8月4日、ブルーノート東京にてパンチ・ブラザーズを観てまいりました。新世代ブルーグラスの旗手として、現行アメリカーナを代表するバンドの待望の初来日公演です。私が観たのはこの日の2ndショー。ミーハー魂を炸裂させて最前列ど真ん中で堪能させて頂きました。
まず会場に入って驚いたのが、ステージにはアンプはもちろんモニターすらない、ただ中央前方に1本のマイクがあるのみ。1本のマイクが歌やハーモニーはもちろん各楽器の音も全て拾うのでしょうか? 座席案内のお姉さん曰く「前方のお客様の呼吸の音すら拾ってしまう程、高性能なマイク」だそう。そのマイクのほぼ目の前の席に座った私、流石にちょっと緊張してしまいましたね〜。
さて、開演時刻となり照明が落ちると、拍手喝采に迎えられたメンバーが、各々の楽器を持ってステージに登場。現行アメリカーナ・シーン最重要人物の一人、クリス・シーリー(マンドリン)を中心に、ゲイブ・ウィッチャー(フィドル)、ノーム・ピクルニー(バンジョー)、クリス・エルドリッジ(ギター)、ポール・ コート(ベース)の5人。5人ともスーツにネクタイでビシッと決めつつ、ジャケットは着てたり着てなかったリというラフな感じがまたオシャレ。フィドルのゲイブ・ウィッチャーなんてベストにハンチング、そしてオレンジ色?っぽいパンツでしたからね、なかなかスタイリッシュなメンバー達であります。
彼らが1本のマイクの前に集まり、始めた1曲目は「Another New World」。いきなり陰影の濃いアメリカーナでスタートです。クリス・シーリーの歌も、メンバー達が奏でる弦楽器のアンサンブルも、驚く程に情緒豊か。パンチ・ブラザースというと、テクニカル且つプログレッシヴな先鋭性が注目されがちですし、かくいう私もそう思っておりましたが、いやいや、このバンドの本質は人間味溢れる楽曲表現にある!と思いを新たにさせられる程、その溢れんばかりの表現力にグイグイと引き込まれて行きました。終盤の、悲しみが募るように折り重なる弦の響きがまた見事でしたね。
また1本のマイクを囲むように演奏するそのスタイルも鮮やか。1曲のなかでその輪を縮めたり、広げたり、各々がマイクに近づいたり遠ざかったり、ごくごく自然な動きながらライヴ感に溢れ、アコースティック編成による生身の音楽という旨味をたっぷりと味あわてくれる。愛らしいワルツのリズムとちょっぴりセンチメンタルなメロディーが素敵な「Next to the Trash」では、朗らかながら憂いを持ったクリス・シーリの歌声も印象的でしたが、マイクを囲んでいたメンバー達が突然ワルツに併せて左右にステップを踏み始めたのには驚きました。そしてそんな遊び心がさらに楽曲の世界感へトリップさせてくれるんです。
もちろん、パンチ・ブラザーズならではの新世代感も強力でした。プログレッシヴ・ブルーグラスなどと評されるその音世界。そもそも「Next to the Trash」だって変拍子ですし、それぞれ楽曲1曲の中でめまぐるしく展開しつつ、圧倒的な技量で駆け抜けて行く。典型的なブルーグラス編成でありながら、ブルーグラスではない”何か”に進化した彼らの音楽。まるでクラシックのようにエレガントであり、ロックのように野性的。
後方から低音グルーヴを提供するポール・ コート。卓越した速弾きを駆使してブルーグラスの先へ誘うかのようなクリス・エルドリッジのギターとノーム・ピクルニーのバンジョー。まるで室内楽のような洗練を与えるゲイブ・ウィッチャーのフィドル。そして全体を統率しつつ、人間離れしたテクニックと、身振り手振りを交えた圧倒的な表現力で異次元を魅せてくれるクリス・シーリーのマンドリン。メンバーそれぞれが化け物的なレベルでありながら、どこか爽やかに、気持ち良くアンサンブルを編み上げいく。そもそも1本のマイクに向かった距離感とフォーメーションで音の厚みをコントロールしてる訳ですから、それだけでもとんでもない世界ですよね〜。
