後に「欠地王」ならぬ「欠地官房長官」として歴史に残る可能性がありますなあ。


中国がこれほど厳しい対日報復措置をとった理由は、
▽日本に最大レベルの警告を発するため。東シナ海ガス田問題にも波及することを恐れた
▽防衛白書で中国を仮想敵国としたことで、両国の戦略的互恵関係の構築が頓挫した
▽米国が中立の立場を止め、日米で年内に共同統合演習として「離島奪還」訓練を行うこと
▽菅改造内閣で「親米反中」の前原外相が就任したこと―の4点だ。 

■本来ならば尖閣諸島の領有と国際海洋法に基づくEEZの設定問題は同じ根っこから生え出しているものでしょうから、日本側が尖閣とガス田を一括して安全保障問題の最重課題にしてしまうと、昔懐かしい帝国主義時代かもっと昔の春秋戦国時代に逆戻りして、終戦の誓いをした日本も冷戦構造の崩壊に対応して安全保障政策を大転換させずに怠けていたことを悔いて、新しい時代の「戦争」に対応できるように変身してしまったらどうしよう?と「仮想敵国」ならば心配するでしょうなあ。

解散・解党・憲法改正 其の六

2010-09-27 15:48:42 | 外交・情勢(アジア)
■さらに「日中関係全般に影響が及ばないよう戦略的互恵関係という観点から、中国側が冷静かつ慎重に対応することを期待する」とも付け加えて違法行為を調べて裁く司法権は日本側にあるのだから「冷静かつ慎重に対応」しなさいよ、と至極真っ当なことを言っておりました。ただ、逮捕の2日後、10日の金曜日に楊潔チー外相の抗議を皮切りに5回も呼び出しに応じる必要があったのかどうか、この点は疑問が残ります。しかし、結果的に丹羽大使は日本政府から梯子を外されてしまったことになりますから、今後の仕事に支障が出るでしょうなあ。

検察幹部も「外務省から、起訴した場合の日中関係への影響などについて意見を求められた」と話し、双方で早い段階からやりとりをしていたことがわかる。その際、起訴に向けた表立った異論はそうなかったとみられる。政府内に「迷い」が生じたのは、やはり19日に船長の拘置延長が決まった後だったようだ。船長釈放は、結果として日米首脳会談直後というタイミングになった。このため、「米国からこれ以上の日中関係悪化について、いいかげんにしろ、と圧力がかかったのでは」との指摘すら出ている。 

■元々、挙党一致の安全保障政策を持たない民主党政権ですから、出だしは「あるべき」理想論を振りかざして勇ましく一歩を踏み出して、あちこちから批判や疑問が出て来たら対応不能になって右顧左眄、ゴールどころか落とし所さえ見つからずに尻尾を巻いて「無かったこと」にしてほっ被り、何故か衆議院は解散しないことだけは挙党一致で決まっているらしいので、行き詰ったらまたぞろ代表の首を挿げ替えて凌ぐことになるのか?今回は仙谷官房長官が男気を示してすべてを背負って事を収めるのか?でも、「検察が決めたこと」と既に丸投げしてしまっていますなあ。


政府・民主党内でも、官邸の判断に対する評価は分かれる。「中国ではスパイ容疑は最悪、死刑が適用される。4人の人命がかかっていた」との危機感から理解を示す声がある一方、「レアアース問題は、世界貿易機関(WTO)に提訴すれば中国は負ける。ごり押しすれば勝てる、と中国にまた思わせただけだ」といった批判も多い。「菅も仙谷も、外交なんて全くの門外漢だ。恫喝され、慌てふためいて釈放しただけ。中国は、日本は脅せば譲る、とまた自信を持って無理難題を言う。他のアジアの国々もがっかりする」。党幹部はうめいた。
2010年9月25日 読売新聞 

■菅政権を「恫喝」したのは北京政府だけではなく、日本の財界からも「大切なお客様」を失うことを恐れて司法権を放棄して外交政策を捻じ曲げても平気という無責任な声が押し寄せていたとか……。


