STUFF BENDA BILILI / TRES TRES FORT
もう一週間経ってしまいましたが、10月11日、日比谷野外音楽堂にて開催された「WORLD BEAT 2010」を観に行ってまいりました。
いや~、これは素晴らしかったですよ! アフリカン・ミュージックのパワーを思い知らされた感じですね。まさに野音というハコ全体、ミュージシャンも観客もその場の空気も、全てが一体となって、歓喜のリズムに身を任せた感じ。天晴なライヴでした!
それでは、記憶があまり薄れないうちに振り返っておきましょう。
MCに登場したピーター・バラカンさんの紹介で、まずはジャスティン・アダムズ&ジュルデー・カマラが登場。ジャスティン・アダムスは、あの“砂漠のブルース”ことティナリウェンのプロデューサーを務めた英国人で、ギタリストとしてロバート・プラントのバンドでも活躍してきた人だそう。一方、ジュルデー・カマラは西アフリカはガンビア出身。リッティという伝統的な1弦フィドル奏者。ステージではこの二人に白人のドラマーが付きます。始めはジャスティンもアコースティックな古めかしい楽器を弾いてましたが、3曲目辺りからエレキ・ギターにチェンジ。低音効きまくりの轟音リフを弾き出すと、瞬く間にドロドロとしたロックなミクスチャー感が溢れ出してきました。
それはガレージ・ブルースmeetsアフリカな感じ。マディ・ウォーターズ「Hoochie Coochie Man」のアフリカン・ヴァージョンみたいな曲があったり、ジャスティンのワウを効かせたカッティングにジュルデーの1弦フィドルが反復的なフレーズで延々と絡み付くトランシーな曲があったりと、一筋縄ではいかない異臭を放ちます。ジュルデーは曲によってはリッティ以外の楽器も弾いたり、パーカッションを叩いたりもしていましたね。でもやはり歪んだギターにリッティ、そしていかにもアフリカンなジュルデーのヴォーカル。この組み合わせが強烈。 トリッピーでした。ただ1番手だったこともあり、お客さんが様子見な感じだったのが残念でしたね。
そしてヴィクター・デメが登場。このヴィクター・デメが、予想外にと言っては失礼ですが、異様に盛り上がりました! 私は6月に横浜のアフリカン・フェスタというイベントで彼らのライヴを観たんですけど、あの時はイベント特有の緩い空気が横溢してましたが、今回は流石は野音、音圧がまるで違い、とにかくアフリカンなリズムが身体を捉えて放しませんでした。もちろんヴィクター・デメの歌声も素晴らしかった!
アフリカの大地を感じさせるような素朴な味わいの「Deen wolo mousso」や「Maa gaafora」、そして哀愁溢れる歌声が夕闇に響きまくった黄昏のアフロ・ブルース「Djon Maya」。熱気ムンムンのパーカッションのリズムに観客踊りまくりの「Toungan」や「Sere Jugu」、などなど。こういった曲でのギターやリズム隊は強力でしたね。そして忘れてならないのがコラ。ヴィクターの歌声や切ないメロディーに絡むコラの音色は美しかったですね! あの響きはまさにアフリカの風のようでしたよ!
それとね、ヴィクターのパフォーマンスがまた良いんですよね。エンターテイナーなんですよ。でもローカル色濃厚で。その濃厚さが客席をどんどん巻き込んでいく感じ。結局、観客層立ちで盛り上がりましたからね。さらにその観客達のノリ方が凄く自由で、しかも濃密な感じで、なんか幸せな気持ちになりましたね。まるで今まで押さえていた何かが一気に解き放たれたような、そしてそれを合図に野音の空気がグラグラと煮え出してきたような。もう、この勢いは止まりませんよ。なにせ次はトリを務めるスタッフ・ベンダ・ビリリですから!
映画「ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡」でも話題になっているコンゴのグループ、スタッフ・ベンダ・ビリリ。既に真っ暗になった日比谷野音にメンバー達が現れると、もう最初っから観客達は総立ちですよ!
