ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
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フジロック 最終日を振り返る

2019-09-06 20:57:25 | フジロック
フジロック最終日の夜。アヴァロンの丘の上。ほぼ真っ暗。チェアーに沈む人々。すぐ近くのホワイトステージから、ジェイムス・ブレイクのアンビエントなサウンドが聴こえる。みんな眠るように静かに聴いている。ライトアップされた木々がとてもロマンチック。何ここ、フジロック史上最高のチルアウト空間じゃね!?


という訳で、私のフジロックを振り返る企画も今回で最終回。

前日の豪雨は何処へやら? 最後の最後で、暑〜いフジロックがやって来た!!あんまり暑くて、オレンジで天然氷のかき氷食べちゃいましたもん。黒糖蜜と練乳がけ、美味しかった〜!!

そんなこんなの最終日、私が観たのは以下のような感じ。


STELLA DONNELLY(red)
THE PARADISE BANGKOK MOLAM INTERNATIONAL BAND(heaven)
HIATUS KAIYOTE(green)(少しだけ)
PHONY PPL(red)
VAUDOU GAME(heaven)
DJ/TAN IKEDA a.k.a. P.M.D.M.F! (pari)(少しだけ)
blues.the-butcher-590213+うつみようこ(avalon)(後半だけ)
VINCE STAPLES(white)(前半だけ)
KHRUANGBIN(heaven)
JAMES BLAKE(white)(終盤少し)
THE COMET IS COMING(red)
QUANTIC (SOLO LIVE SET)(red)(およそ半分)


まずはレッド・マーキーにてステラ・ドネリーから。新進気鋭、オーストラリア出身の女性シンガー・ソング・ライター。私はどちらかと言うと、最新作「Beware of the Dogs」でポップに飛躍したステラ・ドネリーより、前EP「Thrush Metal」での憂いのあるフォーキーな世界観の方が好みだったりするのですが、ライヴでは新作モードなポップな姿を見せるのだろうと思ってたんです。ですがいきなりEP「Thrush Metal」から「Grey」をギター弾き語りで。いやもう、最高でしたね。続いて新作から「U Owe Me」。こちらも弾き語り。新作も全面ポップという訳ではなく、EPの雰囲気を引き継いだ曲もあるんですよね。続く「Beware of the Dogs」、「Mosquito」、もドリーミーなエレキ・ギター弾き語りにうっとりでした。こういうステラ・ドネリーが観たかったので、嬉しかったですね。そしていよいよバンド・メンバーを引き込んでの「Old Man」。新作を象徴するポップ・ナンバー。一気に場が華やぐ。「Watching Telly」「Season's Greetings」「Bistro」など、みずみずしく、そして可愛らしいステラ・ドネリーの歌声。CDで聴くのとはまた違うバンド・アンサンブルも凄く良い。いやはや、ポップなステラ・ドネリーも良いじゃないですか!!彼女の歌っているときの姿もキュートですし、その瞬間瞬間の空気に思いのまま反応する様な、自由なフィーリングもとても素敵。彼女が曲名を告げるたびに盛り上がる観客たちに、その都度とても嬉しそうに反応する姿も可愛かった!「Die」ではポップで楽しい振り付けがあって、観客達と一緒に踊ったり。新作の中で私が最も好きな「Boys Will Be Boys」も歌ってくれました。これもホントうっとりでした。そして最もポップにはじける「Tricks」で終了。ステラ・ドネリーの歌と、人柄と、色んな魅力が詰まった40分強でした。

私のフジロック最終日はしょっぱなから最高に気分の上がる、ステラ・ドネリーのステージから始まり、意気揚々でした。実はこの後、岩盤で彼女のアコースティック・ミニライヴとサイン会が予定されていまして、それも楽しみにしていたのですが、少し時間があるので、この間にヘヴンまへ急行してザ・パラダイス・バンコク・モーラン・インターナショナル・バンドを観ようという強硬策。

という訳で、ヘヴンにてザ・パラダイス・バンコク・モーラン・インターナショナル・バンド。タイ東北部の伝統音楽”モーラン”を、現代的なグルーヴで演奏する、タイのグループ。その唯一無比のサウンドで今話題の彼ら。私がヘヴンに着いたころには既に始まっていましたが、かの地の伝統楽器を前面に出しつつ、ファンキーでエキゾチックなグルーヴに一聴で引き込まれました。恥ずかしながら私、モーランがどういう音楽なのか知らないのですが、それでも彼らの音楽がユニークであることはビンビン伝わってくる。伝統楽器の音色はもちろん、反復フレーズが陶酔感を呼ぶ独特なノリが堪らなく格好いい。これはもう否が応にも踊らされる。もちろんヘヴンの観客達も踊りまくり。いやはや、これこそヘヴンの風景ですよね。

そして私は、オアシスへとんぼ返り。途中、ホワイトでインタラクティーヴォ、グリーンでハイエイタス・カイヨーテをチラ見しながらという贅沢。いやもちろんどちらもちゃんと見たかったですよ。ですがここはこの日の被りまくり案件なので仕方ない。ですがグリーンの巨大ヴィジョンに映し出されたネイ・パームの姿は格好良かったですね。しばし見とれちゃいましたよ。