2010年9月23日、日本華字紙・日本新華僑報は、尖閣事件の対応で中国は初めて大国としての姿を見せたと伝えた。以下はその抄訳。……問題を子細に見ていけば、漁船衝突事故は中国海軍の遠洋展開に向けてのシグナルであった。日本人は完全に中国の術策にはまり、振りまわされただけだ。……
(1)尖閣諸島付近での衝突事故や拘束は今回が初めてではない。従来、中国は日中関係の大局を守る立場から大事件にはしないでいた。今回は5度にわたり日本大使を召喚するなど、中国外交史上空前の強硬な対応を見せた。
(2)大一統(領土の統一)の伝統に基づく、中国の領土保持を重視する考えは他国には理解しがたいものかもしれない。近年の国力増強に伴い、中国は核心的利益をさらに重視するようになった。その範囲はすでに台湾、チベットを超えている。
(3)北朝鮮の核、東シナ海及び南シナ海、中印国境の領有権など中国外交はいくつかの問題を抱えている。国民の不満をどうにかして解き放つ必要があった。日本を相手とする東シナ海問題が中国にとって最も有利なものだった。台湾問題の解決にも有利に働く。漁船衝突事故以後、中国と台湾は合同の軍事演習を実施。軍事分野の信頼性確立に重要な一歩を踏み出した。 

■(3)に出ている「合同軍事演習」は本当のことで、9月16日の午前、廈門(アモイ)・金門島の周辺で実施された救助活動を想定した陸・海・空軍が参加して合同演習が行われています。これは史上初のことで一部では「快挙だ!」との声も出ているほどだそうですが、目的は「救助活動」ですから参加したのは大陸の主要船舶9隻とヘリコプターが2機で、台湾は主要船舶5隻とヘリコプター1機という小規模なものだったそうです。日本に拿捕された両国の漁船を軍事力で奪還する演習ではないので誤解のないように……。

■「台湾・チベット」を完全に取り込んでしまったような話には強い違和感を覚えます。ぶっ壊れるかも知れない北朝鮮は日本にとっても大問題ですが、「南シナ海」問題はアセアン諸国、「中印国境」問題はインド、どちらも日本が積極的に一定の関与をしておくべきテーマではなかったのか?これは長過ぎた自民党時代の負の遺産と言えましょうが、政権交代後の民主党政権は負の遺産を何倍にも大きくしているようなものですから、大規模な政界再編による政権交代が急がれましょう。

解散・解党・憲法改正 其の伍

2010-09-27 09:19:58 | 外交・情勢(アジア)
■仙谷内閣をベースに論功行賞人事と菅アルイミ首相の情実人事を組み合わせた奇怪な新内閣には、お赤崎トミ子参院議員の国家公安委員長就任という別の時限爆弾も仕込まれているのが心配であります。海上の次は陸上で日本の治安や国益が失われてしまうと危惧する声が出ておりますぞ!『週刊新潮』9月30日号には慰安婦問題にも詳しい現代史家の秦泰彦さんが韓国で行われていた通称「水曜デモ」に2参加した前科を持つ岡崎議員について「……直接、大使と話せるのに、それもせずに元慰安婦と一緒になって自国の大使館に向かって拳を振り上げるなんて……」と嘆息をつき、初代内閣安全保障室長の佐々淳行さんも「……命がけで日本国民を守っている全国25万人の警察官の士気は低下してしまいます」と警鐘を乱打しているという記事が掲載されております。

■海での傍若無人な行為が黙認されるのなら、陸に上がって暴れられても相手によっては手を出せなくなるかも?特に日の丸と君が代が大嫌いな人らしいので、日本の何処かで暴力的な反日デモが起こったら、取り締まるどころか一緒になって騒ぎそうな人のようですから心配なことです。この人は仙谷官房長官とは旧社会党時代からの「盟友」だそうですから、菅アルイミ首相を「菅の野郎」と呼んで顎で使える官房長官が支配している内閣が何をするのか、非常に心配なところです。