1曲目は「Moziki」だったかな? 溢れ出すように五感を刺激するリズム。血湧き肉踊るとはこういうことを言うんだなと。「Moto Moindo」、「Polio」、「Je t'aime」、「Marguerite」、「Kuluna」と続くステージ。「Moto Moindo」はアフリカ人の誇りを歌ったような曲。「Polio」は彼等が暮らすコンゴに多い感染症のこと。「Marguerite」は兄と妹がコンゴ民主共和国とコンゴ共和国とに離ればなれになってしまったことを歌う曲。そして「Kuluna」では子供達にクルナと言うギャング団に入るなと諭している。どれもコンゴの日常を歌った曲なのでしょう。そんなシビアなメッセージも、彼等のリズムとメロディに乗せれば輝かんばかりにポジティヴなヴァイヴへと昇華されます。
とにかく豊かな音楽に心も身体も踊る踊る! リズム楽器はドラムス、ベース、ギターだけのシンプルな編成なのが信じられない程に芳醇なリズム。しかもドラムスなんて、原始的な太鼓に、竹、ご飯の皿、傘の竿なんかを取り付けた手作りですからね。手作りと言えば、最年少メンバーのロジェが操るサトンゲと言う楽器も手作り。しかも7歳の時に作ったと言いますから驚きます。缶と木の棒を1本の弦が結んだだけの簡素な楽器ですが、スタッフ・ベンダ・ビリリの音楽を特徴付ける、ちょっと切ない音色を持ったメロディー楽器です。
フロントにはそのロジェと、5人のヴォーカリストが並びます。そのうちココ、リッキー、テオ、ジュナナの4人は車椅子に乗っています。そしてもう一人のカボセは立ってはいるものの松葉杖をついています。この5人は曲名にもなっているポリオという感染症による障害を持っているんです。バンド名である「ベンダ・ビリリ」とは、リンガラ語で「外側を剥ぎ取れ」という意味だそうです。すなわち一見した外面ではなく内なる真実を見よ!ということなのです。彼等は車椅子の上であろうと、まるでその身体からリズムが湧き出るかの如く、そしてポジティヴ且つ自由な魂を我々観客にビシバシとぶつけてきます。これ程までに生命力に溢れた音楽はそうはないですよ!
「Avramandole」では右端で常にテンションの高かったジュナナがついに車椅子から降りて踊り出します。この人、バンドの公式振り付け師だそうですが、実はメンバー中で最もポリオの症状が重い人。おそらく両足とも麻痺で動かないんだと思うのですが、それでもエキサイティングに踊りまくり、観客からやんやの喝采を受ける。そして曲が終わると器用に自力で車椅子に戻る。凄い人です!
さらに「Sala Mosala」、「Mwana」、「Mama Africa」と続く。このバンドのユニークなところは、ロジェを含めたフロントの6人がそれぞれがリード・ヴォーカルを務めるんです。しかも1曲のなかでころころとリードが変わる。それがまた祝祭的な空気に拍車をかけるんですよね。またみんな良い声してるんですよ。リーダーであるリッキーの落ち着いた暖かい歌声も良いですし、力強く歌い上げるようなロジェも良い。ですが最も個性的なのがカボセ。この人は歌と言うよりラップ。いやラップと言うより煽り専門みたいな。とにかく高い声でガンガン煽ってくる。この人が前面に出てくると一気に場内の温度が上がる感じ。
そしていよいよステージも終盤。テーマ曲「Staff Benda Bilili」。もうこれはファンクですよね! 格好良すぎますよ!「Souci」では「ス~シ~、ス~シエ~」とコール&レスポンスで盛り上がり、そしてラストの「Tonkara」。これは段ボールの上で寝泊まりする子供達の希望について歌った曲。アフリカらしいトロピカルなリズムに身を委ねていると、なんとステージの左袖からヴィクター・デメを先頭に、彼のバンド・メンバーや、ジャスティン・アダムズ、その他関係者の方達が妙なダンスを踊りながら数珠繋ぎに入ってくるじゃないですか! 最後はステージ上もダンス大会のような雰囲気で盛り上がっての、大団円。参りました!
彼等の音楽は、人間が根源的に持つ優しさや、力強さそのものです。スタッフ・ベンダ・ビリリ、トレ・トレ・フォール!!!!
*曲目等間違ってましたらごめんなさいね。
~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!
