日本が消える日~ここまで進んだ中国の日本侵略~
韓国はなぜ「日本企業も基金を出して元徴用工を支援する」という提案をしてきたのかというと、私の推測ですがGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の絡みがあるのでしょう。
GSOMIAの期限の「11月23日午前零時」が迫っていますので、アメリカから「破棄は許されない」と圧力をかけられている中で、「もし日本が徴用工問題で譲歩すれば、GSOMIAの破棄を見直しても構わない」という名分を得ようとしていると思います。
確かに外交では目的を達成するためにいろいろなカードを出し引きしますので、韓国政府もそれをやろうとしているのでしょうが、私はそのような「ごね得」を許してはならないと思っています。
そもそも世の中には「正しいと信じて主張している人」と、「自分が間違っているのを分かっていながら主張している、いわゆるごねる人」が居ますが、「どちらが最後まで自己主張を続けるか」と聞くと、だいたい「正しいと信じて言っている人」と答えます。
皆さん「人は信念をもって行動するもの」と思っていますので、「そのとおり」と言いたいところですが実際は違います。「正しいと信念を持って言っている人」よりも「やましいと分かっていながら言っている人」の方が最後までごねるのです。
なぜならば、振り上げた拳を降ろせなくなるからです。国際社会では特にそうです。
そしてごねる人がどうするかというと、相手の弱点を見つけて争点を本筋からそらし、徹底的にそこを攻めてくるのです。
今韓国の文政権がやっているのはそういうことなのです。
彼らは徴用工問題で「自分たちが国と国との約束を反故にしていること」を知っています。2004年文大統領は盧武鉉政権の一員として、当時政権が出した「1965年の日韓請求権において、無償3億ドル、有償2憶ドルの経済協力の中に個人補償分が含まれている」という声明の草案を書いた本人のわけですから。
そして、ごねる人のセオリー通りに、韓国の地方裁判所長に過ぎなかった人を最高裁判所の長官に抜擢しておきながら、「徴用工問題については、韓国は三権分立であるので大法院(韓国の最高裁判所)の判決については、大統領であってもひっくり返すわけにはいかない」と言っているのです。
最初からシナリオができているのです。
これだけのはっきりした事実がありますので、徴用工問題に関する韓国側の提案は認めてはいけないと思いますが、この点、菅官房長官は適切に対応しており、記者会見で「文大統領がこう言ってます」と訊かれても「そんなことは韓国政府に聞いてくれ」で終わってしまっています。
「神対応」ならぬ「塩対応」と云われているそうです。塩は「しょっぱい」、「冷淡さ」を連想させますから。
とこらが、日本のメディアとなると対応が異なってきます。日本と韓国、そして中国の間で揉め事が起きると必ず向こう側に立って論陣を張る人たちがいるのです。
例えば韓国がGSOMIA破棄を表明した時に、各紙がどのように書いているかというと、産経新聞は「北朝鮮を喜ばせる愚挙」、読売新聞は「日米との安保協力を傷つけた」としているのに対して、朝日新聞は「対立拡大の連鎖を断て」と言っていますが、まやかしのようで、どちらに対して何を言っているのかよく分かりません。
微妙にあちらの側に立っているのでしょうか。毎日新聞は「対立の高次元化を憂うる」と、難しい表現を使っていますが、これもよく分かりません。
日経新聞は「日韓軍事協定破棄は安保の禍根を残す」と、やや長く説明調になっていますがまあまあでしょうか。
続いて「輸出の管理強化」についての各紙の報道を見ていきたいと思います。朝日、毎日、日経、ウォール・ストリート・ジャーナルなどは「自由貿易の原則に反する」として日本政府の対応を批判していますが、産経新聞は「不当を許さぬ国家の意思だ」というように政府の判断を支持しています。
今までは半導体の洗浄に使う「フッ化水素」、半導体の基盤に塗る「レジスト」、有機ELディスプレイの製造に使用する「フッ化ポリイミド」などは、韓国を信用して「ホワイト国」ということで、輸出手続きが簡単な「包括輸出許可」を認めていました。
段ボール箱でイメージすると、日本のメーカーから韓国へ輸出するときに「中を開けないでそのまま持って行って良いですよ」ということだったのですが、実は韓国に輸出したそれらの材料が、シリア、イランそして挙句の果ては北朝鮮で使われており、そのことをアメリカから教えられて対応を迫られたという事実があるのです。
産経新聞が「日本が行った輸出の管理強化は北朝鮮やテロ組織に拡散させないための措置」ということを記事で取り上げた、最近では珍しい産経の特ダネなのです。
ちなみに、読売新聞は「文政権は信頼に足る行動を取れ」ということでまあ良いのですが、朝日新聞は「報復を即時撤回せよ」、毎日新聞は「通商国家の利益を損ねる」、日経新聞は「元徴用工をめぐる対抗措置の応酬を自制せよ」となっており、自由貿易云々に加えて、日本が徴用工問題で報復したと言っているわけで、幾分かそのようなニュアンスはあるにしても誰も公式には認めていないのに、天下の大新聞が記事の見出しからこのように論じてくるのは如何なものかと私は思います。
一昨日、20カ国・地域国会議長会議が日本で開かれ、山東昭子参議院議長が会議前に韓国国会議長に対し、慰安婦問題に絡み譲位される前の上皇さまに謝罪を求める発言をしたことへの謝罪と撤回を求める書簡を送りました。私は外交というのはそれで良いと思います。
遠慮する必要などは全くないのです。
特に韓国人、中国人に対してはその方が話は通じやすいところがあります。
私は韓国出身の呉善花さんと親しくさせていただいていますが、以前「日本人はなぜこんなにも韓国人に甘いのか」という初めての本を出した時に、恐る恐る読書感想をお聞きしたら、「佐々木さんが一番甘い。もっと書くべきだ」と言われました。
