ルーツな日記

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フジロック予習:SOUL MUSIC LEGENDS その2、ボビー・ラッシュ

2014-07-21 15:33:23 | フジロック
「ルーツな日記」的、今年のフジロック最大の目玉「SYL JOHNSON, BOBBY RUSH & LAVELLE WHITE SOUL MUSIC LEGENDS」。その予習第2回目は、チトリン・サーキットの王者、ボビー・ラッシュです!

WIKIによれば1933年ルイジアナ生まれ。現在80歳(35年生まれ、36年生まれなど、諸説あるようです)。とは言え、とてもそんな歳には見えない若々しい活躍ぶり。近年も新作をコンスタントにリリースし、その度に“ブルース界にボビー・ラッシュ有り!”という強烈なインパクトを残し続けている、今がまさに全盛期と言える現在進行形ブルースマンなのです! ブルース・ムーヴィー・プロジェクト「The Road To Memphis」への出演も印象的でしたね。 その音楽はもちろん、チトリン・サーキットを休み無く回るボビーの姿そのものに“ブルース”を感じた方も多かったのでは? そう、やっぱりブルースは人なんです。人間そのものからブルース汁が滲み出るのです。


ちなみにチトリン・サーキットの“チトリン”とは、豚肉の小腸を煮込んだ、いわゆる黒人料理のこと。黒人のクラブを転々とドサ廻りすることを、黒人しか食べない安い料理に例えてチトリン・サーキットと呼ぶそうです。ボビー・ラッシュは女性ダンサーを従え、チトリン・サーキットを毎夜の如く沸かせてきたことでしょう。ボビーの両側にお尻の大きな女性ダンサーが立ち、その女性達が観客席に向かって腰を突き上げながら、その大きなお尻を振る。そのお尻をジーッと見つめながら歌うボビー・ラッシュ。観客は沸きに沸く。これがボビー・ラッシュのステージ!


さて、そんな南部の王者も、ブルースマンとして本格的なスタートを切ったのはシル・ジョンソン同様に50年代のシカゴでした。ボビーは自身でバンドを率いたそうですが、そのバンドには若き日のフレディ・キングやルーサー・アリソンが参加していたと言います。実際、ルーサー・アリソンとの50年代末のセッションはアルバム化されたりしていますね。そしてボビーのメジャー・デビューは67年、名門チェスからのシングル「Sock Boo Ga Loo」でした。この“Sock”という言葉にピンと来た方いらっしゃいますか?そう、シル・ジョンソンの出世曲「Stock It To Me」。

ブルース&ソウルレコーズ誌99年10月号に掲載された鈴木啓志さんによる「ボビー・ラッシュ:シングル・ガイド」にこの「Sock Boo Ga Loo」について興味深い記述がありました。それに曰く『本人はシル・ジョンソンの「Sock It To Me」より早かったと言っているが、恐らくそれはハッタリではない。結局はジェイムス・ブラウンの流れということになるが、シカゴではボビーがいち早く始めていたと考えていいのだろう。』とのこと。本人とはもちろんボビー・ラッシュのこと。

当時、“Sock”という言葉がブルース界でヒップであったであろうこと以上に、ボビー・ラッシュとシル・ジョンソンが新感覚のファンク・フィーリングでシーンを席巻していたであろうことが伺えて大変興味深いですね。2人がその後、ファンクをキーワードにジャンルを横断しつつ、それぞれがユニークな音楽道を歩みつづけ、何の因果かおよそ50年を経てフジロックで共演するなんて!しかもそれを間近で観れる喜び!ワクワクしますね~

さて、60年代、70年代とシングル・リリースを続けたボビー・ラッシュ。中でも71年の「Chicken Heads」は彼の代表曲となる名曲。このころから既に後年のボビーに繋がる、ドロリとしていながらどこかミニマルな感覚のファンクネスが格好良い!! そしてアルバム・デビューは79年、意外にもフィラデルフィア・インターナショナル・レコードからでした。



BOBBY RUSH / RUSH HOUR
こちらがその1st作「RUSH HOUR」。ボビー・ラッシュがフィリーからデビューってちょっと意外ですよね。とは言えこの時から既にボビー節は確立されてる感じ。シンプルなビートに野性味溢れる歌と素朴なハープが絡む、独特なファンク・ブルースが格好良い! タイトに纏まったサウンドは流石はギャンブル&ハフ。



BOBBY RUSH / SUE
デビュー・アルバムは残念ながら商業的成功を収められず、フィリーを離れミシシッピはジャクスンにあるラ・ジャムへ移籍。80年代を通じそのラ・ジャムからアルバムをリリースすることになりますが、その最初の作品が彼の代表作の1枚となる83年の「SUE」。モダンなアプローチの中に強烈なローカル臭と鋭利な男臭さを臭わせる、これぞ南部の感覚!初来日の際にサインを頂きました。



