JAZZ最中

考えてみればJAZZばかり聞いてきた。いまもJAZZ最中。

誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論  松本俊彦 著

2022-08-13 08:38:31 | 


どっかでレヴューされていて借りた本。副題からちょっと難しいかなとおもったけれどそうではなかった。

医学部を卒業した著者が、医局人事で臨みもしない依存症専門病院への移動を命じられる。依存症という知らない世界に投げ込むなど懲罰人事ではないかと思った。
それだからこんな感じでスタートする。

 そんな私が依存症病院に赴任し、多数の薬物依存症患者を治療しなければいけなくなったわけである。
 赴任初日、外来待合室を足早に横切る際、視野の隅に入った患者たちの断片的な映像は衝撃的で、そこが病院であることを忘れさせた。金色に染められ逆立てられた髪、半そでから突き出た上腕に描かれた刺青、モヒカン刈りとサングラス、花と眉、そして唇がピアスで貫通された顔面・・・・・。

氏が治療を通し、社会の病理を理解していくさまが描かれる半生記だった。こんなこと書いていいのかというような、見立てが出来ずに警察で首をくくった女性のおもいでとか、わからない、どうしようと悩む姿が氏の言葉で語られていく。

 患者たちの集会に無理やり参加させられた著者

 しかし衝撃はそれだけでは終わらなかった。・・・参加者たちたそれぞれ手をつないで大きな輪を作り(わけもわからぬまま、逃げ遅れた私は、その輪にまきこまれてしまった)、それから声を合わせて言葉を読み上げたのである。
 「神様、私にお与えください/変えられないものを受け入れる落ち着きを/変えられるものを変える勇気を/そして、その二つを見分ける賢さを」
 とても簡単な言葉だが、それがなぜか私の無防備な胸にもろに突き刺さったのだ。私は、自分が変えられないものを変えようとして一人で勝手におちこんでいたことを一瞬にして悟った。いうら監禁して両肩をつかんで揺すぶって説得しても、「好きなんのを嫌いにさせる」ことは出来ない。つまり、だれも人を変えることは出来ない。変えられるのは自分だけなのである・・・・。

お医者さんの本音がつづられていて、こういうお医者さんって信じられ、信頼できると思う。
まあ、この方の診察を受けることはまずないとは思うけど。




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