日本人の場合は奥ゆかしい、悪く言えばお人よしで「一を言えば十を悟ってくれる」というところがありますが、呉善花さんの話では、韓国人というのは「十を言っても一しか分かってくれない」ので、「十も言ったら失礼かな」と思うぐらい言った方が良いということでした。
地理的に近く顔かたちも似ていますが、そういうところは確かに別人種だと思います。
中国人にいたっては、それに自己主張が加わります。
日本社会では自分が半歩下がれば相手も半歩下がり、一歩下がれば一歩下がるというように、お互いに落としどころを探り合って調整する、いわば「和をもって貴しとなす」の精神ですが、これは非常に良いところがある反面、国際社会でこれを行うと国益を著しく損ねるということがあるわけです。
よく「日本の常識は世界の非常識」とか「世界の常識は日本の非常識」と云われますが、国際スタンダードに合わせていくというのは非常に大事なことなのです。
一 日本の平和ボケの現状を憂うる ~我われが相手にしなければならない組織の実体~
韓国についての話は以上として、これから本題の中国についてお話ししたいと思います。
先週の土曜日に講演で札幌に行ってきました。
札幌はオリンピックのマラソン開催で話題になりましたが、今北海道では、何よりも中国の活動に注目しなければなりません。
先日、天皇陛下の「即位の礼」に参列した中国の王岐山国家副主席が北海道を視察しました。
習近平国家主席、李克強首相と並びビッグスリーの一角を占め、ほとんどの日程は非公式でオフレコということでしたが、鈴木直道北海道知事とは勿論会っています。
私はこの様子を見て正直、「王岐山氏がよく北海道に来れたものだ」と思いました。
皆さん、今年の9月に岩谷将(いわたに・のぶ)北海道大学教授が中国に身柄を拘束された事件はご承知と思いますが、理由も明らかにしないまま日本人の身柄を拘束している中国政府の高官が日本、しかも当の北海道にやって来るというのは如何なものでしょうか。
北海道は勿論、日本政府、外務省などはもっと抗議しなければいけません。
手前味噌になりますが、このことは産経新聞の特ダネとして新聞の一面トップで大きく報道しましたが、その前の日の夕方六時に、インターネットのニュースに掲載されました。
実は、私は岩谷教授とは知り合いの仲でして、今年も2月の雪まつりの時に会っています。
中国では外国人の行動を監視するのは常識ですので、彼も「中国に行くとあからさまな尾行が付く」と言っていました。プロの尾行は絶対バレないようにするのですが、警告というか嫌がらせにそうするのだそうです。
ただ彼は防衛研究所では日中戦争の戦史を専門にしており、インテリジェンスを扱っているとは思えず、しかも今は北海道大学に在籍していますから、どうしてそのような人の身柄を拘束したのか中国の狙いがよく分かりません。
今、日本と中国の関係は良好で、来春、習近平国家主席を国賓として日本に招くというのが政治の大きなテーマになっていますので、それまでには片は付くと思いますが、まさか事前解放による「訪日環境づくり」を意図的に演出したとも思えず、理解に苦しむところです。
いずれにしろこの件に関しては、日本政府、外務省は毅然とした態度で臨んでもらいたいと思います。
今の日本は確かに平和を享受していますが、どちらかと言えば、先人の遺産を食いつぶしているようなもので、我われは子や孫につけを残さないようにしているでしょうか。
国内でも首相官邸前には特定秘密保護法反対と言って集まってくる人たちがいます。
また、憲法改正反対という運動にしても、皆さまのように見識のある方はよく分かっていると思いますが、憲法9条に「戦争反対、戦力放棄」と書いておけば戦争が起きないと言うなら、9条の3項、4項に「台風来るな」、「津波来るな」と書いておけば良いではないでしょうか。
このような議論については、左翼の人たちは非常にうまいですから、まずは原則論をしっかりと通すことが大事です。
保守にもやや甘いというか弱点があって、反対運動で鳴り物を鳴らしたりアジ演説をしている人を見ると、何か人の良いおじさん、おばさんだったり、乳母車の主婦がやって来たりするので、世間的な庶民のような感じがしますが、あれはうまく利用されている人たちで、あのような人たちを見て「話せば一発で論破して終わりだ」などと軽く考えて舐めたりしたらいけません。
後ろには2重3重の黒幕が居るわけですから。
そもそも、本当のコアになっている左翼の人たちは絶対に表には出てこないのです。
彼らの組織はよくできていて、昔からよく云われる「タンチョウ鶴」の頭です。
非常に優秀な一握りのエリートだけが「赤い」のです。
そのようなコアは表に出ないで、コアを囲む取り巻き達、この人たちも知的レベルは高いものがあり、マスコミ、特にテレビなどに出てくるコメンテーターと云われる人たちでしょうか、実名は挙げませんが、よく番組で日本の社会を批判的に論調しています。
自分の所属している社会が気に入らないとか、自分の知名度を上げる手段に使えるとか、自己評価が高くて自分がマイノリティー扱いされているのが許せないとか、いろいろな理由があるのでしょう。
このように、我われが相手にしなければならない組織は「コアな人たち」、それを取り巻く「悪意のある知的レベルの高い人たち」、そして最も多く我われの目に留まる「反対運動をやっている人たち」から構成されているのです。
実際に反対運動をしている人たちは、表現は良くありませんが、知的レベルはそう高くなく、ただし正直者なのです。
よく繁華街でビラを配って憲法9条改正反対などと言っている人たちは皆、基本的に良い人なんだと思います。
憲法9条を改正したら戦争になってしまうと本気で信じているのです。
ただ利用されているだけなのです。そのような人ばかりを見て御しやすいと思っていたら我われ保守は足元をすくわれます。
絶えず相手となるコアな人たちが何を考えているかということを見ていかなければなりません。産経新聞の論説委員室でよく読まれているのは「赤旗」です。
二 日本を狙う中国の「一帯一路」北ルート構想 ~「北極政策白書」が明かす中国の野望~
今の日本の政界を見ると、安倍政権しか考えられないと私は思っています。