10.10.13 ヴィクター・デメ@渋谷タワーレコード
10.09.24 スタッフ・ベンダ・ビリリ@ユニセフハウス
10.09.20 ベンダ・ビリリ@イメージフォーラム
10.09.20 ヴィクター・デメ@アフリカン・フェスタ
10.06.08 ヴィクター・デメ
もう一週間経ってしまいましたが、10月11日、日比谷野外音楽堂にて開催された「WORLD BEAT 2010」を観に行ってまいりました。
いや~、これは素晴らしかったですよ! アフリカン・ミュージックのパワーを思い知らされた感じですね。まさに野音というハコ全体、ミュージシャンも観客もその場の空気も、全てが一体となって、歓喜のリズムに身を任せた感じ。天晴なライヴでした!
それでは、記憶があまり薄れないうちに振り返っておきましょう。
MCに登場したピーター・バラカンさんの紹介で、まずはジャスティン・アダムズ&ジュルデー・カマラが登場。ジャスティン・アダムスは、あの“砂漠のブルース”ことティナリウェンのプロデューサーを務めた英国人で、ギタリストとしてロバート・プラントのバンドでも活躍してきた人だそう。一方、ジュルデー・カマラは西アフリカはガンビア出身。リッティという伝統的な1弦フィドル奏者。ステージではこの二人に白人のドラマーが付きます。始めはジャスティンもアコースティックな古めかしい楽器を弾いてましたが、3曲目辺りからエレキ・ギターにチェンジ。低音効きまくりの轟音リフを弾き出すと、瞬く間にドロドロとしたロックなミクスチャー感が溢れ出してきました。
それはガレージ・ブルースmeetsアフリカな感じ。マディ・ウォーターズ「Hoochie Coochie Man」のアフリカン・ヴァージョンみたいな曲があったり、ジャスティンのワウを効かせたカッティングにジュルデーの1弦フィドルが反復的なフレーズで延々と絡み付くトランシーな曲があったりと、一筋縄ではいかない異臭を放ちます。ジュルデーは曲によってはリッティ以外の楽器も弾いたり、パーカッションを叩いたりもしていましたね。でもやはり歪んだギターにリッティ、そしていかにもアフリカンなジュルデーのヴォーカル。この組み合わせが強烈。 トリッピーでした。ただ1番手だったこともあり、お客さんが様子見な感じだったのが残念でしたね。
そしてヴィクター・デメが登場。このヴィクター・デメが、予想外にと言っては失礼ですが、異様に盛り上がりました! 私は6月に横浜のアフリカン・フェスタというイベントで彼らのライヴを観たんですけど、あの時はイベント特有の緩い空気が横溢してましたが、今回は流石は野音、音圧がまるで違い、とにかくアフリカンなリズムが身体を捉えて放しませんでした。もちろんヴィクター・デメの歌声も素晴らしかった!
アフリカの大地を感じさせるような素朴な味わいの「Deen wolo mousso」や「Maa gaafora」、そして哀愁溢れる歌声が夕闇に響きまくった黄昏のアフロ・ブルース「Djon Maya」。熱気ムンムンのパーカッションのリズムに観客踊りまくりの「Toungan」や「Sere Jugu」、などなど。こういった曲でのギターやリズム隊は強力でしたね。そして忘れてならないのがコラ。ヴィクターの歌声や切ないメロディーに絡むコラの音色は美しかったですね! あの響きはまさにアフリカの風のようでしたよ!
それとね、ヴィクターのパフォーマンスがまた良いんですよね。エンターテイナーなんですよ。でもローカル色濃厚で。その濃厚さが客席をどんどん巻き込んでいく感じ。結局、観客層立ちで盛り上がりましたからね。さらにその観客達のノリ方が凄く自由で、しかも濃密な感じで、なんか幸せな気持ちになりましたね。まるで今まで押さえていた何かが一気に解き放たれたような、そしてそれを合図に野音の空気がグラグラと煮え出してきたような。もう、この勢いは止まりませんよ。なにせ次はトリを務めるスタッフ・ベンダ・ビリリですから!
映画「ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡」でも話題になっているコンゴのグループ、スタッフ・ベンダ・ビリリ。既に真っ暗になった日比谷野音にメンバー達が現れると、もう最初っから観客達は総立ちですよ!