1曲目からラストまで、初めて見るパンチ・ブラザーズの圧倒的な音楽表現に身も心も浸かりっぱなしでしたが、白眉は最新作からの「My Oh My」でしょうか。まるで小曲を継ぎ合わせたような不思議な展開が連続するこの曲、ファルセットを駆使するクリス・シーリーの歌声にメンバーが合わせるハーモニーも素敵でしたし、弾力抜群のクリスのマンドリン・ソロにもやられました。そしてそれらを含みつつ目まぐるしい展開から生まれる曲風景の見事さ。やっぱりパンチ・ヴラザーズの魅力はここにありますよね〜。
終盤にやった「Rye Whiskey」も格好良かった。最後のコーラス部分なんて、スキャット風でなんて言ってるのかいまいちよく分からないのですが、ついつい一緒に歌っちゃいましたから。やはりクリス・シーリーのどこか人懐っこくも熱いキャラがジワジワと観客との距離を縮めて行った感はありましたね。それにしても彼のフロントマンとしての統率料は見事でしたね。あくまでも音楽ありきというストイックな姿勢を感じさせつつ、エンターテイナーとして魅せる部分や観客を煽る部分、その塩加減も絶妙でした。
アンコールはケルティックなアカペラ・コーラス曲「The Auld Triangle」。これも素晴らしかった!! もちろん1本のマイクをメンバー全員が囲んで歌うんですが、そのハーモニー、特に低音と高音の響きが絶品でした。ただただうっとりでしたよ。アンコールにこんな曲を持ってくるパンチ・ブラザーズ、なんて素敵なバンドなんでしょう!!最後にやった「Julep」も滲みました〜。
いやはや、本当に素晴らしいステージでした。間違いなく年間ベスト級です。こういうバンドが初来日な訳ですから、日本ではアメリカーナの本質って、まだまだ全然伝わってないんだな…。としみじみ感じさせられました。だって、このパンチ・ブラザーズもCDで聴くのと生で体験するのとではまったく別物と言っていい程、その印象は違いましたからね。正直、難解すぎたらどうしよう?みたいな不安も有ったんです…。ですが、まさか、これほど人間味に溢れた、情緒豊かな音楽表現をするバンドだったとは!! まるで何かの物語を語るかのように音を紡ぎ、刻々と移ろい行く情景を魅せてくれるようなそのステージは、まさに至福の音楽体験でした。もちろんテクニカルな面も凄かったですよ。その技量有っての表現力ですしね。インスト曲でのソロの応酬も堪らないものが有りましたし。ブルーグラスを超越しながらも、しっかりとブルーグラスらしさも聴かせてくれて嬉しかった!!先鋭だけではない、圧倒的な深みを体感させてくれたパンチ・ブラザーズ!これが現行アメリカーナ!!
最後に、自慢話を。私は入場整理番号2番だったのですが、1番の方がマイクに向かって左側の一番前、そして2番の私が右側に座ったのですが、おそらくこの2席だけが味わえる、最前列ど真ん中。これは本当にミラクルな席でした。私はミーハーなので、恥ずかしながら過去に何度も最前ど真ん中を味わって来ているんですが、この日程それを堪能したことはありませんでした。最前列の特権は誰よりも近くでアーティストを観れることですが、パンチブラザーズはそれだけでは有りません。まずブルーノートの最前列って、ほとんどステージと密着する程の近さなんです。なので、例のマイクがほぼ目の前にある。もちろんそのマイクを囲むメンバー達も近い。囲むと言っても観客側は開けている訳で、その開けた先に最前列ど真ん中が有る訳です。これは凄いですよ!ライヴ中、何度もメンバー達と供にマイクを囲っている錯覚に襲われるんです。自分がパンチブラザーズの輪の中に居るような錯覚。そしてそれはその音楽の中に入り込むような錯覚に変わって行く。これはとんでもない体験でしたね。本当にミラクル体験。今思い出してもゾクゾクしちゃいます。
すいません。最後にこんな極々少数派の自慢話でごめんなさい。でも本当に凄い体験だったんです!!