ロシアのプーチン大統領、習近平国家主席、金正恩朝鮮労働党委員長などをトップとする、いわばゴロツキ国家に囲まれ、韓国の文在寅大統領は北を向いていて、このような状況の中でまともにやれるのは安倍総理しかいないのです。
しかし、だからと言って安倍総理がすべて正しいということではありません。
私は不偏不党ではなく立ち位置ははっきりしていますので、親父に文句を言うのと同じで、安倍総理に対して「対中国に関してはちょっと前のめりなのではないですか」と言いたいのです。
このようなことは周りの国会議員の方とかはなかなか言いずらいと思いますので、私のようにほど良く距離を置いている者は「生意気だ」と言われるぐらいが丁度良いと思って、遠慮しないで言うようにしています。
首脳外交というのは我われ国民には分からない、それこそ専門家、担当記者ですら窺い知れない奥の院があるのは重々承知していますが、それでもやはり目に見えるところでしか判断できないところがあって、日本の大学教授が拉致されているのに「物が言えない、隠そう」という姿勢は如何なものかと思うわけです。
何よりも、その対応如何を通じて中国は日本政府、安倍政権の足元を見ているわけですから。
「日中関係は今や完全に正常な軌道に戻った」などという記事がよく見られますが、本当にそうでしょうか。
尖閣諸島を見ただけでも、4月12日から6月14日まで過去最高の64日間連続で中国公船が尖閣諸島の周辺海域そして領海を侵犯しています。
そして10月22日「即位の礼」の日も含めて11月4日まで20日間連続で同じく中国公船が確認されているのです。私は魚釣島に一度上陸したことがあります。
当時官房長官番の記者だったのですが、警察からは私有地なので建造物侵入で逮捕すると言われましたが、私有地といっても誰も住んでいないではないかということで、結局強行しました。
あそこは今、海上保安庁の船が頑張っているから占拠されないだけであって、1日だけでも海上保安庁の船が行かなかったらもうそれで終わりです。
向こうは数を頼んでやって来ますから、直ぐに取られて中国のものになってしまいます。
尖閣諸島というのはそのように危ない状況に置かれていることをもっと認識しなければいけません。何しろ人が住んでいないわけですから。
逆に言えば、主権を守るために公務員か誰かが住めばいいのです。
そのような状況を承知でいながら「完全に正常軌道」などと言っているから足元を見られるのではないでしょうか。
今、中国は「日本側が中国の国家主席を国賓で招きたいと言っているので、それまでは我われが何かやったとしても決して波風は立てないだろう」と日本側をナメているのではないでしょうか。これは子供でも分かる論理立てで、その通りなのです。
日本側は波風を立てたくないのです。もっと言えば、王岐山氏が「即位の礼」に来るから、それまでは北海道大学教授の拘束話は「マル秘中のマル秘」にしておけと、そういうことだったのでしょう。
このような私のように、書生みたいな青臭いことばっかり言っていると物事が前に進まないのでしょうが、然(さ)は然(さ)りながら、国益というのが懸かってきていますので、もっと中国には毅然として欲しいと思っている次第です。
習近平氏の訪日については、自民党の中でも国賓として招くことへの反対意見があります。
ですから、日中関係を考慮して政府が「国賓としては招待できない」と言えないのであれば、自民党として、或いは私のようなメディアに関わる者が代わりに言い続けるしかありません。
そうして「日本国民は皆が皆、喜んで習近平を国賓としてお招きしたいとは思っていません」というメッセージを中国に伝えるべきなのです。
これは日本外交の後押しにもなります。相手の不当な行動に対しても堂々と抗議できるようになるのです。
今はSNSの時代でもありますので皆さんも、どんどん発信していくことが大事なのではないでしょうか。
10月の王岐山氏の来日前、去年の5月に李克強首相が北海道に来ているのです。
北海道が狙われているのです。
特に釧路、苫小牧などが「一帯一路」の拠点として注目されています。
2018年1月、中国は「北極政策白書」を初めて公表しました。
「氷上のシルクロード計画」などとも云われていますが、要は「一帯一路」です。
「一帯一路」というと中国から西に向かって進んで行く「横のシルクロード」のイメージがありますが、こちらは「縦軸の一帯一路」です。
その拠点の港に目されているのが釧路と苫小牧の港湾なのです。
温暖化で北極海の氷が溶け、砕氷技術も操船技術も発達してきたということで、中国船が北極海を通って欧州に抜ける航路の開拓を狙っているのです。それが正に「北極政策白書」の構想なのです。
例えばオーストラリアの南の方にタスマニア島というのがあります。
そこの中国系オーストラリア人が首長選挙に打って出ましたが落選しました。
しかし、そのうち当選してくると思われます。
中国がなぜタスマニア島を狙うかというと南極に近いからです。
また最近、タスマニア島ほどではありませんがソロモン諸島が中国の軍門に下りました。
台湾と国交を断絶して中国との国交を回復したのです。
中国からは早速に離島を幾つか全面的に借り上げたいと言われていますが、ソロモン側は何とか抵抗している状況です。
ソロモン諸島が中国に落ちたということを聞いて、昔、ソロモン諸島のすぐ近くのニューカレドニア諸島を舞台にした女優原田知世の「天国にいちばん近い島」という映画がヒットしたのを思い出しました。
それが今は「地獄にいちばん近い島」になろうとしています。
三 北海道への進出を強める中国の政・官・経の勢力 ~東京と分断される釧路~
中国のペルシャ湾からインド洋に抜けてマラッカ海峡を通るシーレーンは、日本だけではなくて中国にとっても重要な石油の輸入経路です。
今は日本とアメリカ、それにインドがしっかりと押さえていますので、中国にとっては脅威でしょう。
であれば、中国が北極海に抜ける縦のラインなど、いろいろなルートを確保していこうとするのは当然の対応です。
