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口蹄疫のワクチンについて

2010年05月22日 | 仕事・研究
先日の口蹄疫についての記事を読んでくださった方がたくさんいらっしゃったので、東大名誉教授の山内先生のこのページもぜひ読んでいただきたく、ご紹介しておきます。ちょっと字が多いし、専門用語も多いかもしれませんが、授業で学生にもいつも紹介するページです。特に今回、ワクチンについての記述を以下に引用させていただきます。

----ここから

しかし、現在のワクチンには次のようないくつかの問題があります。

(1)口蹄疫ウイルスには前に述べたように、7つの血清型があり、さら
に多くのサブタイプがあるため、ワクチンは流行株に適合しなければ
効果がありません。時折、これまでのワクチンが効果を示さない新しい
タイプのウイルスが出現することがあります。流行株に合致しないとワ
クチン効果が期待できない点はインフルエンザの場合と同様です。

(2)ワクチン接種した動物でも感染することがあります。その際には
症状はほとんど出ませんが、動物はキャリアーになってウイルスを放
出してほかの健康な動物に感染を広げることがあります。

(3)不活化が不十分でウイルスがワクチンの中に生き残ってしまうこ
とがあります。現実に1980年代にヨーロッパでこの事態が起きて、
それ以来、ヨーロッパでは口蹄疫ワクチンの使用は完全に中止されま
した。ただし、現在の品質管理システムでは、このような事態が起こる
ことはないと考えられます。

(4)もっとも重要な点は自然感染とワクチン接種の区別ができないこ
とです。そのため、本講座(96回)でご紹介したような血清調査による、
口蹄疫清浄国の判定ができなくなります。

----ここまで

こういった理由で、これまでワクチン接種の決断が遅れたということなのですが、一般の報道をみる限り、なかなかそこまできちんと説明がなされておらず、新聞の読者の感想などを読んでも、「説明が不十分で、わかりづらい」といった声が多いようです。

なお、山内先生の人獣共通感染症の講義録は、そのほかの「ヒトに影響のある動物の病気」についても大変詳しく、勉強になります。どのような場合でも、まず大切なのは正しい知識です。それなくして、正しい判断はできません。
コメント (3)
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