それにしても、余裕のないヘヴン往復はこたえますね。めちゃくちゃ暑かったですし!しかも、オアシスの岩盤に戻ると、悲報が待っていました。

ステラ・ドネリーのミニ・ライヴ中止。いや~これは残念過ぎました…。詳しい理由はよくわかりませんが、まあ仕方ないですね。でもサイン会はやってくれたので、私もドキドキしながらサイン会の列に並びました。ステラ・ドネリーは登場してからず~っと笑顔を絶やさず、一人一人に楽しそうに話しかけ、それでいてとても自然体な姿は本当にキュート。私もサインを貰い、写真も撮っていただきました。近くで接するステラ・ドネリーは、また飛び切り可愛かったです!!

さて、次はこの日、最も楽しみにしていたバンドの一つ、フォニー・ピープルです。ブルックリンのヒップホップ・グループですが、最新作「mō’zā-ik.」に至る過程でソウルに接近し、そのネオでメロウなグルーヴから、西海岸のジ・インターネットとも比較される、注目のバンド。フロントマンのエルビーが何度も自転車でステージを横切りながら、観客達を煽るという、何ともやんちゃな感じで始まったステージ。オープニングは「End of the night」。いきなりそのバウンスしまくるグルーヴに度肝を抜かされる。完全にCDとは違うモードだ! これぞ、現行ブラック・ミュージックの粋!! 「Either Way」「Way Too Far」「somethinG about your love」など、新作からの曲を中心に披露。メンバーそれぞれがテクニシャンで、その技量と個性をたっぷり披露しながら、バンド・グルーヴに厚みとスピード感を増していく。特にリズム隊が半端なかった! ヒップホップのキレをファンキーに刻む変幻自在のビートを叩くドラマーと、低音ラインはもちろんのこと、弾いてる姿も全てバネの塊のような弾力感を持った驚異のベーシスト。彼らの繰り出す黒人ならではのうねりまくる躍動感は凄まじかった。そしてシンガーのエルビーですよ。エネルギッシュでしたね~。時にファンキーに、時にメロウに、レゲエ・フィールもチラつかせながら、ソウルフルに歌う。曲間にはラップのような早口で観客達を先導する。そのMCも歌も動作も全てがフリーキー。その彼にバンド・メンバーはグイグイと引っ張られていく。もちろん観客達も引っ張られていく。「Before You Get a Boyfriend」で盛り上がりも最高潮。観客みんなでサビを歌い、踊りまくる。いやはや、ホント最高でしたね。レッド・マーキーを揺らした、ネオ・ブラック・ミュージックの神髄。そのグルーヴが放つ圧倒的なブラッくネスには、昨年観たアンダーソン・パックと似た臭いを感じました。





超強力なフォニー・ピープルの後は、またもヘヴンに行脚してのヴォードゥー・ゲーム。こちらはアフロ・ファンク。シンガーであり中心人物のピーター・ソロは西アフリカのトーゴ共和国出身。ヴードゥーの祭礼がファンクやソウルを飲み込んだようなアフリカン・ミクスチャー。圧倒的なリズムが放つ異国感が半端なかったですね。そしてすべてを統率し、アフロの何たるかを体現させるフロントマンのピーター・ソロ。真っ赤なパンツに上半身裸、首からじゃらじゃら、頭にも何か撒いてる、そんな彼のディープなパフォーマンス。いやはや、格好良かったですよ。もちろんヘヴンは大盛り上がり。先ほどのザ・パラダイス・バンコク・モーラン・インターナショナル・バンドもそうですが、こういったワールド・ミュージックは、ヘヴンで聴くとまた格別ですよね。

とは言え、さすがに踊れるライヴの連続と、ヘヴンを行ったり来たりは老体にこたえたので、椅子があるカフェ・ド・パリでしばし休憩。ちょうどDJ/TAN IKEDA a.k.a. P.M.D.M.F! がDJ中で、なかなか良い雰囲気でした。その後はアヴァロンを散策したり、blues.the-butcher-590213+うつみようこを観たり。楽しみにしていたホワイト・ステージのヴィンス・ステイプルズは、さすがに旬なアーティストだけあり、独特の緊張感に溢れていました。彼のラップはもちろん、めちゃくちゃ効いた低音リズムがオルタナ感あって格好良かった!ですがヴィンス・ステイプルズは残念ながら、途中で切り上げました。なぜなら、クルアンビンと被っていたから!

という訳で、この日のメインは、ヘヴンでクルアンビン!!

