■亀田一家の騒動は、ボクシング界だけに留まらず、多くの人達にいろいろな事を考えさせる効果をどんどん広げているようです。それにしても、テレビというメディアが持っている、否、持ってしまった影響力の大きさを改めて思います。「話題」「注目」ぐらいなら無視も出来ますが、「流行」という決め台詞を振り回されると、画面に大写しにされる被写体はすべて高度な商品価値を持つ化け物染みた存在になってしまいます。テレビが生み出すのは「流行」と「有名人」で、これが最も怪しく危険な物なのですが、何とも驚くほど多くの人達が従順に心と体を動かしてしまうようですなあ。
■「情報」という逃げ口を見つけたテレビは、だれにでも見分けがつけられる「宣伝枠」を融解させて番組自体を巧みに宣伝媒体に変えてしまったようです。元々、世相を映し出す「流行」がリアル・タイムに報道できるような物ではないはずで、歴史研究者などが情報を集めて分析した後に回想形式で語られる種類の知識なのですが、「今、○○が大流行!」などという物言いは、ナチスのゲッペルスが喝破した「100回繰り返せばウソも本当になる」「大きなウソほど大衆は信じ込む」などの恐ろしい真実をなぞっている姿勢でしょう。
■「情報源」とマスコミ・メディアとの関係は、マスコミが情報源を探し出して追うものでしたが、これが「売り込み」「便乗」「ヤラセ」などの安易な商売根性が混ざりこむと簡単に逆転してしまうようです。マスコミが怠惰に待ちの姿勢になれば、猛烈な売り込み情報を選別する作業の精度を上げる努力が必要になるでしょうし、売り込む側は更にその上を行く騙しのテクニックを磨くでしょう。そこで情報を介した一種の「談合」が生まれる土壌が出来上がるというわけです。メディアが扱い易いように情報源・被写体が加工され演出され、偶然を装ったヤラセもちりばめられて……。偽造としか言いようのない「流行」が膨れ上がって日本中を席捲するようになれば、売り込んだ方も取り上げた方も万々歳!
■スポーツもテレビ業界にとっては有力な商品で、五輪大会ともなれば怪しげな人物が暗躍して莫大な裏金が動き回るのは衆知の事実。呑気な政治家は借金の山を築いても平気の平左ですが、収支の経営責任を負っているテレビ局となれば話は別で、何が何でも黒字に持って行こうと必死に努力するのは当然の事……しかし、先日の世界陸上を取り仕切ったTBSは大失敗をしてしまったと言われていますなあ。世界有数の選手を集めながら、客席はガラガラで噂によると1億円の出演料を得たメイン・キャスターの織田某君だけが大はしゃぎ……。あの段階でTBSはスポーツを醜悪な商売の面を隠し切れずに冒涜してしまったようなものなのですが、陸上でダメでも独占的に玩具にできる亀田一家という掌中の珠が有ったと言う話でしょう。防衛戦を「報道」したアナウンサーと解説者が一致協力して「亀田勝利」へと持ち込む努力を重ねて泥沼状態になって、これが視聴者の怒りを燃え上がらせて番組としては大いに盛り上がったとか……。視聴率至上主義とはこのような恐ろしい物なのですなあ。
■ボクシングに限定しても、法律で重量級の国内試合が認められていない日本では、素人目には迫力のない格闘技にならざるを得ないという厳しい現実が有ります。その種の制限の無いプロレスが熱狂的に好まれた時代があり、それを受け継ぐ無制限に近い何でも有りの総合格闘技が人気を博すのは、見世物商売である以上、破壊力と迫力、もっと露骨に言えば「生命の危険」を見物したいという悪趣味を満足させて需給バランスを取るようになるというわけでしょう。体重50キロ程度の選手が高度な防御技術を磨いて打ち合えば、劇的なノック・アウト場面などは期待できなくなります。そこでボクシングという競技自体にまったく別の新しい商品価値を付け加えて荒稼ぎしようと思うのが人情というもの……。