その北極海については、今はロシアが頑張っていますが、行く行くは南シナ海と同様に核の先制攻撃を受けた時に潜水艦による報復攻撃を担保するための内海にしたいという思惑が中国にはあるわけです。
北朝鮮の日本海側には羅津港と清新港があって中国が借り上げていますので、釧路、苫小牧が「一帯一路」の拠点として整備されていくと、北朝鮮の羅津港や清新港から宗谷岬ではなく、津軽海峡を中国の大きな商船が毎日のように堂々と通っていくのを我われは見せつけられることになります。
去年の李克強氏に続いて、今年になって王岐山氏が来道し、視察というより下見、偵察をして帰って行ったわけですが、これで来年習近平氏が北海道に来たらもうアウトです。在留中国人がこぞって東京から行ってそこで指令を受けるのです。
日本にいる中国要人の行動を少し詳しく見てみますと、多くの中国大使館、中国企業の人たちが北海道を訪れています。
程永華駐日大使、張小浜一等書記官といった人たちが釧路に下見に来ているのです。
その際「中国は北海道航路の試験運用を本格化している。
釧路はアジアの玄関口として国際港湾物流拠点としての成長が期待できる」と言って、程大使が蛯名大也釧路市長と面談して持ち上げています。
「民間、地方外交」に期待ということでしょうがこれは罠です。中国相手に民間外交なんてあるわけがありません。
皆民間人を装った共産党支配下にある企業なのです。皆フロント企業なのです。
そして「釧路の皆さん、我われと一緒にやりましょう」と言って、東京と釧路の分断を謀っているのです。
釧路の人には申し訳ないのですが、中国共産党は地方の人たちが何とかできる相手ではありません。
ヨーロッパの格言には「地獄への道は善意の道で舗装されている」というのがありますが、本当の侵略者はバイキングのように鳴り物を鳴らして武器を持って来るのではなく、緻密に計算し、時間をかけて笑顔で土産を持ってやって来るのです。
それに我われは騙されてはいけません。
偽りを見抜く眼力が必要になりますが、そのためには正しい情報を獲得していかなければなりません。
しかしこれは一地方自治体でできることではなく中央との密接な連携が必要になります。
2018年5月、「北極政策白書」を出した4ヶ月後に中国外務省の外務次官が「北海道の農業は高齢化して人出が不足しているので、我われがお手伝いしたい」と言っています。
同月、李克強氏が苫小牧を視察し、翌6月には中国大使館の経済担当の公使が釧路で「北の釧路、南のシンガポール」と題して講演会を行っています。
続いて、フロント企業コスコシッピング・ライズジャパンの社長は釧路の人に向けて「川上、川下を開発して我われの輸送船舶の燃料補給、クルーズ船の寄港等を考えていきたい。
コスコシッピング・ライズジャパンの航路開拓への協力をお願いしたい」とやや強圧的な口調で言っています。川上というのは水源地ですが、自分たちが居住するということなのでしょうか。
いずれにしても釧路市政の問題であって一方的に要求される話ではありません。
中国が本格的に進出して来るとなるといろいろな問題が起こってきます。
今私は「豚コレラ問題」を追っかけています。
もともと豚コレラは中国人が持ち込んだものです。
悪気があってやったわけではありませんが。
中国の春節の時期に本国に帰れない仲間のために豚コレラに汚染された中国のソーセージを日本に持ち込んだのです。
外でバーベキューをして、残り物として捨てた肉などをイノシシが食べて、今や感染したイノシシが日本中を走りまわっている状況です。
これはまだまだ続くでしょう。
ちなみに豚コレラの防疫をどのようにやっているかというと、空港で小さなビーグル犬が荷物引取り場で臭いを嗅ぎ、反応するとハンドラー(調教師)の方を見つめるので、そこで荷物を開けさせて該当物をその場で押収するのです。
ビーグル犬がいるのは7つの空港だけですが、中国から来る飛行機に照準を狙い定めて集中的に検査を行っていますが十分ではありません。
話を北極航路に戻します。
今年の5月、トランプ大統領がグリーンランドを買収したいと言ったのを皆さん覚えていらっしゃると思います。あれは思いつきで言ったのではありません。
5月にアメリカの国防省が報告書を出していますが、そこに「中国がグリーンランドに強い関心を持っていることに我われは懸念を表明する」と書いてあるのです。
中国は「グリーンランドに通信衛星基地、北極圏研究所などを建設し、港湾も整備する」と言って、グリーンランドが属しているデンマークに働きかけているのです。
アメリカから見たらグリーンランドはカナダに本当に近いですので、中国の進出を軽々に見逃すことはできないということなのでしょう。
また、アイスランドも同じように中国資本に狙われていると云われています。
四 真に警戒しなければならない中国侵略の本質 ~武力侵攻を上回る土着侵攻の脅威~
中国人は「自分が住んだところが中国だ」と思っており、言ってみれば誰も中国共産党に忠誠心なんか持っていません。一番大事なのは家族なのです。
次いで親族、そしてせいぜい福建省とか何省出身という同郷の人たちでしょうか。話が飛ぶようですが、それだから天安門事件の時に人民に銃口を向けることができるのです。
あれは国軍というよりも共産党の私兵の集まりですから。
そういう中国の人たちは鋤や鍬だけを持って、入って行ったところでどんどん開拓をしていきます。為政者が誰であっても構わないのです。
ここで皆さんに過去の先人を一人紹介したいと思います。
長野朗さんという陸軍士官学校を卒業したものの若くして軍籍を離れ、戦前から戦後にかけて活躍された方ですがご存知でしょうか。
戦後は昭和28年全国郷村会議委員長を務めました。
西尾幹二先生がまとめた「戦前の日本人が見抜いた中国の本質」の中で詳しく書かれています。「戦争は民族エネルギーの激突である」というテーマですので、戦後GHQ(連合国軍最高司令部)によって焚書、発禁にされてしまいました。
