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『宮崎駿のドキュメンタリー』再放送禁止事件 1

2023-12-29 11:14:24 | 日本文学の革命
今月の16日土曜日にNHKの『プロフェッショナル』という番組で宮崎駿のドキュメンタリーを放送していた。これは『プロフェッショナル』恒例のシリーズで、スタジオジブリや宮崎駿のアトリエにテレビカメラが潜入して、アニメ制作の様子や宮崎駿の普段の姿を映し撮り、宮崎駿の言動をリアルにテレビで伝えてゆくという番組である。宮崎駿には世界中から毎日のように取材依頼が来るそうだが、カメラ嫌いの宮崎はそんな依頼に目を通すこともなく全て断ってしまうという。そんな中この『プロフェッショナル』の荒川という名の若手ディレクターにだけは「書生として来るのなら撮影を許可する」という条件で撮影を許したのである。もう20年近くも続いているシリーズであり、宮崎駿やスタジオジブリのリアルな日常を伝えてくれる貴重な番組だ

今回は宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』の制作現場に密着したドキュメンタリーとなっていた。この『君たちはどう生きるか』は賛否両論が渦巻き様々な解釈がなされている大変な問題作である。僕もあの中に出てくる「大叔父」とは「夏目漱石」であるという解釈を書いてみたが、実際のところどうなのだろうとこの番組を興味津々でメモまで書きながら見てみた

始まりは2016年の6月宮崎駿が新しい映画の企画書を書き上げたところからだった。先の引退宣言からわずか3年でまた新しい映画を作り始めたのである。「ジジイに怖いものなし」と言いながらも実に嬉しそうであった。次いで1年後の2017年5月の様子が映された。『スタジオジブリ物語』という鈴木敏夫プロデューサーが監修し『君たちはどう生きるか』と同時期に出版されたスタジオジブリの歴史を書いた本によると、この頃に一度は解散されたスタジオジブリの制作スタッフも本格的に再募集し始めたそうだ。絵コンテも半分近く出来たという。まず絵コンテを完成させ、それに基づいて本格的にアニメ化をしてゆくという制作手順になっているのだ

『スタジオジブリ物語』によるとこの頃宮崎駿は僕にとって実に興味深いイベントを開いている。2017年10月28日に早稲田大学の大隈記念講堂で宮崎駿は文学者の半藤一利と公開対談を行ったのだが、それはなんと新しく作られた「新宿区立漱石山房記念館」の開館イベントなのであった。早稲田からちょっと歩いた所にこの記念館は出来たのだが、その開館を祝うイベントとして開かれたのがこの公開対談なのであった。「漱石と日本、そして子供たちへ」という題で行われたものであった。この「漱石山房」は実際に漱石の家のあった跡地に作られたもので、元は団地と小さな記念公園だけがあった場所を新宿区が大々的に買い取って大きな記念館を建設したのである。僕も行ったことがあるが、最新の立派な記念館で、漱石の関連書物が立ち並び、漱石の書斎はもちろん家まで一部再現されており、「猫の墓」まで再現されていた。「猫カフェ」というオシャレなカフェもあった

宮崎駿はこの「漱石山房」の開館記念イベントで次回作のタイトルが『君たちはどう生きるか』であると明かしたのである。宮崎駿がまた何か作り始めたらしいということは知られていたが、タイトルを明かしたのはこの時が初めてだった。おそらくわざとこの機会を狙ってタイトルを発表したのだろう。もともと宮崎駿は夏目漱石に深い想いや関心を持っており(『崖の上のポニョ』の主人公「宗介」は漱石の『門』の主人公「宗助」から取ったものである。「宗助」は崖の下に住んでいたので『ポニョ』もはじめは『崖の下のポニョ』と題されていた)、その「漱石山房」の開館イベントで作品名を発表したのだからやはりこの『君たちはどう生きるか』と夏目漱石の関連を暗示させるものとなっている

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