「日本文学の革命」の日々

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電子同人雑誌の可能性 266 「コンピュータの本質ー数学とは何か 13」

2023-12-20 04:43:21 | 日本文学の革命
「槍」によって狩りができるようになった人類はこの「槍」を武器にして外界へと立ち向かってゆく。外界に生息している獲物たちを探し求め、見つけ出し、追い詰め、そして槍を放って狩るのである。結果は狩れたか狩れなかったかのどちらかである。狩れたなら貴重な食料が手に入り自分や家族を養ってゆくことができる。狩れなかったら腹ペコのまま彷徨うことになり最後には死んでゆくだろう。まさに生か死か二者択一の真剣勝負であり、それは人間と外界との間の命を賭けた知恵比べなのである

狩りをする際に必要不可欠なのが外界に対する「計算」である。獲物となる動物とはどのようなものなのか、どのような特徴を持ちどのような性質があるのか、それを正確に認識することがまず第一である。その獲物はどのような行動パターンを持っているのか、いつ頃どのあたりに出没するのか、それを推測し推理し的中させることも狩りの成否を分ける。その獲物をどうすれば効果的に狩ることができるのか、実際の試行錯誤を通じて実証的に研究し、合理的で効果的な方法を発見してゆくことも極めて重要である。そして実際に槍を放って獲物を狩ってゆく。それは外界に働きかけてそこから自分の望むような成果を引き出してゆくことに他ならない。いわば外界を操作して、自分の思惑通りになるよう導いてゆくことなのである。このように狩りを成功させるためには、外界の対象に対して正確な認識を持ち、そのさまざまな性質を見抜き、推測し推理し、実証的な研究を積み重ねてゆき、最後に狩りの成功という形で「正解」を得てゆくという「計算」活動が必要なのである

狩りの対象が鹿の場合にはその並外れて敏感な感覚器官に用心しなければならない。目は360度見渡せるように顔の横に付いているし、レーダーのような耳を器用に動かしてどんな不審な物音も瞬時に聴き分けることができる。嗅覚も敏感なもので自分を襲おうとしてくる動物の匂いならたとえ姿が見えなくてもすぐさま嗅ぎつけることができる。それに対処するためには抜き足差し極力気配を消して近づかねばならないし、また匂いを嗅ぎつけられないよう風向きを計算して風下から迫る必要もある。また草を夢中になって食べている時のような隙のある機会を狙って、槍が届く範囲にまで慎重に近づいてゆくのである。ウサギの場合は逃げるのに特化したもの凄いジャンプ力のある脚を持っているし、また的が小さく周囲に溶け込めるような保護色も持っているので、逃げられたらほぼお終いである。しかし巣穴に用心深くこもっていることが多いので、落ちているフンなどから推測して巣穴を突き止めることができたら容易に狩ることができる。牛やバッファローは普段はおとなしい動物だが、怒らせたら角を突き立てて襲ってくることもある危険な動物である。また巨大で頑丈な肉体を持っているので槍一本だけで狩ることは難しい。それに対処するためには何人かでチームを結成し、集団で襲いかかって狩りをするのが効果的だし合理的だ。イノシシも逃げるよりはこちらに猪突猛進してくるような危険な動物だが、一方実に単純で鈍感な動物なので、落とし穴のような罠を仕掛けてそこに好物で誘導してゆけば面白いように落ちてくれるし、どんなに足掻こうがもう這いあがることもできないので「してやったり」と仕留めることができる

実際に槍を投げる時にも必要とされるのは「計算」である。槍を投げる時には獲物と自分との距離を正確に計測しなければならない。目測で瞬時に正確な距離を割り出し、その距離に届くように厳密な力加減で槍を放り投げるのである。数メートルあるいは数十センチずれただけで槍は目標を外してしまう。だからこれはまさに厳密な計算行為なのである。また槍は真っすぐ投げるよりも放物線で投げた方が重力が加わる分より遠くに飛ぶし威力も増す。重力という観念のなかった原初の人間たちもそのことに体感的に気づいていただろう。一見あらぬ方向の空中に投げて、槍が降下してゆくその先で獲物に激突させる、この放物線の軌道まで計算して槍を投げるのだから、これは現代の大砲やミサイルの精密な弾道計算と本質的には変わらないものだ。それほどの精密な計算能力が必要となるのだ

狩りには「計算」が不可欠であり、「計算」によって外界に立ち向かってゆく行為なのである。それは「原初の計算」だと言ってもいいだろう。その際「正解」とはもちろん外界から獲物を勝ち取ってくることである。見事な「計算」をして獲物を狩れたら生き延びられるし、間違った「計算」をして獲物を逃したらたちまち死が押し寄せてくる。まさに生死を賭けた「原初の計算」なのである


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