戦地で軍が行動するときに一番大事なのは水の確保ですから、長野朗は軍にいたときからこの方面のリサーチに携わっていて、次第に中国の農村を廻って歩くようになり、彼らの民族性をはじめ、本当に深いところをよく知っているのです。
血縁相引き、同郷相求め、村をなし、郷をなし、街をなす。
その統治者の如何は問うところではない。
従って支那民族の発展は極めて平和的であるが、極めて深刻である」と述べています。
これはひとたび支那人に入り込まれると取り返しがつかないと言っているのです。
続けて「支那人はアメリカ人の如く資本侵略でもなく、ロシア人の如く征服略奪でもない。土着的である。その土地に土着して農を営み、商工を営み、村をなし、県をなし、省をなす。
彼らには武力の背景も国家の背景も必要ではない。
丸く巻いた布団を担ぎ、徒手空拳にして、如何なる気候の下にも、熱帯にも乾地にも湿地にも出かけるし、如何なる業務も厭わず孜々としてやるし、如何なる政治の下にも平気である」と言っています。
これが先ほど申し上げた「阿Q正伝」に出てくる阿Qの生き様そのものなのです。
これが彼らの本質なのです。
武力で攻めこんでくる方がまだ分かりやすいのですが、先ほど言ったようにそういうことはしないで笑顔でやって来るわけです。
彼はさらに「志那人は戦いに勝っても負けても発展する。勝てば相手の男子を国内に分散居住させて同化(シナ化)し、女子のところに移り住んでこれを同化する。
負ければ入ってきた他民族を多数で同化し、相手の本国に移住してこれを居住地化する。
即ち負けて勝つのである」とも言っています。
時間がありませんので紹介はこれぐらいにしますが、アマゾンだったら手に入ると思いますので是非読んでいただきたいと思います。
この本の長野朗の引用部分を知り合いの中国人、エリートの方ですが、その人に訊くと「本当だ。よく書けている」と言って苦笑いしていました。
中国人というのはそういう人たちであるということを頭に入れておかないと、地元の住民との軋轢を生んでいくという話です。
北海道が徐々に狙われてきているということで、釧路については前に述べましたが苫小牧も注目されています。
苫小牧はIR(統合型リゾート)の候補地と云われていますが、大阪もあり、横浜も急に意欲を示したりして、苫小牧が名乗りを挙げても苦戦するだろうと云われていますが、アメリカ、カナダの会社が狙いを定めて、すでに苫小牧市内には北米大陸系の企業が幾つか事務所を構えて情報を収集していると云われています。
そこで問題なのは、中国資本も狙っているらしいということです(11月下旬に断念を発表しましたが)。
中国系が来たらこれは大変なことになります。恐らく景色が一変するでしょう。
中国系の企業のIR進出に伴い、1万人から2万人の中国人が来ると言われています。
苫小牧自体は他の過疎地と比べればそれほど人口は減っているわけではありませんが、それでもかなり中国風の街になっていくのでしょう。
私は東南アジアに行ったときに、プノンペンで中国資本が建設したカジノホテルを見ていますが、ネオンの輝きがもの凄くて、その中で入れ墨をした人が中国語で声高に話しているのです。
とても上品と言えるものではありませんでした。
でもそれだけでしたら、向こうの文化ですのであまり云々するのは失礼ということになるのですが、それだけではなくて拠点は全部リンクしていますから、このIRを利用してどんどん中国人が入ってくるということになります。
街を取られかねないということになります。
まさかと思われますが、一旦取られて既成事実になったらそれで終わりなのです。
最後には移民問題もそうなのですが人権問題になってきます。
「我われを差別するのか」という話になってくるのです。
今のドイツ、そして欧州がそうなっているのです。
4月に改正出入国管理法が施行されましたが、やって来るのは馬や牛ではなく人間です。
いくら単純労働といっても日本で生活して結婚もし、子供が生まれるかも知れません。
人ひとりの人生を国と地方自治体が面倒をみるということなのです。
また5年の期間が過ぎたら帰ってもらうといっても、「はい」と言って帰るわけがありません。今欧州で起きている移民の現実がそのことを示しています。
使用する側からみても、いくら単純労働といっても日本語もうまくなり仕事も覚え、性格も良かったらもっと居てくれという話になります。
そして「そのような人たちを無理やり帰すのか、強制送還するのか」、「子供も赤ん坊なのに、そのような非情なことができるのか」という話になり、実際ずるずるべったりでどうにもならなくなっているのが今のドイツなのです。
日本も今のところ入国を認める人数は14業種34万人とは言っていますが、いずれ340万人とかになっていくのでしょう。
五 土着侵攻、移民化が押し寄せる中、日本は如何に対応するのか ~日本化、アイデンティティ化の重要性~
先日、ラグビーのワールドカップで日本中が湧きかえりましたが、ラグビージャパンはどうしてあれほど強くなったのでしょうか。
国籍も違い、肌の色も違ういろいろな人がいました。
結局あの強さというのはそれぞれ異なる選手たちの力を「同一化」、「日本化」することにより戦力として結集できたからなのです。ただ単に日本人離れした体格の良い選手を集めたからではありません。
確かにルーツはいろいろですが、日の丸の下で桜のジャージを着て、君が代を歌って心をひとつにしたから強くなったのです。あれを日本は理想形にしたら良いと思います。
アメリカにはたかだか7年しかいなかったのですが、移民国家というものを肌感覚で知ることができました。
皆さん、誤解されているかも知れませんが、移民国家というとアメリカ、カナダ、オーストラリアなどと広大な土地があって、吸収力もあり、移民の人たちは好き勝手にやっていると思われがちですがそんなことはありません。
「一度アメリカに入った以上は勝手な真似はさせない」というのがアメリカなのです。だからアメリカは強いのです。軍事、経済、学術など何をやっても強いのです。
私が通っていた研究室では週末になると研究員のお子さんが来て一緒になって宿題をやったりしていました。