■亀田人気も、その反動の反亀田感情も、マスメディアによって作られた幻想から生まれて爆発したものでしょう。内藤チャンプが苦労の末に世界タイトルを奪取した事をまったく知らなかった人達が、初防衛戦だけを熱心に観戦するというのは、どう考えても不思議な話でしょう。例の世界陸上大会にしても同じことで、マラソンぐらいしか国民的な人気が出ない陸上で、大儲けを企んでも無理があります。亀田一家のような「物語」を作ろうにも出場する選手が多過ぎましたし、競技自体が単純な上に厳密なルールにガンジガラメになっているのが陸上競技ですから、「記録」に対する期待感だけを煽りに煽って見せるしか営業方法は無いでしょう。その結果が日本人選手にプレッシャーばかりを与えて視聴者にはまったく伝わらない過剰宣伝の空回りとなった次第。
■逆に、亀田騒動はTBSの思惑が図に当たったわけですが、それが予想以上に大きな影響力を生んでしまって亀田一家よりもテレビ局のアザトサばかりが目立ってしまうお粗末な結果になったようです。そもそも、亀田一家の「物語」を象徴していた一家で会場に乗り込み、ぴったりセコンドに着いているシーン自体、これが重大なルール違反だったなどと今頃になって言われても、俄(にわ)かボクシング・ファンは困ってしまいますなあ。
WBC世界フライ級王者・内藤大助(33=宮田)陣営が“亀田史郎氏外し”に乗り出す。内藤と宮田博行会長(40)が、15日に日本ボクシングコミッション(JBC)を訪れ、親族がセコンドに付くことを禁止したルールの徹底を求める要望書を提出することを決めた。将来的な亀田3兄弟の長男・興毅(20=協栄)との防衛戦を見据え、まずはセコンドからの史郎氏の“追放作戦”に打って出る。
■「WBCルール」の内容を放送局がまったく知らなかったなどという事は絶対に有りません。スポーツ担当の職員は徹底的に勉強しているのですから、最初から親子でセコンドに付いている画面には違和感が有ったはずです。「ルール遵守」と視聴率を天秤に掛けたら?答えは馬鹿馬鹿しいほど明らかです。
■「情報」という逃げ口を見つけたテレビは、だれにでも見分けがつけられる「宣伝枠」を融解させて番組自体を巧みに宣伝媒体に変えてしまったようです。元々、世相を映し出す「流行」がリアル・タイムに報道できるような物ではないはずで、歴史研究者などが情報を集めて分析した後に回想形式で語られる種類の知識なのですが、「今、○○が大流行!」などという物言いは、ナチスのゲッペルスが喝破した「100回繰り返せばウソも本当になる」「大きなウソほど大衆は信じ込む」などの恐ろしい真実をなぞっている姿勢でしょう。
■「情報源」とマスコミ・メディアとの関係は、マスコミが情報源を探し出して追うものでしたが、これが「売り込み」「便乗」「ヤラセ」などの安易な商売根性が混ざりこむと簡単に逆転してしまうようです。マスコミが怠惰に待ちの姿勢になれば、猛烈な売り込み情報を選別する作業の精度を上げる努力が必要になるでしょうし、売り込む側は更にその上を行く騙しのテクニックを磨くでしょう。そこで情報を介した一種の「談合」が生まれる土壌が出来上がるというわけです。メディアが扱い易いように情報源・被写体が加工され演出され、偶然を装ったヤラセもちりばめられて……。偽造としか言いようのない「流行」が膨れ上がって日本中を席捲するようになれば、売り込んだ方も取り上げた方も万々歳!