メンバーの足下にあったセットリスト。実際にこの通りやったかどうかは既に記憶があやふやでよく分かりません。この日もメモを取りながら観ようと筆記用具を用意していたんですが、最前列ど真ん中があまりにも凄すぎてそれどころじゃ有りませんでした。ま、セットリストが近くに有るし、後で写真を撮らせてもらえば良いか?みたいに思っていましたが、どうなんでしょう?明らかに違う部分も有りますし、その時の気分や雰囲気で変えてくるようですね。その辺りもライヴバンドとして素晴らしい!!と思ったり。ちなみに「True Love Waits」はレディオヘッドのカヴァー。
こちらはパンチ・ブラザーズ公演を記念したスペシャル・ドリンク。私はお酒飲めないのでパスでしたが。
珍しく食事のスペシャル・メニューもありました。
で、私が頼んだのはパンチ・ブラザーズと何の関係もない白桃のパフェ。すいません、甘党なので…。
まず会場に入って驚いたのが、ステージにはアンプはもちろんモニターすらない、ただ中央前方に1本のマイクがあるのみ。1本のマイクが歌やハーモニーはもちろん各楽器の音も全て拾うのでしょうか? 座席案内のお姉さん曰く「前方のお客様の呼吸の音すら拾ってしまう程、高性能なマイク」だそう。そのマイクのほぼ目の前の席に座った私、流石にちょっと緊張してしまいましたね〜。
さて、開演時刻となり照明が落ちると、拍手喝采に迎えられたメンバーが、各々の楽器を持ってステージに登場。現行アメリカーナ・シーン最重要人物の一人、クリス・シーリー(マンドリン)を中心に、ゲイブ・ウィッチャー(フィドル)、ノーム・ピクルニー(バンジョー)、クリス・エルドリッジ(ギター)、ポール・ コート(ベース)の5人。5人ともスーツにネクタイでビシッと決めつつ、ジャケットは着てたり着てなかったリというラフな感じがまたオシャレ。フィドルのゲイブ・ウィッチャーなんてベストにハンチング、そしてオレンジ色?っぽいパンツでしたからね、なかなかスタイリッシュなメンバー達であります。
彼らが1本のマイクの前に集まり、始めた1曲目は「Another New World」。いきなり陰影の濃いアメリカーナでスタートです。クリス・シーリーの歌も、メンバー達が奏でる弦楽器のアンサンブルも、驚く程に情緒豊か。パンチ・ブラザースというと、テクニカル且つプログレッシヴな先鋭性が注目されがちですし、かくいう私もそう思っておりましたが、いやいや、このバンドの本質は人間味溢れる楽曲表現にある!と思いを新たにさせられる程、その溢れんばかりの表現力にグイグイと引き込まれて行きました。終盤の、悲しみが募るように折り重なる弦の響きがまた見事でしたね。
また1本のマイクを囲むように演奏するそのスタイルも鮮やか。1曲のなかでその輪を縮めたり、広げたり、各々がマイクに近づいたり遠ざかったり、ごくごく自然な動きながらライヴ感に溢れ、アコースティック編成による生身の音楽という旨味をたっぷりと味あわてくれる。愛らしいワルツのリズムとちょっぴりセンチメンタルなメロディーが素敵な「Next to the Trash」では、朗らかながら憂いを持ったクリス・シーリの歌声も印象的でしたが、マイクを囲んでいたメンバー達が突然ワルツに併せて左右にステップを踏み始めたのには驚きました。そしてそんな遊び心がさらに楽曲の世界感へトリップさせてくれるんです。
もちろん、パンチ・ブラザーズならではの新世代感も強力でした。プログレッシヴ・ブルーグラスなどと評されるその音世界。そもそも「Next to the Trash」だって変拍子ですし、それぞれ楽曲1曲の中でめまぐるしく展開しつつ、圧倒的な技量で駆け抜けて行く。典型的なブルーグラス編成でありながら、ブルーグラスではない”何か”に進化した彼らの音楽。まるでクラシックのようにエレガントであり、ロックのように野性的。
後方から低音グルーヴを提供するポール・ コート。卓越した速弾きを駆使してブルーグラスの先へ誘うかのようなクリス・エルドリッジのギターとノーム・ピクルニーのバンジョー。まるで室内楽のような洗練を与えるゲイブ・ウィッチャーのフィドル。そして全体を統率しつつ、人間離れしたテクニックと、身振り手振りを交えた圧倒的な表現力で異次元を魅せてくれるクリス・シーリーのマンドリン。メンバーそれぞれが化け物的なレベルでありながら、どこか爽やかに、気持ち良くアンサンブルを編み上げいく。そもそも1本のマイクに向かった距離感とフォーメーションで音の厚みをコントロールしてる訳ですから、それだけでもとんでもない世界ですよね〜。
