旅限無(りょげむ)

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気が重い年明け 其の参

2010-01-11 14:02:03 | 外交・世界情勢全般
■日本の鳩山サセテイタダク首相の口から「友愛」という言葉が聞かれなくなったのはいつからでしょう?オバマ米大統領がノーベル平和賞の受賞会場で少々場違いな生々しい文言を含んだ演説をしてからなのか、それとも特例天皇会見の騒動が起こった時からだったのか?まあ、選挙の期間中も政権交代が実現した後も、閣僚や民主党議員の口から「友愛」という言葉が出たことはほとんど無かったようですから、首相が使わなくなったところで誰も困りはしないのでしょうが……。

……ラファの西にあるエジプトの港湾都市エル・アリッシュでは、英国を拠点とする国際的な市民団体「ビバ・パレスタイン」と機動隊が衝突。同団体によると55人が負傷した。エジプト当局者は毎日新聞の取材に対し、「5日夜に大型車両約60台のラファ通過を拒否した。交渉は一時決裂し、衝突に発展した」と話した。この団体には英下院議員ジョージ・ギャロウェイ氏も参加。救急車など約200台で医療物資などをガザに運搬するため、エル・アリッシュで待機中だった。団体側は結局、許可を得た約150台でガザ入りし、08年末のイスラエル軍のガザ攻撃以降最大規模の援助物資を運び込んだ。

■第一次世界大戦の前後、大英帝国が敵のオスマントルコを内部崩壊させるために出したバルフォア宣言とマクマホン宣言という二枚舌外交が現在のパレスチナ問題を産み落としてしまったという歴史がありますから、英国を中心とした救済活動に精を出すのは良いことではありましょう。少なくとも、謝罪するのしないのとちっとも咬み合わない議論をしているよりはずっと良いと思います。それに行き過ぎたイスラエル支持が目立ったブッシュ息子大統領時代が終わったことで、当時の英国政府がこれまでに見られなかった度を越した米国追従の姿勢を見せていた事の清算という意味もありそうです。

■結果的にブッシュ前政権がハマス支配を合法化してしまったことから、エジプトの態度が急速に硬化してしまったのは大きな誤算でしたなあ。 


ガザ地区への国際支援活動に対し、エジプト政府は極めて神経をとがらせている。ハマスはエジプトで非合法化されている事実上の最大野党「ムスリム同胞団」と関係が深く、ガザ支援がエジプトの国内政治にも影響を与えかねないからだ。一方で、エジプト政府の対応は、イスラエル支配下にあるパレスチナ自治区への支援拒否とも受け止められかねない。反イスラエル感情の強いアラブ諸国から反発を招くことも考えられ、エジプト当局は微妙なかじ取りを求められている。
1月7日 毎日新聞

■オバマ政権は「ブッシュとは違う」ことを世界に示すためにも、パレスチナ問題に積極的に取り組む姿勢を見せ始めたようですから、エジプトが上手に新しい波に乗って再び中東の調停役として活躍できるようになって欲しいなあ、と蔭ながら祈っております。何せアラビア半島をぐるりと取り囲む形でアルカーイダ系のテロ組織が続々と出現している現状ですから、スエズ運河とペルシア湾とが同時に緊張したりしますと世界の物流が大混乱に陥りますからなあ。


ロイター通信によると、イエメン政府は国際テロ組織アルカイダ掃討作戦の一環で、中部シャブワ、西部マリブと南部アビヤンの3州に数千人規模の軍部隊を派遣した。……イエメンを拠点とする「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)が犯行声明を出した米ノースウエスト機爆破未遂事件を受け、米国や英国がテロ対策支援の強化を表明する中、イエメン政府も掃討に本腰を入れ始めている。部隊が派遣された3州はアルカイダの勢力が強いとされる。イエメン軍は12月下旬にアビヤン州やシャブワ州でAQAP幹部の会合などを空爆するなどし、60人以上を殺害した。作戦には米国の情報、装備などでの支援があるとされる。イエメン当局は4日にも首都サヌアの北方アルハブ地区でアルカイダ幹部を標的に掃討作戦を実施。……
1月6日 毎日新聞

■決して米軍が表舞台には出ないようにとの合意があるようですが、そもそもアフガニスタンでは米国CIAの良きパートナーだったビン・ラーディンが過激な反米活動家に変身した原因がクウェート侵攻時に米軍が軍事基地を置いたことだったのですから、イエメン人全体がテロ組織の支持者にしないためには細心の注意が必要でありましょう。でも、イエメン政府を手本にして鳩山サセテイタダク首相が「常駐なき安保」を持ち出したりしては行けませんぞ。