民主党代表選での再選、内閣改造・党役員人事を経て、ようやく本格的な政権運営に着手したばかりの菅首相。「中国に譲歩した」と見られて再び世論の支持を失う失態は、できれば避けたかった。首相がそれでも「政治決断」を選択したのは、中国の反発の強さが当初の予想を超えていたためだ。19日の拘置延長決定後、中国は、20日に日本人4人を拘束、21日にはレアアース(希土類)の対日禁輸……。日本側はこれらを公表しなかった。だが、ニューヨークにいた温家宝首相は21日夜、在米中国人約400人が出席する会合で、船長釈放を要求する異例の動きに出た。これが、官邸内に広がりつつあった「このままではまずい」という思いを、政府の共通認識にまで押し上げるきっかけとなった。 

■衝突事件が発生してから逮捕に踏み切るまで13時間を要しているので、その舞台裏が徐々に明らかにされつつあります。週明けの週刊誌が競って内幕を暴いてくれるでしょうが、歴史的な意味を考えれば菅アルイミ内閣の支持率など比べる必要もないほどちっぽけな物だということだけは確かでしょうなあ。クラッシャー小沢を悪役に仕立て上げ、特異な換算方法によって「大差」で勝ったように報道したマスコミもありましたが、どこを見回してみても今の菅内閣を熱狂的に支持する人は居ないでしょうし、次の代表・首相候補と目される前原国交相や岡田幹事長が今回の腰砕け外交の惨劇に係わった以上は、民主党は「解党」に向かって転がり始めてたと考えるべきでしょう。

■連立相手と噂されて裏で接触交渉が続いているらしい公明党と社民党が、頼まれもしないのに「釈放」を認めて賛同していますから、部分連立で参議院を乗り切るどころか、国会が始まる前から一連托生で公明党は半永久的に与党に加わる可能性は消え、いよいよ社民党は新内閣に紛れ込んだ残党共々政治家としての命脈が切れてしまうかも?


「あそこまで強硬にやるとは……。海上保安庁の船長逮捕の方針にゴーサインを出した時、甘く見ていたかもしれない」。政府関係者は、そもそも「初動」に判断ミスがあった、と苦々しげに振り返る。菅政権の政治判断の背景には、郵便不正事件をめぐって大阪地検特捜部の主任検事が最高検に証拠隠滅容疑で21日に逮捕されたことで検察の威信が低下し、「今なら検察も言うことをきくだろう」との思惑が働いていたとの見方がある。実際、船長以外の船員と船を中国に帰すにあたっては、「外務省が検察にかなり強く働きかけていた」と証言する日中関係筋もいる。 

■衝突して来た漁船本体と乗組員14人を帰してしまったのは9月13日でした。衝突事件の証拠物件その物を手放したのですから、北京政府は問題はすぐにも解決すると判断したでしょう。何せその前日の12日(日曜日)午前零時には、外交を統括する戴秉国・国務委員(副首相級)が丹羽宇一郎・駐中国大使を中国外務省に呼び出して「重大な関心と厳正な立場」と脅しを掛けて、日本側に「賢明な政治決断」と乗組員と漁船の早期返還を45分間もねちねちと要求したのに対して、丹羽大使は日本政府の決意を信じて「今回の事件が漁船による違法操業に伴う公務執行妨害事件で厳正に国内法に基づき粛々と対応するとの立場は変わらない」と強調して立派に「領土問題は存在しない」との日本側の主張を伝える仕事をしていたのでした。

解散・解党・憲法改正 其の四

2010-09-27 06:38:39 | 外交・情勢(アジア)
■政府は汚れ役を検察に押し付け、政府のリーダーはニューヨークで報告だけを受けて誰が書いたか知らない作文を記者の前で読んでいたようですなあ。

中国外務省は25日、尖閣諸島沖での漁船衝突事件で処分保留のまま釈放された……船長が帰国した後、「日本側は船長らを違法に拘束し、中国の領土と主権、国民の人権を侵犯した」と強く抗議する声明を発表し、日本側に謝罪と賠償を求める方針を明らかにした。……「釣魚島と付属の島が中国固有の領土で、中国は争う余地のない主権を有している」と改めて強調。「日本側の取った司法措置はすべて違法で無効で、日本側はこの事件について中国側に謝罪と賠償をしなければならない」と指摘した。その上で「中日両国が近隣として、戦略的互恵関係を発展させる方向を堅持することは両国民の利益に合致する。双方が対話と協調を通じて両国間の問題を解決し、両国関係の大局を維持するという中国側の立場に変更はない」と強調した。 
9月25日 時事通信 

