ルーツな日記

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上原ひろみ 新作「ALIVE」

2014-05-22 23:59:42 | ジャズ
HIROMI THE TRIO PROJECT FEATURING ANTHONY JACKSON & SIMON PHILLIPS / ALIVE

5月21日に発売された上原ひろみさんの新作「ALIVE」。もちろんアンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップスによる怪物リズム隊とのトリオ・プロジェクト第3弾です。初めに断言しちゃます、傑作です!大名盤です!!凄いです!!!

何が凄いかって、一言でいえば“エネルギー”ですかね。楽曲の難易度やそれを凌駕する技術ももさることながら、それらから溢れでるエネルギーが圧巻。それは過去2作の製作及び膨大な量のライヴ、それら全てを糧として築き上げてきたこのトリオにしか成し得ないもの。そんなエネルギーに満ちあふれた脅威のアルバム。その名も「ALIVE」、“生きる”をテーマにした作品です。

オープニングを飾るタイトル曲「Alive」は、16分の27拍子といういう、私のような凡人にはまったくもって意味不明なリズムが押し寄せる鬼曲ですが、それに嬉々として挑むかのような3人のせめぎ合いは、譜面的な難解さとは別次元で弾け合い、歓喜の音を描き出します。

サイモン・フィリップスの歌うようなタム使いも秀逸などこか切ない夢追い人「Dreamer」、おもちゃ箱をひっくり返したような曲展開にアンソニー・ジャクソンの高速ランニング・ベースが失踪する「Player」、上原ひろみ印の雄大な曲想とサイモンのドラムソロも素晴らしい「Warrior」などなど、凄まじくも情緒豊かな演奏の連続に時が経つのをわすれてしまいます。

上原ひろみのピアノは、彼女独特のハネを持った躍動感溢れるタッチで、時にジャジーに、時にファンキーに、時にブルージーにと、まるで魔法のごとくの縦横無尽振り。そして時に激しく、時に優しく、時に繊細に、まさに変幻自在。目をつむれば、彼女が楽しげにピアノと戯れる姿が見えてきそう。

そんなピアニストとしての上原ひろみが素晴らしいのはもちろんですが、これらバラエティ豊かな曲達は、彼女のコンポーザーとしての魅力もはっきりと浮かび上がらせてくれます。その極めつけは彼女のピアノ・ソロ曲「Firefly」でしょうか。もうこれは美しさの極地。この切なくも神秘的なメロディーと、儚げなトーンに、身も心も洗われるよう。これは本当に良い曲ですね。

そして中盤で異彩を放つ「Seeker」。これはソウルフルなんですよ!アルバムでこういう上原ひろみは初めてなのではないでしょうか?以前にライヴでビル・ウィザースの「Learn On Me」をやっていましたけど、何となくそれを思い出したり。緊張感の高い作風の中で、ちょっと一息入れられるような、それでいて、深い魅力に溢れてる。土っぽさを感じさせる曲調や緩やかなメロディー、朴訥としたアンソニーのベース・ライン、そして包容力溢れる上原ひろみのピアノ、染みますね~。

このソウルフルというのは、このトリオがたどり着いた今作のキモなのではないか?と思ったり。というのも、ラストに並ぶ「Spirit」と「Life Goes On」がまた妙にソウルフルなんですよ!「Spirit」の音数の少なさが、かえって何かを語りかけてくるような不思議な感覚。これはブルージーですね~。アンソニーのベース・ソロも味わい深い。そして「Life Goes On」。推進力のある躍動感はまるで人生を謳歌するようなポジティヴ思考を伺わせ、そしてチャキチャキっとした終わり方がまた良いですね。このラストのスカッとした感覚に生きる喜びを感じさせられます。

当初、タイトルが「ALIVE」で、テーマが「生きる」だと聞いたとき、また重いテーマを持ってきちゃったな~、と正直思ったんです。上原さんの音楽は、壮大な叙情性故にヘヴィになりがちな部分もあるので、暗い感じの作風だったらいやだな、なんて。でもフタを開けてみれば、それはポジティヴなエネルギーに溢れたもので、そのまま上原ひろみの人生観のような天晴さでした! やられましたね。って言うか、上原ひろみにはやられっぱなしですけどね。ホント参った!



いやはや、人生なかなか大変ですけど、頑張らないと行けませんね。私も少し上原さんを見習わなくちゃ。


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