小沢劇場は毎日開演中 其の六

2010-01-11 10:31:12 | 政治
■「其の伍」の記事が続きます。

李明博大統領は昨年9月、日韓のメディアの共同インタビューに「併合百年」問題に絡めて、「(天皇陛下訪韓は)両国関係の距離感をなくし、終止符を打つという意味もある」と述べた。韓国側は天皇陛下訪韓を「歴史清算」と位置づけており、訪韓とはすなわち天皇陛下からの植民地支配への「謝罪」を期待している。日本側は「謝罪のための訪韓はあり得ないこと。まさに天皇陛下の政治利用そのもの」(韓国研究者)と受け止められた。韓国側の有識者からも「併合百年(の訪韓)より、翌年か2年後のほうが未来志向でよいのではないか」(元外交官)との意見が出たほどだ。結局、首脳外交でも9月末の日韓首脳会談(米ニューヨーク)、10月の鳩山首相訪韓でいずれも鳩山首相がやんわり固辞したことで、韓国側の期待も沈静化の方向だった。ところが、12月中旬に訪韓した小沢氏は共同記者会見の席で「韓国のみなさんが受け入れ、歓迎してくださるなら結構なことだ」と語った。問題を日本側から蒸し返した格好だ。

■日本での選挙をチベットやウイグルを蹂躙した「人民解放戦争」と重ね合わせて御追従の道具にするくらいは政治家個人の資質と歴史センスの程度を測る逸話として聞き流しも出来るでしょうが、ここまで国の外交を好き放題に引き回すような言動となりますと、いつぞや金丸某が北朝鮮の平壌で勝手に男泣きして外務大臣でもなく閣僚でさえないのに「戦後保障」まで口走った姿を思い出してしまうのですが……。


韓国政府は、1910年の日韓併合条約を、1905年の第二次日韓協約で外交権を奪ったのちの軍事的抑圧と脅迫による強制的な侵略と主張、国際条約としての「不法性」を主張してきた。日本政府は国際法として合法との立場だ。当時、両国間に軍事力、国力の差はあったが、併合条約は国家代表を脅迫して強制したものではなく、周辺国もこれを認めており、あきらかに国際法として有効としてきた。この合法・不法論は、日韓の歴史共同研究の主要テーマともなり、長年の「日韓歴史論争」の根幹のひとつだ。

■食うか食われるかの帝国主義戦争の最中に起こった事を、後知恵の理屈で掻き回しても大して実りのある話にはならないでしょう。日本側としても、感情的になって「それならロシアに併合された方が良かったのか?」などと詰まらない反論などしない方がよいでしょう。鉛筆一本で国境線が決められ、欧州列強が各地の文化も歴史も無視して恣意的に地域をくっ付けたり切り分けたりしていた時代の話ですし、ずっと歴史を遡れば大唐帝国時代の新羅で起こった人名の大変化やらモンゴル帝国時代から始まった肉食文化など、大変な歴史を生き延びて来た半島の長い歴史があるのですから、なかなか先の敗戦を総括できずに苦労している日本の弱みに付け込むようなことは仕掛けない方がお互いのためだと思うのですが、まあ、その辺も独特な歴史観を持っているらしいクラッシャー小沢には一家言あるのでしょうが……。


さきの中国の習近平国家副主席の特別会見でもみせた天皇陛下にかかわる小沢氏の介入は危ういにおいが漂う。訪韓問題が併合百年に絡むとなれば、韓国側の「併合不法論」の歴史認識を勇気付けるのは間違いない。訪韓自体の実現性は、国内世論や具体的な準備などからゼロに近い。だが、小沢氏の真意には不透明さがぬぐえない。……

■小沢流の「天皇観」については幾つも考察や批判の文章が発表されているようですが、宮内庁の官僚との口喧嘩に関しては小沢幹事長に分があるとしても、内閣と天皇との関係についての小沢流解釈に対しては概ね批判する声が多いようです。「30日ルールなんてものは誰が作ったんだっちゅうの?!」と言った時の口ぶりで「併合合法論なんて誰が言ってんだっちゅうの?!」とやられたら大変な騒ぎになるかも知れませんぞ。


……日韓関係は、支持率を50%台に上昇させて安定度を増した李明博政権が対日関係を重視しているため、安定した状態が続いており、今年前半ではシャトル外交で李大統領の来日が課題。その際、国賓、公賓となれば天皇陛下との会見も実現する。しかし一方で民族感情の高まる時期だけに、「2010年の日韓関係は要注意。何が起きても不思議ではない」と外交筋は注意深い配慮の必要性を強調する。

■先の特例天皇会見が実現してしまった限りは、天皇陛下が返礼として訪中しなければならないことになる、と心配する声が出ておりましたが、韓国現地で天皇の御訪問を推奨しておいてから次に日本で李大統領の国賓級訪日をどんどん進めてしまおうと小沢幹事長は考えているのかも知れませんが、民主党内に誰も止める人は居ないのでしょうか?小沢外交が暴走し小沢予算で国債が暴落しても、悪いのは○○首相だ!と決め付けて首相の首を挿げ替え始めたりすれば、小沢天下も先は短いかも知れませんなあ。