■「対話と協調」を一切拒否して言いたい放題・やりたい放題の嫌がらせをしておいて、御丁寧に「謝罪と賠償」まで要求しているのですから、国民としては静かにチャイナ商品のボイコット行動を密かに「粛々と」始めるしか意志表明の方法は無いかも知れません。何処かの国のように某大使館にデモを掛けて国旗を踏んだり焼いたりして怒声を張り上げるとか、公館や学校に石やパチンコ玉を投げ込んだりするより、早期の解散総選挙を期待して明確な安全保障政策を掲げ堂々と「憲法改正」に言及する政党の出現を待つ方がよろしいかと思います。これまで以上に買い物の際は商品の製造元表示をじっくり読むことにしましょう。

■初の国連総会に出席するというのに菅アルイミ首相は出発する時から元気がなく、タラップ上から振り返って振る手も縮んでいましたが、出発間際まで対北京政府の対応に苦慮していたことが原因だったようです。


「『超法規的措置』は、取れないのか」
22日の訪米を控えた菅首相は、周囲にいらだちをぶつけた。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、中国の対抗措置の報告が次々に上がってきていた。首相は「民主党には(中国で副首相級の)戴秉国(国務委員)と話せるやつもいない。だからこういうことになるんだ」とこぼした、と関係者は語る。首相とその周辺が中国人船長の扱いをめぐる「落としどころ」を本気で探り始めたのは、船長の拘置期限が延長された19日以降のことだ。この日を境に中国政府は、日本人4人を拘束し、レアアース(希土類)の対日輸出禁止の動きに出るなど、本格的な「報復カード」を相次いで切った。実際に「船長釈放」に動いたのは、仙谷官房長官と前原外相だったとされる。23日朝、ニューヨーク。日中関係の行方を懸念するクリントン米国務長官と向かい合った前原外相は、こう自信ありげに伝えた。
「まもなく解決しますから」
那覇地検が船長を釈放すると発表したのは、その半日余り後の日本時間24日午後2時半だった。東京・霞が関の海上保安庁に、寝耳に水の一報が入ったのは、そのわずか10分ほど前。 

■領土問題が火を噴く危険性が高い「逮捕」を決意しておいて、事が縺れたら検察に責任を押し付けて「釈放」させることが「国内法に従って粛々と進める」という意味だったのか?!そんな人物に外相などやらせて大丈夫なのでしょうか?海上保安庁の「ビデを観た」と前原前国交省がテレビカメラの前で語った時、民主党代表を自任せざるを得なくなった「偽メール事件」を思い出した人も多かったのではないでしょうか?完全なる偽物だったメールを見て「本物だ」と断言した時の前原代表の冷めた口調と今回の「証拠ビデオ」を有力な証拠だと言った時の口調がそっくりでしたから、トンデモない終わり方をするのではなかろうかと嫌な予感がしたものです。


「戦争になるよりはいい。このまま行けば、駐日大使の引き揚げ、国交断絶もありえた」――。首相に近い政府筋は24日夜、船長釈放に政治判断が動いたことを、周囲に苦しげに認めた。「那覇地検の判断なので、それを了としたい」仙谷官房長官は24日夕の記者会見で、ひたすら「地検の判断」を繰り返し、政治の介入を否定した。柳田法相もこの後すぐ、法務省で記者団を前に「法相として検察庁法14条に基づく指揮権を行使した事実はない」とのコメントを読み上げた。質問は一切受けつけなかった。…… 

■「内閣の一員」という立場を前面に押し立てれば、政治家個人の資質が暴露される危険は無くなり、官僚が卒なく上手に書き上げた「コメント」を読み上げて「質問は一切受けない」で任期を全うすれば済む、というのは自民党政権が有権者からそっぽを向かれ始めた頃の醜態を再現しているようなものです。三権分立を便利に使って「検察の判断」を金科玉条にするのなら、大阪地検の大失態にも目を瞑って組織防衛用に作られた不埒なシナリオを黙認するのでしょうか?検察と抱き合い心中を覚悟で法務省がバレバレの田舎芝居を続けるのなら日本の司法は本当に崩壊してしまいそうですなあ。