ちょっと見せてもらったら日本でいうと小学5年生か6年生なのに「1/2+1/3=?」みたいな計算をしていました。
アメリカでは勉強ができてどんどん進級する子もいれば、この程度で良いとマイペースで進んでいく子もいるのです。
そして、学校では何を教えているのかというと、アメリカ人を作る教育をやっているのです。
「君たちはもうアメリカ人だ」、「両親や祖父母はあの国から来たかも知れないが、君たちは今、アメリカに住んでいるから英語を話さなければいけない」、「アメリカ合衆国憲法第何条何項を頭にいれておかなければならない」ということを徹底的に仕込むのです。
それでもまだ足りないと思う人は、本当にアメリカ人として認められたいといって、兵士としてアフガンとイラクに何回も行っているのです。
その結果、無言で帰ってくる人も多いのですが、行けば行ったということで貢献したと認められ、家が貧しいので返さなくてもいい奨学金を貰って大学に行けるとか、そうやって皆アメリカ人になろうとしているわけです。
ですから、これからの日本では、働き手が少なくなるので確かに労働力は必要になってきますが、一番大事なことは、先ほどのアメリカ、ラクビーの例に見るように、日本人に同化させるということが大事になるのです。
「多文化共生」は即ち、「同一化」のことにほかなりません。
ただし「他の文化と共生」ではありません。こうなると移民政策は間違いなく失敗します。
いろいろなルーツの人が日本に来て勝手なことをやっていたら、まとまりが無くなるのは当たり前です。
以上、中国の日本への係わり方を中心にお話ししてきましたが、本当は巨大な核戦力を背景にした米中のヘゲモニー争い、覇権争いの方から入っていきたかったのですが、今日は細かい部分から入ってしまいました。
これからよくテレビ、週刊誌、月刊誌などで、チャイナ・ウォッチャーと云われる人たちが「アメリカと中国の間で、日本はどう立ち振る舞って国益を極大化していくのか」などと言うのを目にすると思いますが、「我われにはそのような選択肢はない」と私は思っています。
日米同盟の強化しか選択肢はないのです。独裁国家の中国共産党とどのように付き合えというのでしょうか。
確かにビジネス上の付き合いはあるかも知れませんが、我われは根本的なところでは絶対に彼らと相容れないのです。
そこの立ち位置をはっきりしておかないと、どんどん取り込まれ、巻き込まれていきますので、よくよく中国の動向を見ておかなければなりません。
「中国に気をつけろ」と言っても「中国と戦争しろ」とか言っているわけではなく、個人と国家はまた違ってきますから、国家という部分で今後日本も、彼らが百年戦略を考えている以上に長期的な構想を立てていかなければならないということです。
はっと気づいた時には取り返しのつかないことになっています。
国防、安全保障、外交そして移民政策など、国家の根幹に関わるこれらの問題は一片の間違いも許されないのです。覆水は盆には返らないのです。
本の中で「ノアの方舟」について書きました。ノアはいつ方舟を造ったのでしょうか。
「紀元前何世紀とか、何年」と答えるのはヤボになります。ノアが方舟を造ったのは「雨が降る前」なのです。洪水から護るために方舟を造るのです。
方舟の意義を考えたら当然なことですが、一面深い意味があります。
我われも雲行きぐらいは見ることができ、「やばい」と思ったらまず船を造ることが大切なのです。
そういう心構えと意識、そしてそれを周りに発信していくということが非常に大事になってくると思います。
「雨が降る前に箱船を造りましょう」というのが、今日の私からのメッセージであります。
「日本もウクライナのように侵略される」というのは本当か
朝日新聞が2022年3月中旬から4月下旬に、全国の有権者3000人を対象に郵送で行った世論調査によれば、「ロシアのウクライナ侵攻を受けて、日本と日本周辺にある国との間で戦争が起こるかもしれない、という不安を、以前より感じるようになったか」との問いに、80%が「感じるようになった」と回答したそうです(2022年6月19日の朝日新聞DIGITAL版記事より)。
この問いに対する「とくに変わらない」との回答は、19%でした。
また、これに続く「日本の防衛力はもっと強化すべきだ」との問いには、64%が「賛成」または「どちらかと言えば賛成」との回答で、朝日新聞(記事には署名なし)はこの二つの結果について「有権者はウクライナの侵攻を受けて、防衛力の強化に理解を示しているようです」と書いています。
けれども、私はこの世論調査の結果と、それに対する朝日新聞の認識の甘さ(ぬるさ)に、危ういものを感じます。
かつてこの国では、実質的な国の指導部である軍部とそれに同調する政治家が「自国を取り巻く安全保障上の危機」を理由に、桁外れの軍備増強を行い、それが結果的に日本を「戦争の道」へと向かわせたことがありました。
昭和12年度(1937年)の予算案では、総額30億3900万円の半分近い14億1000万円(前年比31%増)が、軍事費に充てられることになっていました。
この総額は、後に28億円に削減されましたが、削減の対象は民生分野ばかりで、陸海軍費は実質的に削減なしでした。
こうした軍事費の大幅増額を正当化する上で、国民向けに広く流布されたのが、「非常時」や「準戦時」などの危機感を煽る言葉でした。
当時の日本国民の多くは、軍部が要求する膨大な「陸海軍の予算」が本当に国を守ることに繋がるのか、軍部が国民に説明する「危機」や「非常時」が本当に現実を正しく反映した言葉なのかを、自分の頭で検証できる知識を持ちませんでした。
その結果、ただ軍部や政府の言うことを素直に信じ、「日本という国を守るためなら、自分たちの生活よりも軍備が優先されても仕方ない」と思い込み、我慢する道を選んでしまったのです。
では、1937年から85年後に当たる、2022年の日本はどうでしょうか。
一人一人の国民が、政府や「元自衛隊幹部」らの言うことが本当かどうかを自分の頭で判断できる、安全保障問題に関する「適切な知識」を持ち合わせているでしょうか?