小沢劇場は毎日開演中 其の伍

2010-01-11 10:30:55 | 政治
公明党の山口那津男代表は10日、NHKの番組で、夏の参院選の対応について……公認候補を擁立しない選挙区では、民主党の候補を支援していく可能性があることを明らかにした。参院選後の民主党との連携も排除しない考えを示した。一方、資金管理団体「陸山会」の不明朗な資金操作疑惑が持たれている民主党の小沢一郎幹事長に対して「自身が捜査に協力し、説明責任を果たすべきだ。それができないならば通常国会で対応を検討していきたい」と述べた。偽装献金問題で元秘書が在宅起訴された鳩山由紀夫首相にも「首相の信頼が失われている。自ら政治責任を決断すべきだ、と強く訴えたい」と改めて辞任を求めた。
2010年1月10日 産経ニュース

■対小沢は「説明責任」で済むけれど、対鳩山となりますと一変して「政治責任」を取れ!と怒って見せる芸の細かさは、もう鳩山は終わりだよ、と誰かさんに耳打ちされているからなのでしょうか?既に選挙協力の相談もまとまっているようですし……。


民主党の渡部恒三元衆院副議長は10日、テレビ朝日番組に出演し……「去年、私は小沢君に党首の座は休んでほしいと言った。藤井君も同じ考えを言ったためちょっと恨まれた」と述べ、西松建設の献金事件に絡み党代表辞任を求めた渡部氏と藤井裕久前財務相に対して、小沢氏が怒っているとの見方を示した。そのうえで「だんだん忘れてほしいなあ。日本のために、民主党のために頑張ろうということでは共通しているから。もう去年のことは、小沢さん、忘れましょう!」と呼びかけた。渡部氏は「今、日本一の実力政治家になって小沢君が評価されているのは、あのとき党首の座を休んでくれたからだ。だから小沢君に私は感謝されていいと思ってる」とも述べた。辞意を示していた藤井氏から「心身ともに疲れてしまった」と電話で伝えられたことも明らかにした。
2010年1月10日 産経ニュース

■特例天皇会見の問題で党内で唯一人「陛下に申し訳ない」と言えた渡部副議長が、テレビ画面を通じて許しを乞うとは、いよいよ小沢裸の王様現象は深刻な状態になって行きそうな気配が濃厚であります。誰のノーと言わないばかりか、自重や反省を求める声も上げないようでは、お決まりの雲隠れと突然の変心が起こって民主党が一夜にして空中分解するような騒ぎになるかも?何より恐ろしいのは「日本一の実力政治家」が何を考えているか、さっぱり分からないことでありましょう。選挙のこと以外に何を考える必要があるんだ!と御本人に怒られてしまうかも知れませんが……。でも、選挙のための選挙に持ち込んだら、柳の下に集まった浮動票は散り散りになって何処かに流れて行ってしまうでしょうなあ。


日本が朝鮮半島を併合して百年(併合条約調印は8月22日)となる今年、2010年は、韓国の民族感情がいや応なくセンシティブになりそうだ。ところがこの機微な時期を前に、民主党の小沢一郎幹事長は訪韓の折などに天皇陛下の訪韓問題や永住外国人の地方参政権問題で独断的な発言を繰り返した。こうした小沢氏の「歴史観」は、両国がこれまで腐心し調整してきた歴史問題の均衡を崩しかねない。あるいは民主党政権が日本の一方的な「謝罪外交」を復活させる可能性を示唆しているのか。

■元旦に産経ニュースのネット上に久保田るり子が書いた論考を下敷きにして、少しでも「日本一の実力政治家」が考えている事を推測してみましょう。


……韓国政府は20年来、盧泰愚政権(1988~93年)時代から日本の天皇陛下の訪韓を招請しているが、日本は環境が整っていないとの判断から先送りしてきた。「環境」とは、両国間にくすぶる歴史認識問題や対日感情への配慮である小沢氏は小渕政権下の約9年前、野党自由党の党首として訪韓した際、韓国紙のインタビューにこの問題について……『金大中大統領に韓国民を代表して天皇を招待していただいた。実務作業を別にしても純粋に積極的に対処しなければならない。いったい日本は何を心配しているのだ。政界が決断できずにいる。決断をし責任をとればよい話。ところがいまだに主管の外務省に責任を負わせようとしているために問題が進まずにいる』(2000年2月13日付、朝鮮日報)。小沢氏の言葉に、歴史的観点から熟慮した跡は感じられない。

■先の特例天皇会見の折に垣間見えた小沢流の憲法解釈では宮内庁は内閣に対して絶対服従を強いられることになっていましたが、同時に進行していた大訪中団の動きからは外務省を単なる道具にして政治主導の外交を好き勝手に進めようという猛々しい決意が見られました。その後の予算編成では財務官僚の言いなりになっている!と藤井老大臣一人を睨みつけて吠え立てていたそうですから、たとて支離滅裂な内容であっても与党は自党のマニフェストに従って国家予算を自由に組めるのだ!というお手盛り政治の手法が垣間見えたりもしましたなあ。