BOBBY RUSH / I AIN'T STUDDIN' YOU
そして90年代は同じくミシシッピのアージェントに移籍。そこからの出世作と言われるのがこの「I AIN'T STUDDIN' YOU」。91年作。バックのディスコチックなサウンドとボビーの南部的な泥臭さというミスマッチが妙なブルース臭を醸し、なんともクセになる一枚。天然なのか計算なのかよく分からない、これぞボビー流ファンク・ブルース。



BOBBY RUSH / RAW
その後もヴォルドクシー、そして自身のレーベル、ディープ・ラッシュにて良作をリリースし続けて来たボビー・ラッシュですが、案外転機となったのはこのアコースティック作品かもしれません。数曲でShawn Kellermanのドブロが入る意外、全てボビー・ラッシュによるアコースティック・ギター&ハープ弾き語りによる07年リリース作。これがこれまでのボビーをいったんリセットし、新たな全盛期へと導いた、そんな印象もあります。それにしても裸?にオーバーオールというジャケ写はインパクとありますね。



BOBBY RUSH / BLIND SNAKE
近年のボビー・ラッシュはどの作品も格好良い!この09年作も大好きです。彼は自らのサウンドをフォーク・ファンクと呼んでいますが、この作品で聴ける無駄を削ぎ落としたファンク・ブルースなんかは、その根底にフォーク・ブルース的なギター弾き語りがしっかりと感じられ、それを濃密なファンクに仕立てるところがボビー・ラッシュ流のブルース道なのかもしれません。とは言え私は正直、フォーク・ファンクのなんたるかをまったく分かってないんですけどね…。的外れでしたらごめんなさいね。



BOBBY RUSH / SHOW YOU A GOOD TIME
こちらは2011年作。1曲目なんてゴースト・バスターズみたいですし、スクラッチ音みたいなのも入ってくるし、なのにどうにもこうにも垢抜けないボビー節。ブルースを逸脱すればする程、ブルースなエグ味が濃くなっていく様。やっぱり凄いよこの人!と思わせる傑作。ですが意外とこういう傾向も初期の頃から顕著でしたし、ダンスビートのブルース解釈というのも、ボビー流のフォーク・ファンクなのかもしれません。そしてスローナンバーも良いんです! 一昨年の来日時にサインを頂きました~!



BOBBY RUSH / DOWN IN LOUSIANA
そしてこちらは、2013年の我がベストアルバム企画で第3位に選ばせていただいた作品。これは近年の充実振りが生んだ最高傑作でしょう! ローカル・ブルースならではのいかがわしい臭いに溢れた彼独特のファンクネスに脱帽です。ですがこれを現代に聴かせる彼のセンスというのは、やはりかなりの新感覚であり、相当なくせ者ですよね。そんなくせ者ならではの現代最高のブルース!!


さて、ずらずらとアルバムを紹介してきましたが、ボビー・ラッシュの本領発揮はやはりライヴです。チトリンサーキットの熱狂をフジロックでも再現してくれることでしょう。実際、99年のパークタワー・ブルース・フェスティヴァルでのステージは凄かった!ビッグファットな女性ダンサーを侍らせ、下ねた満載の(英語は分からないので私ですが、そこはほぼ間違いないでしょう)の下世話ブルースと、コメディアン顔負けのエンターテイナー振りで、観客を沸きに沸かせたあの南部マナーのステージ、未だに脳裏に焼き付いています。

問題は、フジロックに女性ダンサーを連れてきてくれるのか?というところ。ここは非常に重要なところなのですが、今回はシル・ジョンソン、ラヴェル・ホワイトとの共演というスペシャルなショーなので、残念ながら女性ダンサーは帯同してこないのでは?と私は思っています。ですが、大丈夫。一昨年、ビルボードライヴで来日公演を行った際も女性ダンサーはいらっしゃらなかったのですが、それでもボビーは最高でしたから!ま、よく考えれば当たり前のことですけどね。




https://www.youtube.com/watch?v=A1H6J68sNyU
67年のチェスからのシングル「Sock Boo Ga Loo」。もろJBファンク。サキツミ言ってますね!(残念ながら音だけです)


https://www.youtube.com/watch?v=e_dhUoFQaeE
こちらは71年の「Chicken Heads」。ボビーの個性が芽生えています。(こちらも残念ながら音だけ)


https://www.youtube.com/watch?v=l4YHuwD4ujg
こちらは近年のライヴ映像。女性ダンサーを従えた鉄板のステージ。これぞボビー・ラッシュ!!なんだかんだ言って、やっぱりフジでもこれが観たい!!



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