軍事的にきわめて難しい「日本上陸作戦」
2022年2月24日に、ロシア軍がウクライナへの侵略戦争を開始すると、日本国内では「ある種の人々」が水を得た魚のような勢いで、防衛費つまり軍事費の増額と、装備兵器の増強を盛んにアピールするようになりました。
彼らは、ウクライナで起きているような「侵略」が、今すぐにでも日本に対してなされうるかのような「イメージ」を盛んに流布し、国民の不安を煽り、その不安を解消するには「防衛力の増強」しかないのだ、と信じ込ませようとしているようです。
けれども、近現代の戦争史や紛争史を長く研究してきた者として、今の日本社会でなされている短絡的な「危機意識の扇動」には強い違和感を覚えます。
彼らの語る論を仔細に観察すると、ウクライナと日本が置かれている歴史的・政治的・地理的・軍事的状況の大きな違いをきちんと説明せず、「日本がウクライナのようになってもいいのか」という脅しに重点を置いていることに気づくからです。
たとえば、ロシアのプーチン大統領がウクライナへの実質的侵略を正当化する大義名分として挙げるのは、ウクライナ国内のロシア系住民の保護(ネオナチによる迫害を除去する「非ナチ化」)や、ロシアとウクライナの歴史的一体性(帝政ロシア時代やソ連時代に同じ大国を構成していた)などですが、中国や北朝鮮と日本の間には、そのような「侵略を正当化できる大義名分」は存在しません。
また、ロシアとウクライナは地続きで、比較的簡単に国境を越えて軍事侵攻を行えますが、中国や北朝鮮と日本の間には広い海が存在しており、侵略の難易度は飛躍的に高まります。
この「地続きではない」という事実は、国防を考える上できわめて重要で、大規模な兵力を無事に渡海させ、相手国に上陸して敵軍と戦う「着上陸侵攻作戦」の難しさは、元寇の失敗からも明らかです。
あのヒトラーですら、フランスから目と鼻の先にあるイギリス本土への上陸侵攻をあきらめる判断を下しました。
中国軍は、国共内戦末期に大陸の付近で行った小規模な上陸作戦(1949年の金門島上陸など)を除けば、広い海峡や海を越えて大規模な兵力を他国に上陸させた経験がなく、上陸させた大部隊の補給を長期にわたって維持できる海上輸送力の保有も確認されていません。
今回のウクライナでの戦いでは、北部からキーウ(キエフ)に侵攻したロシア軍地上部隊は、兵站(食糧や弾薬、燃料など、作戦継続に不可欠な補給物資)輸送路を脅かされて進撃を停止し、結局キーウに到達できずに撤退を余儀なくされました。
もし中国軍が台湾や日本に上陸侵攻すれば、兵站維持の難易度は、この数倍から数十倍になるはずです。
日本には、訳知り顔で「安全保障問題」を語る人が大勢いますが、その中には「戦争」と「戦闘」の違いを理解できていない人も少なくないように思います。
「戦闘」とは、戦闘機やミサイル、軍艦、戦車などによる、局所の「戦い」であり、前線兵力の数や兵器の性能などの優劣が勝敗を分けます。
これに対し、「戦争」は開始する上での大義名分(政治的正当性)や兵站計画とその実行準備、長期化した場合の経済的負担や政治指導者に対する国内世論の変動など、さまざまな要素が関わる「戦略的問題」です。
こうした観点から見ると、ロシア軍がウクライナへの侵略を開始した2022年2月以降の東アジア情勢で、北朝鮮や中国の日本に対する「軍事的脅威」が、それ以前より「大きく」高まったと考える材料は特に見当たりません。
中国や北朝鮮の目的は「日本侵攻」ではない
そうは言っても、実際に北朝鮮は各種のミサイル発射実験を日本近海で頻繁に行っているし、核兵器の開発も続けている。
中国は南シナ海への「海洋進出」を行って勢力圏を拡大し、3隻目の空母を含め陸海空の最新兵器を導入して軍備の増強を進めている。
これらの動きを見れば、日本に対する「脅威」が高まったという認識は、間違いとは言えないのではないか?
こんなふうに思われる方も少なくないと想像します。
メディアの報道、特にNHKニュースの報道をそのまま素直に受け止めれば、北朝鮮や中国の「軍備増強」に、日本が圧迫されているかのような「イメージ」が視界に出現します。
しかし、ここで一度立ち止まって「北朝鮮や中国は、何のために軍備増強を行っているのか」を考えてみてはどうでしょうか。
たとえば、北朝鮮が国民生活を犠牲にして進める、ミサイルや核兵器の開発目的は何なのか。
日本に侵略して領土を拡張するためではありません。侵略の大義名分も、部隊を日本に上陸侵攻させる能力も、北朝鮮は持っていません。
その対象は事実上、かつて朝鮮戦争(1950年に勃発、1953年に停戦)で自国を存続の危機に追い込んだアメリカただ一国であり、アメリカが自国の国家体制(指導者である金一族を中心とする国家体制と秩序)を軍事力で打倒することを阻止する目的で、米本土を攻撃できる大陸間弾道弾(ICBM)を含むミサイルや核兵器の保有を進めているのです。
つまり、日本列島の在日米軍基地を別にすれば、北朝鮮の指導部にとって、日本は「眼中にない」のです。米軍と切り離した形で日本を攻撃する理由は見当たりません。
中国の場合も同様で、軍備増強の第一目的は「日本を攻撃するため」ではなく、「アメリカと戦争になった場合に有利な状況を創り出すため」です。
中国は、インドとの国境紛争や無人島の奪取を別にすれば、領土拡張目的の対外侵略を、一定数以上の人が住む領域に対して行ったことがありません。
国共内戦末期に軍事力で支配下に置いた、チベットとウイグル(新疆)については、同化政策を「文化的な侵略」と見なしたり、それに従わない住民の迫害や虐殺を「人道的な侵略」と見なすことが可能ですが、国際関係の文脈では、チベットもウイグルも当時は独立国としての地位(他国の外交的承認)を持っていなかったので、国連を含む国際機関は今でも、両地域の問題を「中国軍による他国への侵略」でなく「中国国内の人権侵害や虐殺」という形式で批判しています。
かつて清国の領域内だったチベットやウイグルと違い、日本は過去に一度も、清国を含む中国の領域に併合された歴史がありません。