解散・解党・憲法改正 其の参

2010-09-27 06:38:24 | 外交・情勢(アジア)
■そもそも船長の逮捕を決定したのは外務大臣に横滑りする前の前原国交相だったと言われていますが、外相就任直前に現場の石垣島に行って衝突された巡視艇に乗り込んで証拠のビデオ映像もしっかり見て、本気で日本の国内法に従って「粛々と」事を進めるぞ!と明言したものでした。でも、逮捕決定当時から仙谷官房長官は反対の慎重姿勢を執っていたそうですから、八ッ場ダム問題・高速道路問題・JAL問題などなど多くの難問を取り散らかしたままで国交相のポストから引き剥がして外相に横滑りさせた仙谷人事も、今回の衝突事件が大きな要因になっているのだとしたら、何の知らない・何も出来ない菅アルイミ首相を横に措いて前原VS仙谷の対立抗争が表面化するかも? 

前原誠司外相は17日夜、外務省での就任記者会見で、東シナ海の天然ガス田「白樺」開発で中国が掘削に着手した場合の対応について「何らかの証拠が確認された場合は、しかるべき措置をとっていく」と述べ、中国側の動きをけん制した。ガス田施設では中国船が掘削作業用ドリルのような機材を運び込んだことが確認されているが、中国側は「修理のための作業」と説明している。前原外相は「しっかり事実確認をしていく」と述べたうえで、ガス田開発の条約締結交渉の早期再開を求めた。……
2010年9月18日 毎日新聞 

■「修理のための作業」の序でに掘削作業の準備も進めて、日本政府に文句を言われたら、今回の衝突・逮捕・釈放の屈辱を蒸し返してねちねちと日本側に責任を押し付けて本命だったガス田開発を強引に進めてしまうような気がしますなあ。いくら前原新外相が「しかるべき措置をとる」などと言っても、国内法に従って今回の事件を処理できなかった日本ですから、結局は何も出来ずに指をくわえて見ているだけの話に終わるようで、今から落胆する心の準備をしておかなければならないかも?
 

那覇地検が……中国人船長を処分保留で釈放する決定を公表したことに24日、与党・民主党からも失望や疑問の声が相次いだ。党代表選後、内閣支持率の上昇に勢いを得た菅首相だが、中国の圧力に屈服した格好の今回の決定は、今後の政権運営に大きな影響を与えそうだ。菅直人首相の求心力低下にもつながり、民主党代表選で首相に敗れたばかりの小沢一郎元幹事長の「復権」を早めることになるかもしれない。「内閣支持率はがた落ちでしょ。10ポイントは落ちるんじゃないか。いや、60%から40%に20ポイント落ちるかも。首相も仙谷由人官房長官も謙虚さが足りない」民主党中堅幹部は釈放決定のニュースを聞いて、天を仰いだ。 

■心優しく平和ボケ気味の日本国民が、一体、何を期待して菅アルイミ首相の政権を支持しているのか?と不思議に思っていたら、単に怪しい小沢金権政治になるよりは、少なくとも悪い事をしない(出来ない)印象のある菅アルイミ首相で我慢しようじゃないか、と無いもの強請りを諦めて妙に達観した民意が積み上がっていただけのようです。ただ総理大臣の椅子に1日でも長く座っていたいだけの菅アルイミ首相の周辺では、それぞれが長年持ち続けている「虚仮の一念」やら「三つ子の魂百まで」やら、マニフェストにも各種演説にも現れない奇怪な政治信条に基づいた言動が大小の摩擦や衝突を起こし続けているようです。


仙谷氏らは検察当局の判断だと強調するが、世論の不満や野党などの批判は「政治主導」を掲げる首相らに向かうのは必至だ。党内のリベラル系議員からは「中国も怒っているし、やむを得ない決定だ」(中堅)と擁護の声もあるが、首相支持派の中堅議員は「これは禍根を残す。首相や仙谷氏が決めたといわれても仕方ない」ともらした。松原仁衆院議員、金子洋一参院議員ら保守系有志5人は「法秩序を蹂躙する」と抗議し、釈放の撤回を求める緊急声明を出した。 