1曲目は「Moziki」だったかな? 溢れ出すように五感を刺激するリズム。血湧き肉踊るとはこういうことを言うんだなと。「Moto Moindo」、「Polio」、「Je t'aime」、「Marguerite」、「Kuluna」と続くステージ。「Moto Moindo」はアフリカ人の誇りを歌ったような曲。「Polio」は彼等が暮らすコンゴに多い感染症のこと。「Marguerite」は兄と妹がコンゴ民主共和国とコンゴ共和国とに離ればなれになってしまったことを歌う曲。そして「Kuluna」では子供達にクルナと言うギャング団に入るなと諭している。どれもコンゴの日常を歌った曲なのでしょう。そんなシビアなメッセージも、彼等のリズムとメロディに乗せれば輝かんばかりにポジティヴなヴァイヴへと昇華されます。
とにかく豊かな音楽に心も身体も踊る踊る! リズム楽器はドラムス、ベース、ギターだけのシンプルな編成なのが信じられない程に芳醇なリズム。しかもドラムスなんて、原始的な太鼓に、竹、ご飯の皿、傘の竿なんかを取り付けた手作りですからね。手作りと言えば、最年少メンバーのロジェが操るサトンゲと言う楽器も手作り。しかも7歳の時に作ったと言いますから驚きます。缶と木の棒を1本の弦が結んだだけの簡素な楽器ですが、スタッフ・ベンダ・ビリリの音楽を特徴付ける、ちょっと切ない音色を持ったメロディー楽器です。
フロントにはそのロジェと、5人のヴォーカリストが並びます。そのうちココ、リッキー、テオ、ジュナナの4人は車椅子に乗っています。そしてもう一人のカボセは立ってはいるものの松葉杖をついています。この5人は曲名にもなっているポリオという感染症による障害を持っているんです。バンド名である「ベンダ・ビリリ」とは、リンガラ語で「外側を剥ぎ取れ」という意味だそうです。すなわち一見した外面ではなく内なる真実を見よ!ということなのです。彼等は車椅子の上であろうと、まるでその身体からリズムが湧き出るかの如く、そしてポジティヴ且つ自由な魂を我々観客にビシバシとぶつけてきます。これ程までに生命力に溢れた音楽はそうはないですよ!
「Avramandole」では右端で常にテンションの高かったジュナナがついに車椅子から降りて踊り出します。この人、バンドの公式振り付け師だそうですが、実はメンバー中で最もポリオの症状が重い人。おそらく両足とも麻痺で動かないんだと思うのですが、それでもエキサイティングに踊りまくり、観客からやんやの喝采を受ける。そして曲が終わると器用に自力で車椅子に戻る。凄い人です!
さらに「Sala Mosala」、「Mwana」、「Mama Africa」と続く。このバンドのユニークなところは、ロジェを含めたフロントの6人がそれぞれがリード・ヴォーカルを務めるんです。しかも1曲のなかでころころとリードが変わる。それがまた祝祭的な空気に拍車をかけるんですよね。またみんな良い声してるんですよ。リーダーであるリッキーの落ち着いた暖かい歌声も良いですし、力強く歌い上げるようなロジェも良い。ですが最も個性的なのがカボセ。この人は歌と言うよりラップ。いやラップと言うより煽り専門みたいな。とにかく高い声でガンガン煽ってくる。この人が前面に出てくると一気に場内の温度が上がる感じ。
そしていよいよステージも終盤。テーマ曲「Staff Benda Bilili」。もうこれはファンクですよね! 格好良すぎますよ!「Souci」では「ス~シ~、ス~シエ~」とコール&レスポンスで盛り上がり、そしてラストの「Tonkara」。これは段ボールの上で寝泊まりする子供達の希望について歌った曲。アフリカらしいトロピカルなリズムに身を委ねていると、なんとステージの左袖からヴィクター・デメを先頭に、彼のバンド・メンバーや、ジャスティン・アダムズ、その他関係者の方達が妙なダンスを踊りながら数珠繋ぎに入ってくるじゃないですか! 最後はステージ上もダンス大会のような雰囲気で盛り上がっての、大団円。参りました!
彼等の音楽は、人間が根源的に持つ優しさや、力強さそのものです。スタッフ・ベンダ・ビリリ、トレ・トレ・フォール!!!!
*曲目等間違ってましたらごめんなさいね。
~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!
10.10.13 ヴィクター・デメ@渋谷タワーレコード
10.09.24 スタッフ・ベンダ・ビリリ@ユニセフハウス
10.09.20 ベンダ・ビリリ@イメージフォーラム
10.09.20 ヴィクター・デメ@アフリカン・フェスタ
10.06.08 ヴィクター・デメ