従って、中国軍が日本人の住む日本列島に軍事侵攻を行う大義名分がありません。
近い将来に、日本が中国と戦争する可能性は存在します。一つは、無人島である尖閣諸島をめぐる領土紛争。そしてもう一つは、何らかの理由で勃発した米中戦争に日本が巻き込まれるという展開。
しかし、ウクライナでのロシア軍の苦戦と戦争の長期化は、習近平政権に、紛争や戦争を自国が起こした場合の「戦略的なマイナス面」を再認識させているであろうと考えられます。
軍事費の増大に抵抗できなかった1937年の帝国議会
1937年3月7日付の大阪朝日新聞朝刊2面のコラム「天声人語」は、冒頭で述べた予算審議における当時の衆議院の対応について、次のように批判しました。
「二十八億円の厖大予算は、ついに申し訳の付帯決議で、衆議院を通過することになってしまった。
最初は三十億円だったのが二十八億円に減ったのは、いうまでもなく結城『興銀蔵相』が地方交付金の削除によって地方農村を見殺しにした結果にほかならない。
軍事予算に至っては少額の『見合わせ』以外一銭一厘の削除も加えずそのまま鵜呑みにしてしまったのだ。
ここで事柄を是非ハッキリさせておかねばならぬのは、衆議院が心からこの尨大軍事予算を至当と認めて鵜呑みにしたわけではなく、反対する勇気を欠くために渋々ながら協賛したという一事についてである。
これは少しも憶測ではない。
議会とはそもそも何をする機関か、心にもない屈服と、腑甲斐ない悲鳴に終始する場所といわれても返す言葉はあるまい」
また、同年6月30日付の大阪朝日新聞朝刊1面の見出しは、「画期の予算編成方針決まる」「『金』と『物』の両建て」というもので、前日の閣議で承認決定された昭和13年度(1938年)の予算編成方針について、次のように報じました。
「国防充実の必至と物価騰貴の真っ只中に、未曾有の尨大化を予想される明年度予算」「全体として物資力の供給増大には自ずから限度があり、半面国防費を中心とする歳出の膨張は相当程度に上る情勢におかれている点から見て結局国防そのほか政府関係の緊急なる物資の需要に応ずるためには民間の消費はある程度の抑制を余儀なくされる」
日本が中国との全面戦争へと突入したのは、この記事が世に出てから、わずか1週間後のことでした(7月7日の盧溝橋事件)。
それ以降、大日本帝国は1945年の破滅的な敗北まで、大きな方針転換を行えないまま、内外で多くの死傷者を出す戦争に邁進しました。
つまり、桁外れの軍事費増大は、国に平和をもたらさず、その逆となったのです。
グロテスクなほど軍事費に偏重した予算の成立から85年が経過した2022年の日本人は、そして朝日新聞は、当時の経験から何かを学び取ったと言えるでしょうか?
当時の大日本帝国では、一人一人の国民は「主権者」ではなく、国防の議論において「守られる対象」でもありませんでした。
国防の議論で「守られる対象」は、国の支配層(天皇を中心とする国家体制と秩序=国体)でした。
軍人もそれ以外の国民も、支配層を守るために自分の命や暮らしを捧げることを自らの義務と考えるよう教育勅語などを通じて仕向けられ、生活上の不便や苦労が増え続けても従い続けました。
われわれは、またあの時と同じ場所へ連れて行かれようとしているのではありませんか?
日本人が真に警戒すべき脅威は、国の外と内のどちらにあるのか、今はそれを冷静に考えるべき
日本の分割統治計画とは、第二次世界大戦において、ドイツが降伏後米・英・ソ・仏 4カ国に分割統治されたように、本土決戦後の日本も北海道・本州・九州・四国を連合国それぞれが統治しようとした計画。
アメリカ国立公文書館に現存する計画書による日本の分割統治計画。東京は米中ソ英 4か国、近畿と福井県は米中 2 か国による共同統治。
アメリカにある国立公文書館に現存する計画書[2]によると、
・北海道・東北 - ソ連占領地域
・関東・中部(福井県を除く)及び三重県付近 - アメリカ占領地域
・四国 - 中華民国占領地域
・中国・九州 - イギリス占領地
・東京 35 区 - 米・中・ソ・英の共同管理
・近畿(三重県を除く)及び福井県 - 中華民国とアメリカの共同管理
という計画であった(地図参照)。
実際の歴史
連合国は第二次世界大戦中、日本が明治以降に「暴力的に獲得した地域」を連合国によって分割する方針を打ち出していた。連合国は日本降伏後、かかる地域を以下のように分割占領した。
◇ソ連
・南樺太(ポーツマス条約で獲得、内地、1943 年 3 月 31 日までは外地)
・千島列島(樺太・千島交換条約で獲得、内地)
・朝鮮北緯 38 度線以北(日韓併合条約で獲得、外地)
・関東州(旅順・大連)(ポーツマス条約で獲得、租借地。1950 年代に中国へ返還)
◇アメリカ
・朝鮮北緯 38 度線以南(日韓併合条約で獲得、外地)
・沖縄(琉球処分、内地)
・奄美(連合国は沖縄の一部と解釈)
・旧十島村は、軍政下に置かれた島(現十島村)とそれ以外の島(現三島村)に分割さ
れた。
・小笠原(明治に領有宣言)
・委任統治領南洋群島(ヴェルサイユ条約で獲得)
◇中華民国
台湾(下関条約で獲得、外地)
これらは、1945 年(昭和 20 年)の日本降伏後に速やかに実行された。
これら占領地域には、日本が内地とした地域もあり、その点で言えば、日本領土は史実でも分割されている。
しかし、本土決戦の回避により、上記以外の日本本土を構成する北海道・本州・四国・九州及び付属島嶼は、連合国軍最高司令官総司令部(通称 GHQ、実質は米国)によって 1952 年(昭和 27 年)まで統一した占領統治下におかれ、分割されることはなかった。本計画では、これらの本土地域も細かく分割することになっており、この項目で指す分割とは、この計画を指している。
日本分割占領案については、早い段階から連合軍将兵にも伝わっており、中華民国軍の兵士の証言では、ルーズベルトが中国軍を日本占領統治に参加させることを決定したとの話が兵士たちの間に伝わると、多くの中国軍兵士がこれを喜び、日本に上陸した際にどのような行動をとるかについて話し合ったという。