■何の実も無い不毛な内輪の痴話喧嘩でしかなかった代表選挙は、予想通りに民主党を政権政党として脱皮もさせず、鍛えることもなく終わったのでありました。元々、菅VS小沢の対決は最も生臭い政治家としての生き残りを懸けた権力闘争でしかありませんでしたから、綱領なき政党の代表を選ぶ儀式らしく内政・外交両分野で具体的なビジョンも法律や制度の設計図も提示されずに終わり、鳩山サセテイタダク内閣を吹っ飛ばした沖縄の基地移設問題の善後策も語られず、党の最大の弱点とされている安全保障政策は封印されたままで菅アルイミ内閣は「ほんと~に、あっりがとございま~す」の軽い再出発をしたのですから、逮捕・釈放のどたばた劇を演じるのは当然でありましょうなあ。


代表選で小沢氏を支持した平野博文前官房長官は「おかしい。勾留延長して途中で(釈放決定)というのは、どういう理由なのか、はっきり説明しないといけない。何のために延長したのか意味がよく分からない」と指摘した。同じく小沢氏を支持した山口壮政調筆頭副会長も「国益の観点から筋が通らない」と決定を批判した……小沢氏は24日昼、都内のホテルで開いた政治資金パーティーのあいさつでこう述べた。「今度こそしばらく静かにしている。ただ、天命が下ればその時はまた、命を懸けて国のためにがんばりたい」……小沢氏は「(代表選は)マスコミのネガティブキャンペーンなど逆風の中だった」とこぼしたが、支持者からは「次は勝てるぞ!」とのかけ声が飛んだ。パーティーの直後に流れた中国人船長釈放決定は、小沢氏にとって「天命」につながっていくかもしれないニュースといえる。昨年暮れに党所属議員140人以上の大訪中団を率いたような小沢氏が政権の責任ある立場にいれば「今回の事件に適切な対応をとったかは疑問」(菅支持の党幹部)だ。しかし、「一兵卒」として菅政権に距離を置いたことが結果的に、小沢氏に有利に働くことは十分あり得る。
2010年9月25日 産経新聞 

■誰も聞いてくれない演説をするために菅アルイミ首相は渡米中、就任直後の前原外相も張り切って後を追い、海上保安庁を管轄する馬淵新国交相は23日に奈良市で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の観光相会合に出席して、チャイナから出席した国家観光局の祝善忠副局長との「会談を辞退」「歓迎レセプションを欠席」と陰湿な嫌がらせ合戦を展開していたものの、前任の前原大臣の決意と意志は受け継いではいなかったようです。新任の柳田稔法相は検察特捜部の大不祥事に対応やら拉致被害者家族との面会などの合間を縫って仙谷官房長官に2回も呼び付けられ、伝家の宝刀「指揮権発動」を匂わされて慌てて検事総長に相談に走らされたとの噂もあって、24日の段階で「指揮権発動はない!」と必死に言い張っていたそうな。

■あの代表選挙の大騒ぎの中、人が変わったようににこにこ顔でテレビ局を渡り歩いて露出度を急に上げたクラッシャー小沢が、どこかの番組で「自分は中国の首脳に尖閣は日本の領土なんだ」としっかり直接言って来たんだ!と早口で話していた記憶があります。大訪中団を引き連れて北京に乗り込んだ姿が報道された時、「人民解放軍の野戦軍司令官」発言は聞きましたが、尖閣諸島の問題にも言及していた事はまったく知りませんでしたから、エッと驚いた記憶なので間違いはないと思います。もしも、代表選で勝っていたら、組閣前の衝突事件ですから前原国交相が同じ対応をしたでしょうが、さてさて「野戦軍司令官」はどんな姿勢を執ったことやら……。今更、火中の栗を拾わなくてよかった!と喜んでいるような側近ばかりなら、やはり首相にならなくて良かったと国民は改めて安堵すべきなのでしょうか?