■スポーツもテレビ業界にとっては有力な商品で、五輪大会ともなれば怪しげな人物が暗躍して莫大な裏金が動き回るのは衆知の事実。呑気な政治家は借金の山を築いても平気の平左ですが、収支の経営責任を負っているテレビ局となれば話は別で、何が何でも黒字に持って行こうと必死に努力するのは当然の事……しかし、先日の世界陸上を取り仕切ったTBSは大失敗をしてしまったと言われていますなあ。世界有数の選手を集めながら、客席はガラガラで噂によると1億円の出演料を得たメイン・キャスターの織田某君だけが大はしゃぎ……。あの段階でTBSはスポーツを醜悪な商売の面を隠し切れずに冒涜してしまったようなものなのですが、陸上でダメでも独占的に玩具にできる亀田一家という掌中の珠が有ったと言う話でしょう。防衛戦を「報道」したアナウンサーと解説者が一致協力して「亀田勝利」へと持ち込む努力を重ねて泥沼状態になって、これが視聴者の怒りを燃え上がらせて番組としては大いに盛り上がったとか……。視聴率至上主義とはこのような恐ろしい物なのですなあ。
■ボクシングに限定しても、法律で重量級の国内試合が認められていない日本では、素人目には迫力のない格闘技にならざるを得ないという厳しい現実が有ります。その種の制限の無いプロレスが熱狂的に好まれた時代があり、それを受け継ぐ無制限に近い何でも有りの総合格闘技が人気を博すのは、見世物商売である以上、破壊力と迫力、もっと露骨に言えば「生命の危険」を見物したいという悪趣味を満足させて需給バランスを取るようになるというわけでしょう。体重50キロ程度の選手が高度な防御技術を磨いて打ち合えば、劇的なノック・アウト場面などは期待できなくなります。そこでボクシングという競技自体にまったく別の新しい商品価値を付け加えて荒稼ぎしようと思うのが人情というもの……。
■亀田人気も、その反動の反亀田感情も、マスメディアによって作られた幻想から生まれて爆発したものでしょう。内藤チャンプが苦労の末に世界タイトルを奪取した事をまったく知らなかった人達が、初防衛戦だけを熱心に観戦するというのは、どう考えても不思議な話でしょう。例の世界陸上大会にしても同じことで、マラソンぐらいしか国民的な人気が出ない陸上で、大儲けを企んでも無理があります。亀田一家のような「物語」を作ろうにも出場する選手が多過ぎましたし、競技自体が単純な上に厳密なルールにガンジガラメになっているのが陸上競技ですから、「記録」に対する期待感だけを煽りに煽って見せるしか営業方法は無いでしょう。その結果が日本人選手にプレッシャーばかりを与えて視聴者にはまったく伝わらない過剰宣伝の空回りとなった次第。
■逆に、亀田騒動はTBSの思惑が図に当たったわけですが、それが予想以上に大きな影響力を生んでしまって亀田一家よりもテレビ局のアザトサばかりが目立ってしまうお粗末な結果になったようです。そもそも、亀田一家の「物語」を象徴していた一家で会場に乗り込み、ぴったりセコンドに着いているシーン自体、これが重大なルール違反だったなどと今頃になって言われても、俄(にわ)かボクシング・ファンは困ってしまいますなあ。
WBC世界フライ級王者・内藤大助(33=宮田)陣営が“亀田史郎氏外し”に乗り出す。内藤と宮田博行会長(40)が、15日に日本ボクシングコミッション(JBC)を訪れ、親族がセコンドに付くことを禁止したルールの徹底を求める要望書を提出することを決めた。将来的な亀田3兄弟の長男・興毅(20=協栄)との防衛戦を見据え、まずはセコンドからの史郎氏の“追放作戦”に打って出る。
■「WBCルール」の内容を放送局がまったく知らなかったなどという事は絶対に有りません。スポーツ担当の職員は徹底的に勉強しているのですから、最初から親子でセコンドに付いている画面には違和感が有ったはずです。「ルール遵守」と視聴率を天秤に掛けたら?答えは馬鹿馬鹿しいほど明らかです。