1曲目からラストまで、初めて見るパンチ・ブラザーズの圧倒的な音楽表現に身も心も浸かりっぱなしでしたが、白眉は最新作からの「My Oh My」でしょうか。まるで小曲を継ぎ合わせたような不思議な展開が連続するこの曲、ファルセットを駆使するクリス・シーリーの歌声にメンバーが合わせるハーモニーも素敵でしたし、弾力抜群のクリスのマンドリン・ソロにもやられました。そしてそれらを含みつつ目まぐるしい展開から生まれる曲風景の見事さ。やっぱりパンチ・ヴラザーズの魅力はここにありますよね〜。
終盤にやった「Rye Whiskey」も格好良かった。最後のコーラス部分なんて、スキャット風でなんて言ってるのかいまいちよく分からないのですが、ついつい一緒に歌っちゃいましたから。やはりクリス・シーリーのどこか人懐っこくも熱いキャラがジワジワと観客との距離を縮めて行った感はありましたね。それにしても彼のフロントマンとしての統率料は見事でしたね。あくまでも音楽ありきというストイックな姿勢を感じさせつつ、エンターテイナーとして魅せる部分や観客を煽る部分、その塩加減も絶妙でした。
アンコールはケルティックなアカペラ・コーラス曲「The Auld Triangle」。これも素晴らしかった!! もちろん1本のマイクをメンバー全員が囲んで歌うんですが、そのハーモニー、特に低音と高音の響きが絶品でした。ただただうっとりでしたよ。アンコールにこんな曲を持ってくるパンチ・ブラザーズ、なんて素敵なバンドなんでしょう!!最後にやった「Julep」も滲みました〜。
いやはや、本当に素晴らしいステージでした。間違いなく年間ベスト級です。こういうバンドが初来日な訳ですから、日本ではアメリカーナの本質って、まだまだ全然伝わってないんだな…。としみじみ感じさせられました。だって、このパンチ・ブラザーズもCDで聴くのと生で体験するのとではまったく別物と言っていい程、その印象は違いましたからね。正直、難解すぎたらどうしよう?みたいな不安も有ったんです…。ですが、まさか、これほど人間味に溢れた、情緒豊かな音楽表現をするバンドだったとは!! まるで何かの物語を語るかのように音を紡ぎ、刻々と移ろい行く情景を魅せてくれるようなそのステージは、まさに至福の音楽体験でした。もちろんテクニカルな面も凄かったですよ。その技量有っての表現力ですしね。インスト曲でのソロの応酬も堪らないものが有りましたし。ブルーグラスを超越しながらも、しっかりとブルーグラスらしさも聴かせてくれて嬉しかった!!先鋭だけではない、圧倒的な深みを体感させてくれたパンチ・ブラザーズ!これが現行アメリカーナ!!
最後に、自慢話を。私は入場整理番号2番だったのですが、1番の方がマイクに向かって左側の一番前、そして2番の私が右側に座ったのですが、おそらくこの2席だけが味わえる、最前列ど真ん中。これは本当にミラクルな席でした。私はミーハーなので、恥ずかしながら過去に何度も最前ど真ん中を味わって来ているんですが、この日程それを堪能したことはありませんでした。最前列の特権は誰よりも近くでアーティストを観れることですが、パンチブラザーズはそれだけでは有りません。まずブルーノートの最前列って、ほとんどステージと密着する程の近さなんです。なので、例のマイクがほぼ目の前にある。もちろんそのマイクを囲むメンバー達も近い。囲むと言っても観客側は開けている訳で、その開けた先に最前列ど真ん中が有る訳です。これは凄いですよ!ライヴ中、何度もメンバー達と供にマイクを囲っている錯覚に襲われるんです。自分がパンチブラザーズの輪の中に居るような錯覚。そしてそれはその音楽の中に入り込むような錯覚に変わって行く。これはとんでもない体験でしたね。本当にミラクル体験。今思い出してもゾクゾクしちゃいます。
すいません。最後にこんな極々少数派の自慢話でごめんなさい。でも本当に凄い体験だったんです!!
メンバーの足下にあったセットリスト。実際にこの通りやったかどうかは既に記憶があやふやでよく分かりません。この日もメモを取りながら観ようと筆記用具を用意していたんですが、最前列ど真ん中があまりにも凄すぎてそれどころじゃ有りませんでした。ま、セットリストが近くに有るし、後で写真を撮らせてもらえば良いか?みたいに思っていましたが、どうなんでしょう?明らかに違う部分も有りますし、その時の気分や雰囲気で変えてくるようですね。その辺りもライヴバンドとして素晴らしい!!と思ったり。ちなみに「True Love Waits」はレディオヘッドのカヴァー。
こちらはパンチ・ブラザーズ公演を記念したスペシャル・ドリンク。私はお酒飲めないのでパスでしたが。
珍しく食事のスペシャル・メニューもありました。
で、私が頼んだのはパンチ・ブラザーズと何の関係もない白桃のパフェ。すいません、甘党なので…。