前日深夜、パレスで観たDJセットも最高だったので、楽しみにしていたんですよ!テキサス出身で、タイ・ファンクに影響を受けた3ピース。すっかり夜の帳が下りたフィールド・オブ・ヘヴン。ステージに登場したマーク・スピアー(g)は金ラメっぽい上下のスーツ、紅一点のローラ・リー(b)は派手な柄の全身タイツのような衣装。このフロント2人の放つ雰囲気だけでエキゾチックな香りプンプン。その2人のユニゾン・リフが印象的な「August Twelve」で始まったそのステージ。彼らのチルでダルなエキゾ・ファンクがヘヴンを揺らす。ローラ・リーは時折腰を上下させながら、妖艶な雰囲気で根幹となるベース・ラインを奏でる。そこにマーク・スピアーがビヤビヤとしたエレキギターを絡めていく。これがタイ・ファンクに影響を受けたという独特の異国情緒を醸す。そしてドナルド"DJ"ジョンソンのドラム。彼の抑制の効いたある意味ミニマルなビートこそがクルアンビンの放つ陶酔感の源だったり。そしてここぞという所でメリハリを効かせ、時折ダビーになるところもミソ。観客達は催眠にかかったように、彼らのサウンドに支配されていく。サイケデリックとはまた違うトリッピーな感覚。CDで聴くのと雰囲気自体はさほど変わらないものの、ライヴで聴くと、目の前で観ると、そのトリップ感に溺れるよう。フロントの2人は、特にアクションを決めることもなく、時おり立ち位置を入れ変えたり、向かい合って弾いたり、至ってゆったりとしている。しかし、独特のサウンドと相まって、そのゆったりが不思議な恍惚感を誘う。そしてヘヴン全体がクルアンビンの虜になった頃合いに、ギアを上げてくる。「The Infamous Bill 」。これまでとは違うアッパーなグルーヴ。ローラ・リーのうねる低音に、身も心も踊らされる。終盤には、2人が向かい合って空瓶をキンキン叩いたり。そしてさらに盛り上がったのが、YMOで知られる「Fire Cracker」。ちょっとコミカルな感じのする東洋的メロディー。元々はエキゾチカの元祖マーティン・デニーのオリジナルで、そこにクルアンビンのルーツが透けて見えたり。そして私の一番好きな曲、やらないな〜、と思っていたら、最後にやってくれました。「Maria También」。格好良かったー!!そしてアンコールでは数曲披露してくれる大盤振る舞い。ジャムセッション風だったり、クラブ的なダンス・ミュージックに接近したりと、ライヴならではのディープな展開に胸が踊る。ローラ・リーのギンギラなセクシーな衣装も格好良かった!





いや〜、ヘヴンで見るクルアンビン、最高でしたね。そしてローラ・リーに惚れました…。ま、それはさておき、クルアンビンが終わったということは、ヘヴンが終わったということ。毎年のことながら、この瞬間はホント寂しいです。しばし黄昏てしまいます。


ヘヴンにサヨナラを告げてジェイムス・ブレイクがやっているホワイトへ。その道すがら、なんとなしにアヴァロンへ立ち寄ったんです。ホワイト方面に突き出た丘の上。それが冒頭の写真です。ほぼ真っ暗。目の前にライトアップされた木々。眠るように椅子に沈む人達。ジェイムス・ブレイクのアンヴィエントなサウンドが森にこだまする。なんだここは?フジロック史上最高のチルアウト空間か?時の経つのを忘れそうでした。


とは言えね、やっぱりジェイムス・ブレイク見たいので、丘を下りてホワイト・ステージへ。一番好きな曲「The Wilhelm Scream」聴けました!


いよいよフジロックも終わりです。今年の私のシメは、レッドでコメット・イズ・カミング!各ステージのメインが終わった後、深夜にコメット・イズ・カミングが待ってるって凄いですよね。率いるのは、UKジャズの騎手シャバカ・ハッチングス。米のカマシの次は、英のシャバカが来ると、大注目のサックス・プレイヤー。ステージ向かって右にシャバカ、左にキーボーディスト、後方中央にドラムスの3ピース。まるで怒涛のカオスに飲み込まれるようなライヴ。まさに彗星が落ちてきそうな迫力。シャバカのサックスのテンションも凄まじい。これはジャズなのか?ロックなのか?

いやはや、最後に凄いもん観た!!


ま、この後もクアンティック観たり、岩盤で踊ったり、だらだらと名残惜しんでいたんですけど。そんなこんなで、私のフジロックも終わりです。

最終日のベストアクトは、フォニーピープル!
次点はクルアンビン!



さて、今年も3日間、若手からレジェンドまで、ロック、ポップス、ヒップホップ、R&B、ワールドミュージックなどなど、溢れんばかりの濃密音楽体験でした。3日間でのベストアクトは、

1位 ジョージ・ポーター・ジュニア&フレンズ
2位 フォニー・ピープル
3位 クルアンビン
4位 ザ・ルミニアーズ
5位 ゲイリー・クラーク・ジュニア
次点 マタドール!ソウル・サウンズ、ステラ・ドネリー、

単独公演を観たジャネール・モネイをもしフジで観ていたら、多分、2位か3位辺りに入ってきたでしょう。


という訳で、フジロックを振り返る企画も、これにて終了です。
長々とお付き合い頂きまして有難うございました!